31話 地下室での秘密特訓
お待たせしました
「何故……わかった……の?」
俺たちは今自宅の地下にある部屋にいる。
その4人ともう1人がここにいるわけだが、そのもう1人というのがランスだ。
ランスは悟達の後をつけて家の近くまで来ていたところで悟に見つけられて地下室まで来させられた。
ランスは、完璧に隠れて後をつけていたつもりだったらしいが悟にはバレていたらしい。
「んー、なんて言えばいいんだろうな。
敵対心と殺気を感じたからかな。」
「それ……では……説明が……つか……ない。……敵対心……、殺気……では……人で……あることが……わかっても……誰かは……わから……ない……はず。
何故……私……だと……わかった?
あの時……はっきりと……私の……名を……呼んだ……。勘など……では……ない……はず。」
「魔力吸収による恩恵だ。」
「魔力……吸収……に……よる……恩恵?……」
ランスは索敵などの情報スキルと魔力吸収のスキルがどう関係するのかわからないようだ。
まぁ、悟もランスにつけられるまでわからなかったことなのでわかる方がおかしいことだが。
「魔力というのはこの世界の人にとって血液と同じだと俺は仮定する。
だから魔力が少なくなれば気絶をするし、無くなれば死に至ると考えている。
その上で、魔力には人によって違いがあり、少なくとも同じような魔力を持つものは存在しないと思われる。」
「血液……血?」
「そうだ。体に流れる血のことだ。」
「それは……そうと……魔力の……違い……って……何?」
「魔力には微弱な電磁波があることがわかった。」
電磁波と聞いて首を傾げ「それ何?」と聞きたそうに悟の方を見ているランス。
「要するに、雷属性の魔法、ライトニングの超極小規模の電撃が体から放たれていると思ってくれたらいいと思う。
それが人によって電撃の強さや大きさが変化しているんだよ。
それさえわかっていればその人の魔力の出す電磁波の波長を覚えていれば誰か特定できるんだから簡単でしょ?」
悟の言葉に美穂達は反論する。
「クラスでも40人程度、世界人口で言えば何十億人、そんな人数の電磁波の波長なんて覚えられるわけないじゃない。」
「やっぱり人間離れしてるわ。
魔族よりもある意味壊れてるわね。」
「……、師匠はついに人を辞めたんですね。」
「悟……人を……辞めた……の?」
「いやいや、辞めてないから。人間だから。
あと、それが俺の特技だから。」
悟の必死な説得により4人は渋々納得した。
「それはそうとランス、明日から行われるクラス対抗トーナメント戦のルールと戦闘形式を教えてもらってもいいか?
フラス先生から聞くのを忘れててな……。」
「……いいよ。」
悟の申し出をランスは心良く答えてくれた。
ランスいわく、
戦闘形式はそれぞれのクラスから5人が出ることになり、実際に戦闘をするのは3人ということ。
つまり、トーナメント戦は最高6戦することになり、3日に分けて行われるため連戦になる。だから、その5人の中で3人をそれぞれのトーナメント戦で選べということなのだろう。
ルールは、
その1、相手のクラスのメンバーを全員先に倒した方の勝ちとする。
その2、相手を殺した場合、無条件でその者を退学とする。もちろんトーナメント戦のクラス順位は最下位となる。(特待生も例外ではない)
その3、魔法や物理での攻撃手段は一切を問わない。
その4、メンバーは5人までクラスの中から決めて出ることができる。
その5、実際に戦うことのできるメンバーは、それぞれの戦闘において3人までである。
その6、上記を逸した者は厳しい罰を処す。
その7、上記のルールは絶対不変である。
「まぁ、やっぱり常識の範囲程度のルールね。」
アスタロトはルール内容を聞いて納得したようだ。
「そうね。」
アスタロトに同意するシューラ。
「じゃあ、ルールを確認したところで、明日のための戦闘訓練を始めようと思う。」
「とは言っても、何から始めればいいのかわかんないわよ?」
「私は……、悟の……隠して……いる……技術……に……ついて……知り……たい。……どうせ……多分……試合……出るの……私……だし。」
美穂については異世界の法則に気付けていないのか、どこからしたらいいのかわからないらしい。
ランスはやはり、悟の魔力の漏れない理由について目を輝かせ、聞きたそうにしている。
シューラとアスタロトは珍しくそわそわしているためよほど戦闘訓練をしたいのだろう。
