19話【眼福です】
ちょっぴり間が空いてしまいました(´Д`)
ルードが逃走してしまったので恋バナを聞きそびれてしまった。残念。
「恋バナごときで赤面しちゃって、初々しいねぇ…」
にひひ…と人の悪い顔で笑うわたしにクリードさんがくつくつと小さく笑った。
「弄らないであげてください。ルードはまだ成人したばかりで女性には不馴れなんです」
「あの顔で?」
「はい」
「そうなんだ…。わたしはてっきり…」
─パリピ野郎かと思ってたよ。
とは口に出さなかった。
だってルードは顔面含め見た目2.5次元俳優なんだもん。現代日本に生まれてたら今頃女の子と言う名のビッグウェーブにもみくちゃにされてたに違いない。
ま、2.5次元も見る分には好きだったけどチケット取って追い掛けるほどじゃなかったので、わたしの中でルードの顔が琴線に触れることはない。恋愛対象外のお顔なのだ。言わば観賞用だ。
正直に言うと何処かのイケメンとくっついてくれればそれなりに観賞出来るので、わたしとしてはそちらを希望したい。言わないけどね。
「じゃぁクリードさんは? 恋人は居るんですか?あ、それとも奥さまかな」
「いえ。独り身ですよ」
ありゃ、意外。わたしはてっきり結婚してると思っていた。
「恋人もですか?」
「はい」
「それは…世の女性は見る目がないんですね。クリードさんの笑顔はとっても素敵なのに」
わたしが人間に転生していたなら相手にされるかされないかはさておき、迷わずロックオンすると思うのに。
「残念ながら未だ良縁には繋がらず…お恥ずかしい話です」
照れながら苦笑するクリードさんの笑顔はやっぱり暖かなお日様の笑顔だ。
「大丈夫です!わたしの御墨付なのでクリードさんなら素敵な人に出会えますよ」
グッと拳を握り締めて言えばクリードさんはありがとうございます、と笑顔で答えてくれた。
お世辞じゃなく本心だ。
朝食の前、改めてお礼を言いたいと言われて深く頭を下げられた。その姿がとても真摯で、わたしはみんなが必死で彼を死なせたくないと戦った理由が何となくわかった気がしたのだ。
「─それはそうと。昼食の時も言いましたけど、喋り方が元に戻ってます。わたしに対しての言葉遣いはみんなと同じにしてください。クリードさんが口調を直してくれないとみんなが気を使いますから」
「しかし…」
そう、クリードさんだけたまに言葉遣いが元に戻ってしまう。
昼食の時はぎこちなくてもみんなと同じ様に喋ってくれてたのに、ふと気が付くと元に戻ってしまうのだ。
「ふぅ…。仕方ないですね。じゃぁこうしましょう!」
わたしはその場で立ち上がりクリードさんに向かって右手を差し出した。
クリードさんは困惑の表情でわたしと右手を交互に見ている。
「初めまして。わたしはティア。お料理とお裁縫が趣味なの。よかったらお友達になりませんか?」
クリードさんはポカンとわたしを見つめた後、意図を察してくれたのかそっとわたしの手を握った。少しゴツゴツした大人の男の人の手だ。
「初めまして。私はクリード・ルドベルク。イデア王国に仕える騎士で趣味は愛馬との遠乗りだ。よろしく」
にこりとお互いはにかむように笑い、握手を交わす。
「これでわたしとクリードさんはお友達ね!」
「あぁ。精霊王と友達になるなんて人生わからないものだな…」
「ふふ。わたしも人間のお友達が出来るなんて思ってなかったよ。初めてのお友達が皆でうれしい」
これから言葉遣い間違えたらペナルティね!とニヒヒと笑っておいた。
「でもわたしはクリードさん、て呼ぶからね?」
流石に騎士団長さんを呼び捨てには出来ないもんね。
「ティアの気に入ったように呼んでくれて構わない」
わたしは「ペナルティは何にしようかな~」と笑みを浮かべてお裁縫を続けた。
クリードさんはたいして面白くもないだろうわたしの手元を覗き込む。別に恥ずかしいことをしている訳じゃないけど、なんかお尻がむずむずするのを感じながら、わたし達は他愛のない会話を続けた。
クリードさんにはわたしは恐らく純真な幼女に見えていたに違いない。
わたしは優しく微笑まれる度に心の鬼に身を責められていた。
かと言って反省してる訳じゃないけどね!
