第20話
彼女の家へ上がると、外見から想像できるような高級感のある洗練された内装に目を奪われる。いや、天井板がやたら高かったり、天窓があったりするだけで高級住宅扱いしてしまう自分の感覚がおかしいのかもしれないが。
とりあえず、彼女に勧められるままソファに座り、一旦落ち着く。
「飲み物取ってくるから待ってて」
「あ、どうも……」
台所に向かう彼女の背中から目を逸らし、ふと壁に目をやる。芸術を解さない自分には、上手いか下手かもわからない絵画がそこにかかっていた。
するといつの間に戻ってきたのか、目の前のテーブルに水が注がれたコップが置かれる……マジでウエルカムドリンクは水道水かよ。
まあいい。どうせもてなしを受けに来たわけではない。
俺はふわふわ漂うオッサンの背をちらりと見て、向かいのソファに座った彼女に向き直ってから、さっそく本題に入る事にした。
「よし、さっさと始めてくれ」
「……は?」
彼女(みーちゃんとかなるべく使いたくない)は、キョトンとした表情になったが、それには構わず、話を進める事にする。
「いや、もう前置きとかいいから。サクッとやっちゃおうぜ。な?」
「あ、あなたは何を言っているのかしら?」
「いや、何って……」
ほんの少し慌てる彼女の態度に、こちらが内心テンパっていると、何故か頭を下げられた。
「ごめんなさい。そんなつもりは一切ありませんので、死んでください」
「自分から家に呼んで死の宣告!?お前、ふざけんなよ!」
さっきまで失礼な奴だとは思っていたが、俺の目に狂いはなかったようだ。
何か言い返してやろうかと考えていると、彼女は何故か顔を赤らめながら、そっぽを向く。
「いえ、いきなりあなたが盛りだすからよ。残念ながらあなたの童貞を受け止める気はこれっぽっちもありません」
何故今この場で童貞なんて単語が出て来る。どうしてこうなった。
「……お前、何言ってんだ?」
「え?」
「いや、早く除霊してくれよ」
「除霊?何のことかしら?」
「だってこのオッサンを成仏させてくれるんだろ?」
「…………あなたは馬鹿なの?」
「は?」
突然の見下したような表情にイラッとしていると、彼女はまだ若干頬を赤らめながらも、ドヤ顔で諭してきた。
「ただの高校生の私にそんな事できるわけないじゃない。ラノベや漫画の読み過ぎではなくて?」
「…………」
……こいつ、つかえねー。
いや、確かにそうかもしれないけどさ。
正論すぎて言い返せないけどさ。
「じゃあ、何で呼んだんだよ。お前、口が悪くて霊感が強いだけの女じゃねーか」
「否定はしないわね。呼んだ理由の方だけど……面白いじゃない。普通に興味あるでしょ?会話できる幽霊なんて」
「おい」
最早、ぐうの音も出ない。
ちなみにオッサンは何ともいえない表情で漂っている。流石にこれは予想していなかったようだ。漂い方が一層虚しい。
そして、こちらの気も知らずに、彼女は優雅に微笑む。
「だって霊感が強くて、昔から散々幽霊を見てきた私でも、こんなの初めて見たもの。すごいわね。感心するわ」
「……そりゃどうも」
結局事態は何も進展していなかった。




