第50話
何だ、これは……。
唐突にバンドを組むことになり、ここから青春ロックンロール劇場が幕を開けるのかと思ったら、まさかのエキサイト本スパイラル。犯人は誰だ……。
「弟君、じゃあ……ご飯できたら呼ぶね」
「義姉さん、待って」
危ない危ない。
誤解をこのままにしておいたら、後の家族関係にも重大な悪影響を与えることになる。それだけは避けねば。
「とりあえず……これは俺のじゃない」
「え?じゃあ……」
考えろ、俺。
この身に覚えのない品をなすりつけるのにうってつけの存在を……。
まあ、答えはわかりきっているんだけど。
「これは……月乃の愛読書なんだ」
「…………」
俺の言葉に義姉さんの表情が凍りついた。
すまん、月乃……今度チーズケーキ買ってやるから。
心の中で月乃に土下座していると、義姉さんの唇が震えながら、言葉を紡いだ。
「そ、そ、そうなんだ。月乃ちゃんもこういうの読むようになったんだね。お年頃だもんね」
「ああ……だから、温かい目で見守ってやってくれ……義姉さんならできるはずだから……」
「……うん、わかった!」
ぱあっと野に咲く花のように笑う義姉さんの顔を見て、俺はほっと胸をなで下ろす。ミッションコンプリート!色々と問題は残った気もするが、あとはこっそり処分していけばいい。
「弟君。私、頑張るよ」
「ああ……え?」
義姉さんはあろうことか、薄い本のページをめくりだした。
ぎょっとした俺は、慌ててその手を止める。
くそっ、少し中が見えちまったじゃねえか!
二次創作らしいが、何で仲の悪いあのキャラ達が手を繋いで街を歩いてんの!?火のない所に煙を立たせるとか、どんな錬金術師だよ!
「ね、義姉さん!止めろ!止めてくれ!こんなところを人生の大事な分岐点にしちゃいけない!」
「でも……ここで、月乃ちゃんと趣味を共有すれば、仲良くなれるかも……」
「人には一人でこっそり楽しみたい趣味があるんだよ!な?そっとしておこう!」
「…………わかった。今回は諦める」
次回は来ない。
さあ、もう……
「あれ?でも、何で弟君の部屋にあるの?」
ちいっ!気づきおった!
もう、言い訳を考えるのが面倒くさくなってきていたが、ここで匙を投げても良いことはないので、無理矢理言い訳を捻り出す。
「ほら、アレだよ……自分の部屋に入りきらなくなったんだよ」
「そんなに持ってるの!?」
「ああ、困った奴だよ。というわけで、月乃の部屋にはあまり近寄らない方がいいよ」
「う、うん……わかったよ」
月乃…………ほんっとうに申し訳ございません!!!!
読んでいただき、ありがとうございます!




