108話 強襲
その時、激しい揺れが発生し、中途半端にソウルリンクが中断されてしまったではないか。
「何事じゃっ!?」
「ききっ」
「何じゃと……ちぃ、後をつけられていたようじゃな」
蜘蛛型工作ロボの報告を受け苦々しい表情を見せる老科学者。
「どうやら、アナザーにここがバレたようじゃ」
「なんですって?」
デューイに緊張が走る。
「コウサクン、他のコウサクンたちに船への搭乗を急がせるんじゃ」
「きー」
「今やってる作業は全て停止っ。急ぐんじゃ」
「きっきー」
白くもロボは敬礼をしてカサカサと駆けて行った。
「ええい、もう少し余裕がある出航が出来ると思ったんじゃがな」
こうしている間にも激しい揺れが秘密基地を襲う。
それは上空でアナザーたちがブレス攻撃を放っているからである。
しかも斥候タイプではなく完全な戦闘員だ。
4枚の翼に四本の角は戦闘員の証である。
当然、その戦闘能力は斥候とは比べ物にはならない。
しかも常に上空を飛び回るので対空装備が無ければ攻撃すら出来ないという。
「どうすんだ? 爺」
「手の空いてる者は銃座に就いてくれい」
ドクター・モモはテキパキと役目を割り振った。
御木本、ジャック、デューイ、熊谷、明星、見張はイズルヒの銃座にてアナザーの迎撃。
ドクター・モモとモヒ・カーン、金林は艦橋へ。
残りは甲板にてアナザーと直接、対峙する。
どたばたと艦橋へ到着したモヒカンと老人とぽっちゃり。
内、ぽっちゃりだけが息が上がっていた。
「モヒ・カーンよ」
「なんだよ?」
「ちと、我慢せい」
「あ? ぐがががががががががががっ!?」
ドクター・モモはそう言うや否や、彼の腕に注射を刺し、内部の液体を注ぎ込んだ。
モヒ・カーンが感じている苦痛は針を刺されたものではなく、頭痛の方だ。
この液体はデータを圧縮したもので血管から脳へと血液に混じって送られる。
その膨大な情報を一気にのうに送られた結果、熱暴走を起こしているのと同じような状態に陥ってしまったのだ。
「いってぇ!? 頭が割れるっ!」
「直に治まる。辛抱せい」
頭を抱えて蹲るモヒ・カーンだったが、やがて治まったのだろう、頭を振りながら立ち上がった。
「いきなりやるなよ、クソ爺」
「かっかっかっ、やるぞと言ったら逃げるじゃろうがい」
「くそがっ……出発すんぞ」
モヒ・カーンは大量に送り込まれた情報を駆使してイズルヒの操舵輪を握り締める。
ここだけ、何故かレトロな使用であった。
「周りは最新機器なのに、ここだけレトロなのかよ」
「船と言ったら、やはりそれじゃろ」
「分からんでもないけどよ……」
ドクター・モモは船長席に着き艦内放送を開始する。
「これより戦艦イズルヒは出航する。アナザーたちとの激しい戦いが待っておるが覚悟はできてるな? まぁ、返答を聞くつもりはないがの」
こほん、と一息。
「ソウルシリンダー、安定動作確認。ソウルドライブ、100%到達」
モヒ・カーンがそう告げる。
彼には既にイズルヒの基本情報の全てを把握していた。
よって船の心臓部であるエンジンのイカれた性能を理解している。
それは全て未知の技術で構成されたものだ。
「(どうかしてるぜ、このクソジジイ)」
モヒ・カーンは心の中で悪態を吐いた。
「よろしい、ゲート開け」
「ゲート解放」
激しい振動が起こった。
「戦艦イズルヒ、発進じゃ!」
「ヨーソロー」
アニメの戦艦を参考にしたというか、ほぼパクった戦艦イズルヒが崩壊する秘密基地から飛び立った。
その異様な姿にアナザーたちが困惑する。
「な、何だアレはっ!?」
「猿どもの玩具かっ!?」
「構わんっ、裏切者、共々、消し炭にしてやれ!」
アナザーの数は総勢で12体。
