↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/5

Series LAST Ghost Shop

 仕事が終わり、駅前のスーパーに寄ろうと思っていたのに、疲れすぎて冷蔵庫の中に何が残っていたっけ。そう考えているうちにスーパーを通り過ぎ、気が付くと自宅マンションに着いてしまっていた。

仕方なくそのまま自宅に入り、荷物を置いて冷蔵庫の中を物色する。

冷凍ご飯は朝に使い切ってしまっていて、シンクには水につけっぱなしの炊飯器の釜がぽつんと置かれている。

その他にも鶏肉はある為、ポークジンジャーソテーは作れるが、副菜を作る野菜がない。

ひとり暮らししてやっと気づいたが、生で食べられる野菜は足が早く、作り置きをしても2日と持たない。

9時間拘束の8時間勤務を終えたばかりの私には自炊する体力が丸で残っていなかった。

 私は部屋着にきがえ、ベッドに横になりスマホ操作する。 こういう時はフードデリバリーで楽をすることもひとつの楽しみだ。

手数料、サービス量が上乗せされるため、もちろん実店舗より価格は高いが、何物にも代えがたい楽さを感じてしまって中々抜け出せない。

今日は2週間に一度のご褒美タイムだ。

手際よくスマホ画面をスクロールし、今の自分が欲しい物を探していく。

今日の気分はガッツリ系を希望なので、丼物を探しスマホをスクロールする。海鮮や大手チェーンの親子丼、牛丼が並ぶ中、私はひとつのとんかつ屋さんを見つけた。星4つの口コミが多数あり、いい店舗を見つけたと、心の中で喜んだ。

 一応と思い、そのお店の実店舗をチェックすると、 

様々なビルディングが立ち並ぶ東京都新宿区の一角にある雑居ビルディングを地図が指し示していた。

なるほど、これはゴーストキッチンと呼ばれるもので、実店舗を持たない店舗だ。さらに、深く調べていると、衛生管理がしっかりしていて、提供クオリティも非常に高いという口コミを発見した。

 当たりを引いたかも。そう思い。注文ボタンを押した。

サービス料275円、送料300円と商品金額に上乗せされる料金のお陰で1品頼んだだけで合計お会計は2,500円を超えた。

まぁこれは許容範囲というか、仕方ない面もある。

私は料理とお出かけする手間をお金で買って、このソファーから1歩も動かず夕飯を調達できたのだ。

自分で1から作る億劫さを考えれば送料サービス料575円なんて、大した額じゃない。

そう考え薄れゆく意識の中、そっとソファーに沈み込むように寝転がった。

「ブーーッ、ブーーッ」

スマホのアラームで目が覚めた。時刻は注文してから20分後だった。

スマートフォンの画面には「配達員がまもなく到着予定です」の文字が並んでいる。

私は置き配を設定しているため、従業員がマンションのロビーに注文した品を届けて、配送完了の文字を確認した後、部屋から出てマンションロビーで商品を受け取る。

これが私の2週に一度の楽しみだ。

まだ暖かい袋を持ち上げ、私は部屋へと戻る。

誰が作って誰が運んだかも知らない数多にある飲食店のできた手料理を前に、作ってくれた人、運んでくれた人へ感謝を込めて手を合わせた。「いただきます」


 一度思考を止めてしまうと人間は、進化を止めてしまう。

実家時代は家事が得意で、兄妹のお弁当やパートに出る母のお昼ご飯を作っていた。

家事の中でも自炊は最も得意だった分野だ。

それが社会に出て一人暮らしを始めてからは、仕事に忙殺され大好きだった自炊が出来なくなった。

とにかく葉物野菜の足が速く、生野菜を摂取することがまず厳しい。冷凍保存の効くもやしや小松菜、白菜などが主に主要となり、さらに肉屋から仕入れた2kgの鶏もも肉も冷凍保存が効くため、月に二回、買い出ししてすべて小分けにして冷凍庫に入れ、冷凍保存で管理している。

お米は洗うのは億劫になり、無洗米を常備した。

しかし週休2日の仕事に加え、残業終わりに帰宅する日々を過ごすと、すべてのやる気がなくなり、指先一つで得られる食の快楽に頼ってしまうことが増えた。

夜ご飯は、仕事が早く片付いた日や、休みの日などにまとめて3~4日分の食事を作り置きすることが多い。しかしイレギュラーな昼食などを作るのが億劫になった時、ふと手にするのはスマホで、気が付くとチェーン店の注文画面を開いてしまっていた。

そんな昼下がりの午後。

   

  眠らない街新宿、フードデリバリーの多くは24時間稼働だ。

有名なファストフード店やファミリーレストラン、大手チェーン料理店、そして実店舗を持たないゴーストショップ。

今回見ていただいたゴーストショップは数少ない一例だ。

中には、劣悪環境で調理場を運営しているゴーストショップは少なく無い。

今の消費者に求められているものは、良心的な価格設定かつ良質な店舗を見分ける能力である。

フィンガープリンセスになる前に、今一度店舗名の検索や住所確認をし、実店舗を持たないゴーストショップの場合でも口コミなどを確認して安全なお店かどうかしっかり調べて利用して欲しいと考えている。

なんでも簡単に手に入る昨今、フードデリバリーという選択肢に身を委ねがちだが、是非今住んでいる自分の地域を歩いてみて欲しい。

もしかしたら珍しい国の伝統料理を出しているお店や、美味しいラーメン屋さんがあるかもしれない。

自分の足で歩いて見つけた料理店は検索して出てきたものより遥かに価値がある。

自分で見つけた美味しいご飯屋さんを集めた自分オリジナルの三ツ星MAPがあってもいいじゃない。

 人間は生きるだけで金がかかる。

そして人の食事回数にも限りがある。20歳から計算して1日3食を平均寿命の80歳まで食べると仮定すると66,960食となる。

1食1食を大事にすることで、人生の豊かさはまるで違うものになる。

 今貴方が手に取ったその1食は、本当に食べたいものですか? 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。