epilogue.皇帝の資質
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
こっそり差し込んでみようかと…エピローグ。
俺は――“いい人生”というものを知らない。
人を信じられず、信じられない自分が嫌いで、それでも生きてきた。
かつて平民として育ち、事情があってスラムへ落ちた。
そこで出会った仲間たちと傭兵団を作り、魔力を封じられたまま戦っていた。
思えば今に至るまで、どこか仲間を信じ切れていなかったのかもしれない。
本来なら“人を信じること”で真価を発揮するはずの俺の魔法は――
その力を使えなかった。
それでも、皆は俺を信じてくれた。
俺が信じられないものを、皆は信じてくれた。
……だからこそ、今でも思う。
人を信じることは、本当に“いい人生”につながるのだろうか?
その答えは――どこにある?
春先に吐く息は白く空気に溶けていく。
魔力が震え、青い光が俺の周囲で脈打つ。
「陛下。御身のお言葉を賜りたく」
セルディアスが静かに馬を寄せてきた。
「あぁ。前に出よう」
黒く逞しい愛馬ラドンに跨る。
ラドンは大きく嘶き、戦場全体を見渡せる位置へ進む。
一人の女性が立っている。
白銀の鎧の隙間から淡い光が漏れている。
「陛下! 御身に光の導きを」
煌めく金髪。青い瞳は相変わらず垂れ目で可愛らしい。
「2人きりの時は旦那様でもいいぞ」
「御戯れを……。近くにはいなくとも、皆が陛下を見ております」
「そうか、皆が余を見ておるか……」
眼下に並ぶ兵たちを見下ろし、続けた。
「なぜ、皆は俺を信じているのだろうか」
彼らは俺の何をそこまで信頼しているのか。
「無論。陛下ならば、この国を必ずよくしてくださるという希望。
自分たちを正しき光へ導いてくださるという期待。
そして――陛下ならば、必ず勝利へ導いてくださるという確信があるのでしょう」
「そうか……俺はいまだに自信がない。
皆からの信頼は得ても、自分自身を信じ切れていないのだ」
この十万近い兵士を率いる立場になった今も――
俺は“いい人生”を歩めているのか分からない。
兵士たちは、俺が彼らの未来を守ってくれると信じている。
ならば俺は、彼らに応えなければならない。
「余はこの戦争は勝利せねばならん。
我が国は常に勝ち続けねばならない。
故に――」
俺は血統魔法を発動させる。
青い魔力が戦場全体を包むように広がり、兵士一人一人と共鳴する。
これは俺の力を示すためではない。
俺が“皆を信じている”と示すための魔法だ。
その瞬間、戦場にいるすべての瞳が俺に集まった。
そして、俺は大きく息を吸う。
心の中にいる“人を信じきれない弱き俺”は、今この瞬間よりいなくなる。
兵士たちが望む未来――その【いい人生】を与える存在になる。
「余は、この帝国において最上の存在である!
其方らに死を命じる者こそ、余である!
そして――この戦のすべてを見つめる者でもある!」
「余は――」
風すら止まり、戦場が息を呑む。
「第七代皇帝、アルス・アウグスト・ヴェルディアである!」
俺は剣を抜き、天高く掲げた。
「女神ルミエラよ! ご照覧あれ!」
その瞬間、兵士たちの声が地鳴りのように広がった。
「皇帝陛下万歳!」
「帝国に栄光あれ!」
「必ずや勝利を!」
セルディアスが一歩前へ出る。
「セルディアスよ。2万の騎兵を率いて、突撃せよ」
「はっ! 必ずや御身に勝利を!」
十万の軍勢が動き出す。
白い鎧の波が地平線まで埋め尽くし、十五万の敵軍が迫る。
「――来るぞ」
ラドンの手綱を握り直し、青い光を纏う。
白い光とぶつかり合い、戦場が震える。
「さあ――征こうか」
そして俺は、青い光を纏ったまま前を見据えた。
”いい人生”……その答えを探しに。
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