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0.始まりの物語

新章始まりました!妄想が加速していきそうな展開ですね!


文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

「大楯隊!前へ2歩――〈リミテッドブレイク(限界突破)〉!」


 僕がその魔(・)法(・)を(・)唱(・)え(・)た(・)瞬間、黒い鎧を着込んだ大楯兵たちが、岩壁のように一斉に目の前の異形の相手に盾を押し出す。

 

「――っだらあ!お前らそんなもんか!もっと押し出せ!」

「「「おおう!!」」」

「そんなんじゃ、アルスの坊に頼りないと思われるだろうが!気張れや!」


 ドワーフの大きく威勢のいい声が聞こえる。


「アルス!カイより伝令!南門に中位級が一体!持たないみたい!」


 赤い髪をなびかせながらエルナが報告に来る。よく見ると、所々腕や足に切り傷があるが、今やこの砦で傷がない者を探す方が難しいだろう。


 まずいな。カイも限界に近いか、と頭の中で配置を再度思い出す。

 ルビーに増援に行ってもらうしかない。だが、こちらの守りも薄くなってくる。

 考えていたのは一瞬。ルビーの持ち場を見た。隣の階段で敵と交戦していたルビーは、ケイトと一緒に異形の相手を切り殺していた。

 頭に小さな角が1本。緑色の肌。三体をまとめてハルバードで薙ぎ倒していたルビーに、大声で指示を出す。


「ルビー!南門に行ってくれ!……エルナ。ルビーに行ってもらう」

「まじ……っすか!人使いが荒いっすよー」

「南門を破られたら終わりだ!カイの増援として行ってくれ!」

「何人連れてっていいっすか!」

「20人!それ以上はこっちが持たない!悪いがケイトは残してくれ!」


 ケイトまでいなくなると、さすがにこの持ち場が厳しくなる。


「ちっ!アルス!後でご褒美あるんだろうなー!」

「その時はマーガレットに褒めてもらえるように言っておく!」


 ルビーは僕の方を見ると、こっちを指さしてきた。その指は、約束だぞ、と言っているのだろう。

 すぐ隣のケイトに一言二言話をし、周りの団員を連れて駆け出した。


「エルナ。少しメルに回復してもらった方がいい。その状態で次やられたらきついよ」

「私より重症な人が多いの。これ以上メルに負担はかけられないわ」

「そこまでひどくなってきたか…。いよいよ持たないぞ。帝国軍は何をしているんだ!」


 侯爵の軍勢が入ると聞いたのは三日も前の話だ。どう考えても、もう到着していておかしくない日程だ。それなのにまだ北門の方からは人一人見えない。

 

 何か来れない理由でもできたのか……。それにしても、こちらへ連絡もくれないとはな。


 あの侯爵のことを思い出し、それもあり得るか、と独りで納得する。

 僕たちはそこら辺の傭兵だ。だが、侯爵もこの要塞の重要性はわかっているし、駐屯軍もここには居る。


「アルス、仕方ないよ。とりあえずはありがとう。これで少しは南門の方も持つと――」


 ボンッ!


 僕たちのすぐ後ろにあった櫓から急に炎が上がった。


「エルナ!まずいメイジだ!中位級が出てきた!こっちも余裕はなくなってきたぞ!悪いがこのまま……」

「わかってる!そこ!その弓矢を貸して!」


 エルナは慣れた手つきで、弓矢に矢をつがえて壁の下に向かって放ち始めた。よく見ると〈フィジカル(身体強化)〉を発動している。

 下を見れば黒い異形の存在――魔物が続々と湧いているのが見えた。


 くそ!あの時の依頼を受けたのは失敗だったか、と心の中で毒づく。

 

 あの時に戻れるなら戻りたい――


 そんなどうしようもない過去。いつだって後悔をするときは今だ。

 