「ランスの質問だけどこれは他の3人にも関係することだから聞いといたほうがいいぞ。美穂の疑問にも関わるからな。」
悟が3人に聞くように促すと4人は悟のこれから話す内容を忘れまいと静かに集中していた。
「俺の魔力が何故漏れないかについてだが、俺も通常ならランスのように一定で漏れだすと思う。
だが、俺の場合は、ランスのように放って置くのではなく、魔法を維持して使い続けているからほとんど漏れていないだけだ。」
悟の話に他の4人は首を傾げ?マークを頭の真上にたくさん作っている。
「じゃあ、先に美穂に理解してもらうために魔力をエネルギーに変えて説明する。」
美穂を除く3人はエネルギーと聞いて首を傾げて唸っている。
やはり地球での概念のようなものはこの世界では理解されないらしい。
「エネルギーなら中学の時に習ったからわかるわ。」
「なら話は早いと思う。位置エネルギーと運動エネルギーの話はわかるよな?」
「そりゃ、わかるわよ。物は高いところにあるほどエネルギーを持っていて、それを落とすと位置エネルギーが運動エネルギーに変わるってね。
ジェットコースターみたいなものでしょ?」
「そうだ。それが理解できたら次はエネルギーを魔力に変換してみろ。
魔法を唱えている際、もしくは無詠唱でもその魔法の効果を発揮するために想像や魔力を使う際に物を高く上げていると思えばいい。
そして、使う時に物は下に落ちて運動エネルギーが次第に強くなり最終的にはエネルギー、つまり魔力が無くなり魔法の効果のみが発現する。
それが魔力と魔法の関係なわけだが、俺がしているのは物を高く上げてそれを維持することだ。俺はこの魔法のことを保管型魔法と呼んでいる。」
「あ、なるほどね。魔力と魔法の関係がわからなければそれはできないわね。
もしかしたら私たちの世界の理解とこの世界の魔力を理解して初めて発動できる魔法ね。」
美穂は話をしつつ悟の言っていた保管型魔法を使った。
「……う、……うそ……でしょ。……み……美穂……の……魔力を……感じ……ない。」
「私は別に感じなくても違和感なんて無いんだけど。
使えるのがわかってるんだからそれは些細な問題にしかならないだろうし。」
「魔力の概念ですか、そういえばそのような本は城の書庫でも見たことが無いですね。
そもそも魔力について疑問を感じたことがないと思いますね。」
ランスは美穂の漏れ出す魔力がなくなったことに驚愕し、アスタロトはさっと軽く流して、シューラは魔力の概念についての重要なことを言っている。
「この魔法には欠点があって、保管型魔法には容量制限が存在するということだ。しかも保管することのできる魔法の量には本人の才能が出る。
だが、この魔法の長所は短所を寄せ付けないほどある。」
第1に、発動する時に自動制御ができるということ。
つまり発射砲台がその場にできるということ。その後の指示が入らないため楽であり、もし一定ごとに相手を狙って撃つように仕向ければその通りに従う。
第2に保管型魔法は設置ができるということ。この設置をする際に自動制御をするか魔力操作が選べる。
自動制御は1の説明と同じだが、魔力操作は流れ出す魔力を操作することにより魔法を操作できるというもの。
第3に設置した後の魔法を借りに設置型魔法と呼ぶことにするが、魔力を暴走させて、爆発させることができる。魔力操作を使えば相手に設置して近距離で爆発させることも可能である。
第4にどんな魔法でも保管が可能なこと。
借りに回復魔法を保管して自分に設置し自動制御にした場合、自動で回復してくれるということになり、勝つ確率、生存確率が格段に上がる。
第5に混合魔法も保管できる。
これは魔法単体で保管するよりもずっと効果を発揮するので戦闘において有利になる。
第6に戦闘を行っていない時に魔法の保管が可能なため、戦闘準備を必要とせずすぐに戦闘することができる。
第7にこの魔法を使えることにより魔力の概念が理解でき、次の段階へと進むことができるということ。
この7つが保管型魔法の長所である。
「え? ちょっと待って、さらに先があるということ?」
美穂が驚愕といった面持ちで悟に尋ねる。
「俺はもう使える。
多分だが、魔力の概念が理解できればさらに魔法に関しての可能性は広がるだろう。今回のことは基本編、この先は応用編だからな。」
「応用編ね。」
上等じゃない。
そう美穂は口にして自分を高めるために魔法の鍛錬を始めた。
悟は他の3人に魔力の概念について説明したが、美穂と同じことをできたのは寝る直前のことだった。




