後日談
アールシュヴァルツの家は、パーフェクト・ワールド騒動が起きても尚、孤児の養育所として運営されていた。
其の場にはソワとリルノの姿、アールシュヴァルツに、そして姉であるシレイルと、共に行動していたオズハルドの姿があった。
彼ら彼女らは楽しく談笑していた。机上には届いたばかりの新聞が置いてあり、見出しには「零神主義運動団体、レティスギア解散」と書かれていた。
事実、あの後のユイトやカイアス、ロアトルと言った主要メンバーの行方は未だに不明であった。
そもそも、彼らが何処へ行くのか。根本的なそれさえも、分からずにいたのである。
「…あたいはお嫁さん役!だからソワくんはお婿さんの役やって~」
「えぇ…」何処か嫌々そうな顔を見せる彼。「またおままごとやるの?」
「うん!あたいはおままごと大好きなんだよ!!」
「それは知ってるけどさぁ…」
2人が仲良くじゃれ合っている中、アールシュヴァルツたち3人も話しあっていた。
今や世界情勢はレティスギアによって破滅に近い混乱状態となり、何が真実で何が虚偽か分からない状況なのだ。
どのマスメディアが伝える情報が正しいのか。其れさえもはっきりとせず、真理と言う絶対的概念があやふやになってしまっているのである。
此れでは何が確立されて、何が現実なのか、全く区別つかない。
「…カイアスの行方は不明らしいな。あいつ、最後の最後にはチルノに協力したらしい」シレイルは飽くまで憶測上の話を述べた。
「…アリスノートを殺せたことで、奴の復讐は終わった。ああする事は既定路線だったのかもな」オズハルドは煙草を吸いながら言う。
「しかし、なぁ…」此処でアールシュヴァルツが口を開いた。「またこんな騒動が起きなきゃいいけど、にゃ」
「当分の間は起きないだろう。しかし、第二第三のカイアスやユイトが登場しないとは限らない」シレイルが言う。
「そうだ。…かつて元老院議員で、今は総務省勤務の神泉藍佳って奴が、あの後にレティスギアへの加盟が発覚して、辞任するらしい。メイド副統轄のクォールも、フィリキアの下、解任されたらしい。今や混乱した世論の共通点が、零神主義弾圧だ」
「零神主義弾圧…今じゃ異端思想か」オズハルドが皮肉って言った。
「…だが、暫くは平和が築けるだろう。第二次蒼穹而戦争は、あの後ジェノヴァスの働きで食い止められた。暴走した世論も鎮圧されつつある」
「これで良かったのかにゃあ…」アールシュヴァルツは心配な声を上げた。「本当に、こんな結末で良かったのかなぁ」
◆◆◆
リ・レギオンの初期メンバーであるアールシュヴァルツたちは、第二次蒼穹而戦争を食い止められた事で円満にリ・レギオンを解散した。
元々長官職であった彼らは元の職務に就き、レヴィンやアーセはバルトロメイの計らいで防衛庁に入庁した。
ステルス機であったゼロアは、黎明都市へ譲渡する事をフィリキアが公言し、防衛庁へ配備されることと為った。
レヴィンとアーセはそのゼロアの担当に任され、場所は違えどやる事は同じであった。
騒動が終わってからと言うもの、ブリュンヒルデとアーシアは2人でファミレスに来ていた。
基本的な料理は何でも扱っているレストランであり、ブリュンヒルデはステーキを、アーシアはピザを頼んだ。
同時にドリンクバーを注文し、互いに色々なジュースなどを飲みながら、会話を交わしていた。
「…実はブリュンヒルデとレヴィンが兄妹だったとはな」アーシアが開口、其れを言った。
「まあな。しかも、私と同じ学校にカイアスがいた。これも運命と言うのか、なんなのか」
「…殆どの人物が律城世界出身なんだな。なんだか私が黎明都市出身だから疎外に感じるよ」
「そんな訳ない、寧ろ私たちが疎外者だな。…だが、これで暫くは平和な状態が保たれるはず」
「そうだといいね」アーシアは心配そうだ。
「…そうじゃなくとも、また変えて見せるだけさ。私たちは、無限大の力を持っているんだから」
◆◆◆
「…チルノ、久々だろうけど、授業には現抜かすなよ?」
「当たり前じゃない!あたいは頭いいもん!」
寺子屋で、チルノを交えた久方ぶりの授業とあって、全員は嬉しそうであった。
しかし、彼女の隣の机は依然として空席のままであった。チルノがその席を気にした時、教壇にいた慧音が淋しそうな顔を浮かべた。
だが友人たちは嬉しそうな顔で、チルノに沢山話しかけた。
その幸せは、依然として続いた。慧音もその偽りの幸せに韜晦させていたが、ユイトの失踪は逃れられない事実であった。
彼女は、授業が終わった後に、以前ユイトと夢を語り合った場所である霧の湖の畔に来ていた。
其処で、背中の鞘を湖に投げ捨て、ルインタイプライターを地面に刺したのである。
まるで、此れが彼の墓標だと言うかのように。チルノは徐に涙を流しながら、その場を後にしたのであった。
其れは、彼女がもう戦わないという意思―――現に墓標は深紅が滲んでおり、絶望や狂気さえも孕んでいる。
しかしチルノは其れを望んではいない。この世界に必要な決心こそ、ユイトの欲していた「概念体」なのではないのだろうか。
LETISGEAR OVERTECHNOLOGY TOHO FANTASY完結です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
今回は何時もとは違って約30万文字。伏線を貼りまくって、結果的に暴発した、そんな感じですかね。
ラスボス戦前の会話が少ないゲームは名作が多い、とゲハ板でのレスに終始鑑み、今回は少なめにしました。
そして自分はいつも暇なので、いつも合う戦闘曲を考えたりしてます。
〇通常ボス
→Wind of Madness -バイオハザード5
〇神の代理人戦
→Masquerade of Lies -英雄伝説 空の軌跡
〇カイアス・レプリカント(幻想郷編/第一形態)
→Magalo Strike Back -Toby Fox
〇カイアス・レプリカント(幻想郷編/第二形態)
→反撃の狼煙 -ダンボール戦機W
〇アリスノート・ノエル・フィンランディア
→シーモアバトル -FINAL FANTASY X
〇カイアス・レプリカント(律城世界メタトロン編)
→希望と絶望の狭間で -ダンボール戦機
〇レミリア・スカーレット
→亡き王女の為のセプテット -東方紅魔郷
〇縷誣王オルディミス・アキレス/ロアトルヘブンス
→Overdosing Heavenly Bliss -英雄伝説 空の軌跡
〇神泉藍佳&実験型黎明アーマー『エンゲルス』
→RAVUS AETERNA -FINAL FANTASY XV
〇上崎ユイト
→決戦、変革の境界にて -ダンボール戦機ウォーズ
〇ワールド・ウェポン(上崎ユイト第二形態)
→VS空想ユメミガチーノ -妖怪ウォッチ3
段々とラスボス色を濃くしていったつもり。
無謀と勇気の哲学を、自身の考えに合わせて練り込んでみた。