 【いい人生】


 いつもその問いかけは、僕を――



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 ――遡ること2ヶ月前。


 マーガレットから傭兵団アジトをもらい、碧狼傭兵団と名をつけたあの日から、約3年が経っていた。

 僕は8歳に、メルは9歳になっていた。


 あの後、マルクやアリアが傭兵団に来た。

 僕とメルを見るなり、泣きながら抱きついて喜んでくれた。

 そして、サリエラが亡くなったことを知ると、二人とも悲しみに暮れた。


 そして、マルクとアリアに事情を話した。2人は納得はいかないものの傭兵団で暮らす事になった。

 ゲインにも会って僕の身の上の話を話した。2人はそこまで詳しく聞いていなかったのか、とても驚いていたが「俺たちの息子に変わりはねえ」と言ってくれた。


 僕はそのとき初めて、2人を両親なのだと認識したのかもしれない。今までは僕自身から壁を作って、どこか他人だと思ってしまっていた。

 これからは、もっと2人にも頼っていこう、と心に決めた日でもあった。


 ーーそれから3年。


 傭兵団はどんどん大きくなっていった。

 今や団員の数は、事務方も含めて300人近くになった。

 僕は主にどの仕事を受けるのか、どのように傭兵団を運営していくかを担当した。


 スラムの人を中心に人材も確保した。中には元黒蛇の帳の者も居たが、しっかり見て雇うかどうか決めていった。

 最初は試験雇用3ヶ月。その後、本採用とした。

 子供の傭兵団と言うことで、舐めて試験に来る者も居たがマルクとゲインが黙らせていた。


 最初は、僕の指示に従う者なんてほとんどいなかった。けれど、一つずつ仕事をこなし、失敗を重ねながら、少しずつ信頼されるようになった。


 そして気づけば――

 僕の周りには、僕を信じてくれる人たちが増えていた。



 そして三年目に入った頃、僕は自分の身体に変化が起きていることに気づいた。

 魔力が――増えていた。


 魔力は生まれてから固定だ、とゲインから聞いていた。しかし、少し増えていたみたいだ。原因は周りに聞いても分からなかった。


 体質?皇族の血がなせる技?まぁ、今は結果として良かったことだけ喜ぼう。


 そしてゲインから皇族は、周りを強化する魔法が使える事を聞いた。そして最近になって周りを一時的に限界まで強化する魔法を見つけた。


 その名も〈リミテッドブレイク(限界突破)〉。


 名前はゲインもよく知らないとの事なので、自分で命名した。

 自分が分かりやすければ発動するのだ。


 半径50ルムドにいる僕(・)を(・)信(・)頼(・)し(・)て(・)る(・)者(・)の(・)み(・)一時的に【全能力向上】を付与できる。

 その能力の付与率は、僕への信頼度で変わることも分かった。


 他のメンバーはゲインとマルクに鍛えてもらい、だいぶ強くなった。元騎士団と警備隊の人の教育は凄まじい。僕も毎日やらされているが、今でも筋肉痛になる。


 カイは傭兵団の団長として威厳が出てきた。元々顔が良かったが、更に凛々しさも加わった。最近髪も染めなくなり、その下から金髪が今は輝いている。

 まさに王子様だ。その為スラムでは目立ち、平民区からもたまに見に来る者もいるくらい人気だ。


 エルナだいぶ苦労するよ……。


 メルは回復魔法をアリアの推薦で教会で学んでいる。アリアの時と同じで教会所属となったが、よほどのことがない限りは好きにしていいらしい。

 今は助祭補として頑張っているが、教会の中でも人気だ。元々アリアも美人だが、メルは青い瞳も相まって金髪碧眼美少女となっている。

 髪も肩より下まで伸ばし、アリアさんに似てきた。

 帝都司祭からも、このまま教会で働いて欲しい、と言われているらしいがメルは断っている。


 メル曰くーー

「アルスには私がいないとダメだから!」

 との事。


 何故だ。そこまで変な事をしている気はしないし、生活もしっかりしているつもりだ。

 たまに徹夜したりしてるだけなのに……。週2回の徹夜くらい余裕ですよ?メルは、僕の仕事をいつも夜になると切り上げさせる。


 さてさて、ここまでが3年の成果だ。



 仕事も定期的に護衛任務が入ってきており、マーガレットに上納金を収めても利益は出てる。


 今日はその護衛任務の一つだが大きな仕事だ。



 何せ相手は貴族なのだ。


 何を言われるのか……今から不安で仕方ない。




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