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20話【墓穴掘って待ってろ】

 

「もうそろそろ大丈夫じゃないかしら?」

「いや、もう少し待とう。簡単に人の言うことを聞かない者もいる可能性もある」

「あぁ…あの人ですね…」


 ルードの言葉にダルケンはげんなりしたように呟いた。

 なにその厄介な人居ますみたいな空気。やめてよー。


「………」

「………」

「………」

「もう良いのではないでしょうか…?」

「いやまて、後30秒…」

「………」

「………」

「流石にもういいんじゃないかしら」

「まて!早まるな!」




 ─なんだこの茶番劇は。てかそんなヤバイ人居るの!?


「それじゃ、そろそろ行こうか。みんな手を繋いで輪になって」


 いい加減焦れたわたしが無理矢理纏めることになった。

 これ以上待つと行くのイヤになりそうなんだもん。

 左手をルード、右手をクロエ、正面にダルケン。

 一瞬捕獲された宇宙人の写真を思い出して何とも言えない気持ちになった。


「クロエ、目を閉じて転移する場所を思い浮かべてね」


 頷いたクロエを確認してさっきと同じ様に魔法を構築してゆく。 そしてわたし達はマグナスさんのところへ転移したのだった。












「なぜわたくしが出ていかなくてはならないの!?ふざけないでちょうだい!!」


 ─ひょえっ!!


 最初に飛び込んできたのは耳を突き刺すようなヒステリックに喚く女性の声。

 部屋は薄暗く、急に暗くなった視界に慣れない。


 三人はそこが精霊の森ではなくマグナスさんの寝所だと気が付くとわたしを庇うよう背に隠した。


 なんだなんだとわたしは彼等の脇から声がした方向に目を向ける。そこにはこちら側に背を向け、僅かに開いた扉の向こうに居るであろう女性と対面するクリードさんが居た。


「ですから、幾度も申し上げているではありませんか。マグナス様に大切なお客様がいらっしゃると」


 クリードさんの辟易とした様子の声色に、此処に来る前三人が言っていた人物は彼女かぁ…と納得した。うん、怖い。


「ならばわたくしが同席して一体何の問題があるというの!」

「エディーナ様、お声を押さえてくださいっ。マグナス様に障ります」


 キンキン喚く女性にたいして小声で返すクリードさん。そういうところもちゃんとしてるよね。見習えよ、エディーナさまとやら。


 それからほんの少しの問答を繰り返し、女性は無理矢理そばに仕えている人に引っ張られるように連れていかれた。

 扉の隙間からきゃんきゃん喚く声が木霊する。

 それを遮るように静かに扉は閉ざされた。


 ─ここが日本の病院なら確実に出禁だな、あの人。


 呆れながら成り行きを見ていたわたしの背後で衣擦れの音が僅かに聞こえる。


「騒がしいな…」


 嗄れた生気のない声。

 振り返ると大きなベッドがあり天蓋がそこに眠る人を隠していた。薄暗い上に天蓋のせいでわたしからはそこにいるだろうマグナスさんの顔は見えない。


「マグナス様、遅くなり申し訳ありません。クリード、ダルケン、クロエ、ルード、只今戻りました」


 クリードさんに続き三人も膝をつき跪いた。

 そんな彼等にマグナスさんは小さく笑う。笑うと言っても吐息を吐く程度の小さなものだった。


「お前たちが無事で何よりだ。顔を見せてくれ」


 その言葉に四人の顔が喜びとも悲しみともつかない、複雑な表情をしているのがわたしには見えた。


 側に寄ったみんなの後ろに付いて、わたしもベッドに近付く。


「──っ」


 彼等の隙間から見えた姿にわたしは息を飲んだ。


 落ち窪んだ目、頬骨の浮き出た痩せこけた顔。枯れ枝のように今にも折れそうな腕、指。顔色は土気色を通り越し、生者であることが不思議なほどだ。

 こんな姿になっても彼の命の火は普通の人間と変わらない。普通ならば灯火のようにいつ消えても可笑しくないはずなのに。


 ─なんという悪辣。


 わたしが彼を見て一番に感じたのは術者の性根の悪さだった。


 命をそのままに、体を衰えさせ、病床に伏し、動けなくなった姿を眺めて笑っているに違いない。

 そして思い通りに動かない体はいつしか精神を病んでゆく。それすらも計算に入れた何とも悪趣味かつ性根の腐った呪いだ。



「──なんと情けない。賢王と呼ばれた貴方がこんな体たらくでは、あの方が悲しまれますよ」


 それは突然だった。

 わたしの肩からバサバサと音を立てて羽ばたいていったファムがふわりとマグナスさんのお腹に降り立つ。


 ─ちょ!ファムさんなにしてんの!?