─いやぁ~…たまらんね!
そう。
わたしは無垢な幼女を演じつつ、がっつりとクリードさんの肉体を拝んでいたのだった。
筋肉最高!
─眼福です。ごちそうさま~。
そして日が傾き出した。
四人は此処に来たときと同じ様に甲冑を装備する。そのまま持って帰ればいいんじゃ?と思ったけど荷物になるじゃないか、とルードに言われて納得した。確かに大荷物になるな、と。
「待たせてすまない。準備完了だ」
クリードさんがそう告げると三人も頷く。
わたしは別に準備が必要じゃないので、ファムと一緒にみんなが準備する様子を見ていた。
「えぇと…先に聞いておきたいんだけど、マグナスさんが呪いを受けて臥せっているのを知っている人はどれくらい居るの?」
「真相を知るのは私達四人と現王フェリクス様、第一皇子、そして第二妃と第二皇子、そして治療に中っている宮廷魔術師団長です。その他の者にはマグナス様はご病気、と言う事になっています」
「私達がティアを探しに来たのも表向きは『病を治す方法を聞くため』という事になっているわ」
ダルケンに続きクロエが聞きたかったことも答えてくれる。
「そ。それなら直接マグナスさんの所に転移した方が良いかな?」
正門からこんな格好で行きたくないし丁度いいや。このままベッド横にでも転移しよう。
─いやちょっと待て。このまま直行はやっぱりダメだ。先に一人転移させて人払いを頼もう。
「誰かマグナスさんの病床に入ったことがある?」
「僕達全員あるよ」
「そか。んじゃ、誰か一人先に転移させるから部屋に誰か居たら人払いをお願いしてもいい?そしたらその後、1分位経ったら全員で行くから。あぁ、ちなみにわたしが行くってことは秘密ね」
誰が先に行くかと話し合った結果、近衛騎士団団長のクリードさんが行った方が説得もうまくいくだろうと言うことでお任せすることにした。
「目を閉じてマグナスさんの居る部屋を思い浮かべて?」
わたしの前に跪いたクリードさんの肩に触れ、転移のために魔法を構築してゆく。
わたしは自分が行ったことのある場所ならすぐに飛ぶことが出来るけど、この場合はクリードさんの思い浮かべた場所に彼だけを飛ばさなくてはいけないので思念を読み込まなければいけない。彼の思い浮かべた場所、意識そのものを魔法の一部に置き換えて発動させる。
「─団長が消えた!」
瞬きの間にクリードさんの姿が消えた事象に、驚いた様にルードが声をあげた。
「そりゃ転移だからね。消えなきゃ駄目でしょ」
「転移の魔法には膨大な魔力が必要ですから。ルードが驚くのも無理はありません。私も一度使えば魔力の枯渇で2日寝込むことになりますから」
呆れたように告げればダルケンが苦笑しながら教えてくれた。
わたしは一瞬ぽかんとしてしまう。
─何てことだ。今更だけどわたしめっちゃズルしてるじゃんか。
わたしの魔力の根元は精霊界なので、枯渇の心配はほぼ無い。…多分。
なんか思いっきりズルしてる気がする。
─ぐぅ…っ。本音を言えば魔力だけチートじゃなくて肉体の方もそこそこチート仕様に転生したかった…。
「ファム。わたしガンガン魔法使っちゃってるけど精霊界に悪影響とかないのかな…?」
こっそりファムに囁く。
「全く問題ありませんよ。ティア様は滅多に魔法は使いませんし。例え転移魔法を千連発しても全然大丈夫です」
「あ…そうなんだ…」
小声で返してくれたのでわたしも小声で答える。うちのファムさんは空気の読めるいいこだ。
─よし。そうと分かれば気兼ねなく魔法も仕えるってもんよ!て言うか【世界の記憶】ちゃんと見とこう…。こういうの絶対わたし見逃してるよ…。
転生してから趣味や料理なんかに没頭してたから正直【世界の記憶】全然見てなかったんだよね。
きちんとトリセツ見とかないと後々痛い目見そうだし、解呪が終わったらちゃんとこの世界のお勉強をしよう、とわたしは心に決めたのだった。
ブクマありがとうございます(*´ω`*)
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早くコロナ沈静化すると良いですよね…(´・ω・`)
使い捨てマスクが底つく前にガーゼマスク作らなくちゃ…(o´Д`)=з