おじゃまします♡
ここは、月面の地下深くに隠された巨大ホール、あるいは秘密裏に造られた格納庫と呼ぶべき場所。
その格納庫の中央に鎮座するのは、"リュシニアクヌ"と名付けられた・・恒星間航行が可能な多目的航宙艦。
ただし、この航宙艦は異星人による製造ゆえに、シズクたちにとっては未知の存在・・・
構造も仕組みも思想すらも理解の外側にある・・まさに人類の常識を超えたオーパーツ的存在だった。
そんな・・未知の存在、全長およそ5町にも及ぶ巨大航宙艦のハッチが開き、
まるでシズクたちを、"おいでおいで"と誘うように口を開けていた。
異星人の記憶を取り込んでいるシズクは、その内部は無人、敵対者はいないと判断し、
ほとんど無防備なまま、気楽な気持ちで中に踏み込もうとしたところ・・・ジロウ君 (オキタソウジロウ)が慌てて駆け寄ってきた。
「シズク姫! 危険です。まず俺が入って、中を確かめます」
鋭く、迷いのない声。
その"男らしい申し出"に、シズクの胸が一瞬だけ揺らぐ。
しかし、航宙艦の内部は異星人技術の塊。
異星人の記憶を持たないジロウ君のほうが、むしろ危険に晒される可能性が高い。
不用意にスイッチを押してしまって自爆するとか、排出されるとか、洗濯されるとか・・何が起きるか分からないのだ。
シズクはジロウ君のほうを向き・・静かに首を振った。
「これは・・・陰陽師としての領分です。私が先に入ります」
その言葉を受け・・・
ジロウ君は、わずかに反論しかけた。
" 姫を危険に晒すわけにはいかない "と、喉まで言葉が出かけたのだ。
だが、彼女の素晴らしき能力・・"陰陽師"としての力量に敬意を払いその言葉を飲み込んだ。
そして、静かに一歩下がり、シズク姫の背後へと位置を変える。
どんな事態にも即応できるよう、全身の気配を研ぎ澄ませ、刀の柄にそっと手を添えた。
少しでもシズク姫の安全を確保するためなのだ。
それが彼の揺るぎない判断だった。
だが、ジロウ君の配慮を知ってか知らずか。
シズクはなんの躊躇することなく、白き巨艦の内部へと足を踏み入れる。
その後を追うように、同じく興奮気味の弟シノブも続く。
そして、その最後尾には、ただ一人、警戒を緩めないジロウ君の姿があった。
「うん、これって"わくわく"しちゃうのよね!」
「ねーちゃん! 僕も・・わくわくする!」
シズクの胸に高鳴るのは、抑えきれない異星人文明への期待。
そして、その背中を追う弟シノブもまた、瞳を輝かせていた。
さすがは似たもの姉弟、考えることは一つらしい。
シズクを先頭に、いざ! 未知なる世界へ。
だが、その歩みの先で彼らを待ち受けていたのは、常識を遥かに超える光景だった。
五百年という途方もない年月を経た"骨董品"であるはずの船内。
それなのに、足を踏み入れた空間は息をのむほどに清潔で、今なお静かに脈を打つ自動メンテナンスシステムが稼働していた。
・・そう、二足歩行の鉄の塊。
いわゆる無人作業ロボット(オートマトン)が艦内を絶えず移動し、艦の修理やメンテナンスをおこなっていたのだ。
それは、有人ではなくなってもなお・・悠久の時を越えて老朽化させない驚異のテクノロジー。
自ら修理し、自ら維持し続ける、完全なる自律システム・・・!
異星人の記憶を受け継ぐシズクは、これらの機械たちの仕組みとその背景をある程度・・理解していたのだ。
彼女は、人の形に似せた無骨な作業機械を軽くポンポンと叩き、その未知なる技術力に感嘆の声を漏らした。
「なるなるなる・・ほど! これは、私たち・・数百年かけてもたどりつけない技術よね・・魔法といってもよいぐらい」
だが、何も知らないジロウ君は違う。
未知なる物体。人の形を模した、得体の知れない"人形"に・・・
強く警戒し、いつでも抜刀できる構えをとっていた。
シズクはそんな彼に、そっと声をかける。
「ジロウ君、そんなに構えなくても大丈夫。
彼らは無害よ。襲ってくることはないから・・・」
「うむ・・承知した」
短く返答はしたものの、その返答とは裏腹に・・・ジロウ君の警戒は一切ゆるまなかったのである。
だが、そんな彼をよそ目に、シズクとシノブのふたりは、目の前に広がる未知の異星人技術に心を奪われ、興味深々となっていた。
立体映像にディスプレイ・・動く歩道に清掃マトン
「ねーちゃん、これ見て! なんか・・すごい」
「へぇぇ・・文字が映し出されるガラス窓!? これが、ディスプレイというものなのね」
異星人の記憶を持つシズクは・・その機能と用途を瞬時に理解したと同時に・・
直面すべき大きな問題点に気づいた。
「あっ・・この文字、普通の人には読めないよね。異星人の文字だもんね。
シノブには読めるかな!?」
「読めないよ! こんな文字・・初めて見た」
艦内に浮かび上がるディスプレイの文字は、地球上のいかなる言語体系にも属さない・・未知の記号。いや、あるいは高度な言語そのものだった。
おまけに、艦内に響き渡るアナウンスの音声は、異星人発音・・ただの雑音としか聞こえないのだ。
・・もっとも、異星人の記憶をその身に宿したシズクだけは・・その意味を淀みなく理解できる。
また、彼女の記憶をダウンロードした白狸の"ゆきたん"もまた、その文章を読めるだろう。
しかし、その恩恵にあずかっていないシノブとジロウ君の目には、ただの意味不明な暗号としか映っていなかった。
「う~ん、なんとかして、読めるようにしないと・・・あとあと困ることになるね」
そんなことを、シズクがそう呟いた瞬間・・
彼女の意識の奥底に・・・この艦の構造と制御する方法そのものが浮かび上がってきたのだ。
それはまるで長年使い慣れた道具のように、艦の内部構造が"手に取るように"理解できてしまったのである。
そう、この艦の元所有者である異星人から受け継いだ記憶の恩恵。
つまり、この航宙艦の新たな主は、他ならぬシズクが就任したということになる(曲解)
「ならば・・ぐずぐずしていられないわね。
すぐに艦橋室へ向かって、この艦のすべてを私たちの手で掌握するわよ!」
そして・・艦内コンピューターをいじくって、艦内の表示システムを日本語に書き換えましょう♡
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