 みんなも驚いてあわあわと慌てている。


「しっかりなさい。そのような腑抜けた生き様で生を終えた貴方に、あの方は微笑んで(笑って)などくれませんよ」


「───…っ!」


 ファムを見たマグナスさんは大きく目を見開き、声にならない吐息をつまらせた。力の入らないだろう腕をファムにゆっくりと伸ばす。


「…っ、ファム、トルア殿…」

「……」


 まるで枯れ枝のような指がファムの顎をそっと優しく撫でる。ファムは黙ってそれを受け入れ目を閉じた。

 あんなに「人間は嫌いだ」と言っていたファムが、だ。


 わたしも含めみんなもその様子をぽかんと眺めていた。だってファムがマグナスさんと知り合いだなんて聞いてない。

 いやでも先代さんと仲良しだったって話だから、ファムと知り合いなのも不思議じゃないかな?


「まさか…クオンが…?」


 マグナスさんは視線だけで辺りを見渡す。

 しかし求めた人が居ないことに気が付き、小さく肩を落とした。


 ─クオン。それが先代さんの名前なんだ…。


 わたしは今までファムに先代さんの名前を聞いたことはなかったし、調べることもしなかった。

 ファムはとても先代─クオンさんが好きだったみたいだから、わたしの勝手な解釈で『思い出させるような事を聞くのは辛いだろう』と敢えて聞かなかったのだ。


「クオン様は亡くなられました。今は新たな王が私の主です」

「そう…か…。クオンはもう…」


 哀愁に染まる双眸がファムに向けられる。


「……その話の続きは後に致しましょう」


 ファムはぼそりと呟くと再び私の肩に戻り「勝手をしてすみません」と囁いた。わたしは小さく首を振る事で答える。

 クリードさんが振り返り、小さく頷いたのを見てわたしはベッドの傍らに進み出た。

 幼女体なのでベッドが高すぎて思い切り見上げなくてはいけない。それに気づいたクロエが椅子を差し出した。よじ登ろうとした所でクリードさんが両脇から手を差し込み持ち上げられ椅子に座らされる。なんか恥ずかしい。


「初めまして、ティアです。一応新しい精霊王をしてます」


 わたしと目が合ったマグナスさんは驚きで大きく目を見開いて、そしてまるで懐かしい旧友と出会ったような、そんな眼差しで彼は微笑んだ。


「初めまして…。私はマグナス。─マグナス・ノア・リナレスタ。違うと解っていても…やはりどことなくクオンに似ておいでですね…」


 ─なんと。あのイケメンに似ている、ですと?…あ、いや、そか。わたし今美幼女だったわ。


 思わず涙花だった頃の自分の顔を思い出してスン…としてしまった。

 たまに自分の今の顔の事忘れてしまう。仕方無いよね、まだ短いお付き合いだもの。


「えぇと、マグナスさんの呪いを解くためにお手伝いをすることになったので、よろしくお願いします」


 瞠目するマグナスさんにわたしはとある属性の魔法を施してゆく。彼に施すのは【聖】属性の魔法だ。


「マグナスさん。なるべく力を抜いてわたしの流す魔力をそのままに体に流すイメージで…溢れそうになる魔力もそのままに留まらせずに外に流しておいてください」


 マグナスさんは視線で頷くと瞼を閉じて体から力を抜いた。


「─ぁ!」


 わたしの後ろで祈るようにその様子を見守っていたルードが小さく声をあげた。


「なにか…出てきた…」


 ズズズズ…と黒い靄の様な物がマグナスさんの体から立ち上る。それは渦を巻きマグナスさんのお腹の1メートルくらい上に塊のように集い始めた。


「あ゛…ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」


 突然響いた人とも獣ともつかない呻き声。四人は戦慄き、わたしもあまりの気味悪さに身体中に鳥肌がたった。

 黒い靄からは人間の体のような物が這い出るように形を変え手を伸ばしてくる。


 ─ぎゃぁぁ!キモ!コワ!!


 わたしは全身に走る悪寒に耐えながら、マグナスさんの体から呪いを追い出すように一気に魔力を注いだ。


 そして黒い靄が完全に離れたことでわたしは急いでマグナスさんを包むように結界を張る。呪いが戻ることがないように。


 ─さぁ仕上げは…。自分の墓穴掘って待ってろよ!性悪魔術師!!



ブクマありがとうございます~(*´ω`*)


あれからマスク作りました。

一枚つくったら精も根もつきました…(´д`|||)

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