112話 向かう先
「皆、ご苦労じゃった」
桃吉郎たちが艦橋に到着すると、ドクター・モモが労いの言葉を送り、彼らを迎え入れた。
だが、その肌色の多さから苦笑もした。
「なんじゃ、おまえら。揃いも揃って素っ裸になりおって」
これに桃吉郎は持論を展開した。
「阻害する物が無くなり戦闘能力はギュンと向上した!」
そして、妹のトウキも援護に回る。
「おっぱいの、えんしんりょくで、こうげきりょく、にばい!」
んなわけあるか。
「あ、僕はExtraスキルに目覚めました」
トラ娘の報告は事実である。
「やはり全裸は良い。生物の自然体は真の力を開放します」
変態の言うことは一理あるが、理性持つ生物であることを自覚した方が良いだろう。
「……まぁ、ええわい」
そして、この老科学者である。
一応はツッコミを入れたかったのだろう。
そして、その欲は満たされたので、全裸に対しての興味は失われたのである。
「いや、もっと言ってやってください」
「……そうだ、そうだー」
凍矢姉妹は桃吉郎のあれやこれやをチラチラ見つつも、理性ある者の代表として意見を述べる。
「いやじゃ。こいつらを諭しても時間の無駄じゃ」
「がはは! 褒められたぞ!」
「やったー!」
凍矢の電光石火の拳骨が炸裂した。
桃吉郎兄妹は頭部に二個目のタンコブを生やした。
今はビクンビクンしている。
「何やってんだ? おまえら」
「うわっ、何で裸!?」
そこにジャックたちが合流。
あんまりな光景にデューイはドン引き。
御木本は苦笑した。
そして、少し遅れて熊谷たちも艦橋にやって来る。
「うわ~んっ、やっぱり、女の子のままだよぉ」
「どうすんのさ、これ」
熊谷は褐色くそエロトラ娘の胸の谷間に顔を埋めぐりぐりした。
明星はケツ派のようだ。
普通にセクハラである。
そして、彼女らも頭部にタンコブを生やした。
凍矢は大忙しである。
「凍矢や、もうええかの?」
「はい」
「こほん―――――」
そして、この二人だ。
というか、凍矢がいないと話が進まない。
彼女には是非、これからもツッコミマスターとして活躍していただきたいものである。
「先ずは無事に出航できたことを喜ぶことにしよう。じゃが、皆も分かっているとは思うが、ここからが苦難の道じゃ。気を引き締めてほしい」
場の空気が変わった。
ゆるゆるだった空気は老人の圧に竦みピシャリと引き締まったではないか。
これはドクター・モモが、ただの偏屈ジジイではない事を雄弁に語る出来事であろう。
「さて―――――これからの進路じゃが……先ずは、かつての【CN】国の隕石を破壊する」
これに凍矢が疑問をぶつけた。
「先ずは旭川からではないのですか?」
「勝てん戦いはせん」
これは戦士たちのプライドに触れる発言だ。
「おいおい、くそジジイ。冗談がきついぜ。俺がトカゲ野郎に後れを取ると?」
「うむ。こてんぱんにやられるわい」
「―――――!?」
ドクター・モモの断言に流石の桃吉郎も顔色が変わる。
「言ったとは思うが、腕力でどうこうなる相手ではない。桃吉郎よ。おまえは大自然相手に勝てるか?」
「あ? 勝てるとかじゃねぇだろ。相手なんざしないで順応した方が早い」
「そうじゃ。隕石を護るアナザーは自然そのもの……いや、自然が悪意を持った存在と考えるべきか。お前たちは、そういう敵とこれから戦うんじゃ」
改めて聞かされる敵の情報。
桃吉郎はもっと単純に考えていた。
だが、自然相手に喧嘩を売る、となると話は違ってくる。
「そういうのはもっと早く言え」
「言うたじゃろうが」
「くそっ、それでこいつが勝利のカギだってのは本当か?」
桃吉郎は珍刀エルティナの柄をコツンコツンと小突いた。
珍刀は「ふきゅん」と反応する。
「そうじゃ。この戦いは、おまえが如何に早く、それに順応できるかどうかで決まるじゃろう」
「順応ねぇ……」
桃吉郎はいまいちピンとくるものが無かった。
彼は既に珍刀に順応していると感じていたからだ。
それは正しいと言えよう。
確かに桃吉郎は珍刀に順応しており、刀との意思疎通までもを可能にしていた。
だからこそ、エルティナの真の力に気付いていない。
相性が良すぎるからこその弊害。
奥の奥までを除く見る必要を感じないほどの信頼関係。
それは、彼らの成長を妨げる要因となり得る。
「(ちと……調整をし過ぎたか。じゃが、これ以上も、これ以下も、未来は変わらんかった。もう、これに掛けるより他にないのじゃ)」
ドクター・モモは今回の二人に賭けるより他になかったのだ。
タイムリープも恐らく今回で最後であろうことを覚悟している。
老科学者にとっては本当に最後のチャンスなのだ。
「よいか、桃吉郎。おまえにはこの旅で【課題食材】を獲り、それを調理し食べてもらう」
「課題食材?」
「そうじゃ。課題食材はおまえのリミッターを外す特殊食材。それ無くして隕石を護るマスタードラゴンたちに勝つことは叶わん」
今までピンとこなかった桃吉郎であったが、食材という言葉を耳にして目の色を変える。
やはり、こいつを突き動かすのはいつだって美味しい食べ物たちなのだ。
「今までは、よく分かんねぇ話ばかりだったが……ようやく分かりやすい話が出て来たじゃねぇか」
「別に難しい話はしておらんのじゃがの」
「んで、そいつはどこにあるんだ?」
「それは―――――」
かつての四川省。
そこに桃吉郎のリミッターを外す伝説の食材が眠っているという。
かくして、桃吉郎を乗せた船、イズルヒは日本を飛び出しCN国へと向かう。
そこに待ち受けるアナザーたちの脅威は日本の比ではないだろう。
だが、桃吉郎に恐れという物は存在しない。
何故なら、こいつは馬鹿だからだ。




