第22話
Aqoursのライブビューイングまであと少し!
「じゃ、じゃあ、俺……帰りますね」
俺は先輩に背を向け、そそくさとその場を後にしようとする。
しかし、肩をがっしりと掴まれ、逃亡は阻止された。
「な、何でしょうか先輩……」
「ふむ……与。お前も手伝ってくれないか」
「いや、俺にそんな電波的な趣味はないので……」
「恥ずかしがる事はない」
「恥ずかしがってねぇー!!」
「さ、行くぞ」
「大丈夫だ。痛い事は何もない」
「何故そこで誤解を招くような言い方!?てか俺が心配してる痛さはそっちじゃなくて先輩そのものの痛さなんどけど!」
「そっちの方は言うまでもなかろう」
「開き直ってやがる……」
「さあ、友梨香によく似たヒロインを……いや、友梨香を探しに行くとしよう!」
「はあ……」
今の会話で何となく察して頂けたかと思うが、一ノ宮先輩は、ギャルゲーオタクだ。好きすぎて日常生活に支障をきたしている。支障をきたしすぎて、いつか死傷に至りそうだ。
ギャルゲーのヒロインに本気の恋をしては、そのヒロインに似た女性を探す。俺はそんなイベントに度々付き合わされていた。人生で最も無意味な時間だ。まあ、何だかんだ付き合う自分もアレだが……。
俺の白けた視線に気づいた先輩は、空を仰ぎ、瞑目して、淡々と告げた。両腕を広げる必要はあるのだろうか。
「与よ。信じている限り夢は終わらないのだ」
「人の夢と書いて儚いと言いますよ」
「信じればあれもこれも夢じゃない」
「あんな事やこんな事できたらいいって思ってるだけじゃないですか」
「ふっ……そうかもしれんな」
「いや、絶対に格好つける場面じゃないですから」
「おい」
オッサンが話しかけてくる。あれ、成仏してなかったの?
「お前、やけに今は普通じゃねーか。朝はそこのギャルゲーオタクと同じテンションのくせに」
「俺はいつだって普通だ。まあ、あれだ……周りが盛り上がりすぎると、つい冷めちゃうタイプなんだよ」
「ああ、空気読めない奴か」
「やかましい」
先輩に聞こえないように小声でやり取りをしていると、さっきまで痛いポーズをとっていた先輩は、こちらをじっと見ていた。いや、俺じゃなくて後ろの方か?
「ところで与」
「何ですか?」
「お前はいつから幽霊に取り憑かれんたんだ?」
「は?」
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