夢の中を探訪してもね
「わたしはこみみ、十三歳。一応占い師なんだけど」
「焚火占いじゃ、動画見てもらえないから……今日はこれをやってみようと思うの」
「試作品の夢の中を歩く装置が開発されたんだって。装置といっても、頭にシールみたいなものを付ければいいだけのもの。それを付けたまま眠ると、夢を見たときにその場所を歩けるという代物なんだけどね」
「つまり、夢を自由に動いて自由に発言できるアイテムなの」
「だから、いまパジャマ着てるってわけ」
「わたしね、今日それを使ってみようと思ってね。治験バイトってあるでしょ? それの装置版のやつ。で、いまからこのシールを付けて寝てみるから。ちょっと待っててね」
「……」
「あれ? ここ、どこかな、あ! そうだ、これは夢か、歩けるんだっけ」
「暗いなー、なんか、電信柱がところどころ折れてる。その折れたところにある電灯が薄暗く光っているってかんじ」
「ちょっと、歩いてみるわ」
「うーん、いまね中央分離帯を歩いているんだけどね。車とか来ないからさ、でも、なんだろ。空気がなんか重いんだよね。どんよりしてるっていうかさ、あと気付いたのは遠くのほうに丘があって、家が有るけど……いやーちょっと、これは、なんかなー。あんまり行きたくない、かなー」
「あのね、さっきからね、後ろのほうで何か近づいてきてんだよね。分かんないんだけどさ、カツカツカツカツっていう音がさ、何の音だかわからないけどさ。一応さぁ、適当に歩いてるんだけどね。えっと、とりあえず、このまま進んでみたいと思います」
「うーん、だいぶ歩いたけど一向に着かないんだよね、丘の上の家っていうか民家みたいな建物に、相変わらず真っ直ぐ中央分離帯を歩いているけど、道がさ、なんていうの地盤沈下? みたいにさ、デコボコしてんだよね、だから歩きにくいっていうか、そうそう言い忘れてたけど、わたしの格好ね、サンダルにワンピ……、ちょっと、ま、ま、まじ!?」
「……はぁ、はぁ……、いやね、さっきさー、カツカツカツカツって音が速くなって近寄ってきたから、あわてて逃げたんだけど、夢でもなんか怖いね、いまコンビニの看板が横になってたからさ、そこに隠れてんだけど、でー、コンビニがあると思うじゃん、どこにもないからさ、あるのは空き地、べつに壁に囲まれてるわけじゃないよ。広く見通せるんだ、けどね、なんか変なのよ、そう、静かすぎる。とても、わたしの耳がないみたいに」
「あ! そうだ、携帯電話あるかな……あ、あった。なにこれ、かけれんの? ちょっと開いてみるわ、あ! 言っとくけどガラケーね」
「え? なにこれ、画面がさ、わかるかな、ジジジジジってなってて、電波が悪いよりもっと悪い感じの、電源はつくんだけどね。まあ、いいや、べつに……え? 民家が目の前にある。いつの間にか、えっ!? と、戸が開いた、たぶん玄関、引き戸みたいな。中は真っ暗、うわーちょっと、い、いま目覚めないかな、なんかねー黒い物体がうごめいてるんだよね。玄関の中がさ……怖いけど……行ってみるわ」
「近づくとさ、ガンガンガンガンって音がさっきからするのね、うるさくてさ、なんなのもう。もう、目と鼻の先だよ。真っ暗だよ、失礼しまーす、誰かいませんか……」
「え? 急に音が止んだ、しーんとしてる……」
ギュイーーン! ギュイーーン!! ガガガガガガガガッガ!!!!
「きゃああああああああ!!」
「ちぇ! チェーンソーもった、化け物が! 追いかけて、くるっ!!」
ドスン、ドスン、ドスン、ドスン!
「……はぁ、はぁ、……いたっ! つ、つまずいてサンダルが! は、速くに、にげないとっ!」
「え? うわっ! マンホールの穴にひっかかった、いってて、膝すりむいた」
ドスン、ドスン! ギュイーーン!! ギュイーーン!!!!
「ぎゃーーーーーーーーーー!!!!」
ジリリリリリリリリン……。
「……」
「……ゆめ? 危なかったー……これやば」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