本気でドクター・モモたちを始末しに来ている。
その一体一体は戦艦イズルヒに匹敵する大きさだ。
体当りの直撃を受ければイズルヒは轟沈する事だろう。
「おー、おー。雁首揃えてご苦労なこった」
「こったー」
木花兄妹がアナザーを見上げる。
その手に持っているのは珍刀とオーラウィップ。
そろって射撃武器は苦手という近接馬鹿だ。
だが、この二人、馬鹿だからこそ常識が通用しない。
「行くぞっ、トウキっ!」
「まかせろー」
二人の足底に黄金の輝きが生まれ空を踏みしめる。
gorillaと能天気エロガキが空を駆けた。
「な―――――」
ボッ。
人間が空を駆けるなど考えもつかなかったアナザーの一体が珍刀とオーラウィップの同時攻撃によって首を刎ねられた。
これは奇襲も同然。
当然ながらアナザーたちはパニックに陥った。
値千金の一撃だ。
「ぽちゃこ! 今じゃ!」
「金林よ! ったく……狙撃銃と同じ要領でしょ? 簡単だわ!」
砲撃手となった金林が愚痴りながらトリガーを握り締める。
そして、引き金を引いた。
戦艦イズルヒの主砲【三連装破異砲】が火を噴く。
それは、砲弾を飛ばす、という物ではない。
砲口から飛び出すのは桃色の破壊光線だ。
「着弾! 撃破2! 一体は命中すれども撃破ならず!」
「凍矢!」
『了解』
『……わたしもっ』
弱ったアナザーは凍矢の百式火縄銃とトーヤのビームスナイパーライフルで止めを刺した。
その圧倒的な火力は三連装破異砲にも劣らない。
「な、なんだっ!? この火力はっ!」
「我らとて、あれらの直撃は耐えられぬっ!」
「散開せよっ! しょせんは船! 後方からの攻撃には脆い!」
生き残ったアナザーたちは散開しイズルヒに襲い掛かった。
「き、来たっ!」
「デューイ! 落ち着いてやれば出来る! やるぞ!」
「う、うんっ!」
銃座に就いたジャックたちが一斉にトリガーを引く。
戦艦イズルヒの側面に設置された二連対空機関砲が火を噴いた。
一列4基。
それらは同期し、同じような行動を取る。
それが4列だ。
64門もの機関砲がアナザーを近付けまいと弾丸を吐き出す。
当然ながら、これも実弾ではなくエネルギー弾である。
「ぐぅ!? これもかっ! 魔法障壁を絶やすなっ!」
「豆鉄砲かと思いきや……小賢しいっ!」
アナザーはどうやら、このエネルギーに弱いらしく、対抗エネルギーを用いて防御しなければ大ダメージを負ってしまう。
ドクター・モモは長い年月をかけてこのエネルギーの完成へと漕ぎ着けていた。
だからこそ、戦艦イズルヒを作り上げ、最後の賭けへと打って出たのだ。
「(いける……今回こそ……!)」
ドクター・モモは確かな手ごたえを感じた。
表面上は飄々としているが内心ではかなり緊張しており手汗が酷い状態だ。
「ドクター・モモっ! ブレス、来るぞ!」
「【MPシールド】展開じゃ!」
「MPシールド展開!」
モヒ・カーンは虚空に手をかざす。
すると半透明の板が姿を現した。
それは、まるでキーボード。
その中のとあるボタンをタップする。
「被弾!」
「状況は?」
「ダメージ無し! おいおい……スゲェなこの船」
「当然じゃ」
モヒ・カーンは感心しているが、ドクター・モモは内心、穏やかではなかった。
実のところMPシールドは未完成なのだ。
初期案では船全体を覆い込む構想ではあったが、現段階だと一部の狭い範囲にしか展開できない。
しかも、複数を展開することもできないのだ。
つまり、同時攻撃された場合、直撃を受ける事になる。
「出し惜しみは無しじゃ! ここを乗り切らなければ明日は無い!」
ドクター・モモは総員に全力を出せと命じるのだった。




