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シスブロ:ロストフライト1184  作者: velvetcondor guild


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第二十話

絆のともしび


湿地の霧の向こう、その喧騒を、木の枝からじっと見つめている影があった。


をとごろすであった。


彼は地上には降りてこなかったが、その鋭い黒い瞳で、中世の武者たちと現代の自衛隊員たちが、ひとつの篝火(バーナーの炎)を囲み、同じ飯を食っている光景を、静かに見守っていた。


言葉の壁も、千年の時の壁も、温かい一杯のスープと、一皿の飯の前には、一時的に消え去っていた。


「……真一」


真琴は、武者たちが笑顔で皿を舐めるように食べている姿を見ながら、弟の隣に座った。


「私たち、本当に過去に来ちゃったんだよね」


「あぁ」


真一は、自分の分のミリ飯を見つめながら、静かに頷いた。


「科学的には説明がつかない。だが、あの武者たちの胃袋に、俺たちの食糧が消えていく。彼らは間違いなく、今を生きている生身の人間だ。そして、歴史の歯車は、これからあの一ノ谷の戦いへと向かって動き出す」


真一は顔を上げ、すっかり元気を取り戻し、目を輝かせている源義経の姿を見た。


義経は、ステンレスのマグカップを大切そうに両手で包み込みながら、真琴に向かって悪戯っぽく笑ってみせた。


「未来の客人よ。この素晴らしい『戦糧』があれば、我らは平家など恐るるに足りん。一ノ谷の険しき崖など、ひと跨ぎで駆け降りてみせよう」


その無邪気な、しかし絶対的な自信に満ちた笑顔。


彼らがこれから向かうのは、鹿も通れぬと言われた鵯越、あるいは一ノ谷の峻烈なる崖の逆落としだ。


千年の時を越えた不時着。その絶望の淵で、現代の「命を救う技術」が、中世の「命を散らす英雄」の肉体に、新たなる炎を灯した瞬間であった。


三田の霧深い夜、軍勢は初めての温もりをその身に宿し、いよいよ宿命の戦場へと向かって、力強く歩みを始めるのだった。

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