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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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239/243

219話 秀吉、再び桜を訪ねる

里見領。

港町は今日も賑わっていた。

大きな帆を張った南蛮船がゆっくりと入港してくる。

荷を運ぶ人足。

商人の声。

魚の匂い。

香辛料の香り。

活気。

その様子を見ながら歩く一人の武将。

豊臣秀吉

秀吉は静かに町を見ていた。

秀吉の心の声。

(やっぱりだ)

(戦の匂いが無い)

城下町ではない。

港町。

武士より商人。

槍より秤。

秀吉は小さく笑う。

(殿の言う通りだ)

その時。

後ろから声がした。

「秀吉様」

振り向くとそこにいたのは

里見桜

まだ十四の姫。

だがこの町の中心。

桜は微笑む。

「また来ましたね」

秀吉は頭をかく。

「いやぁ」

「ちょっと見たくなりまして」

桜の目は少し鋭い。

桜の心の声。

(嘘)

秀吉がただ来るはずがない。

桜は言う。

「案内しますよ」

二人は港を歩く。

南蛮人が挨拶をする。

通訳が走る。

荷車が行き交う。

秀吉は言う。

「すごい町ですな」

桜は答える。

「まだまだです」

秀吉は笑う。

「いやぁ」

「戦国で一番儲かってる町ですよ」

桜は少し肩をすくめる。

桜の心の声。

(本題はまだ)

秀吉は港を見ながら言う。

「姫」

桜が見る。

秀吉は続けた。

「戦国」

「終わりますか」

桜は少し驚いた。

だがすぐ落ち着く。

桜は静かに言う。

「終わると思います」

秀吉は少し笑う。

「やっぱり」

秀吉は空を見る。

そして言う。

「殿は」

織田信長

「本気です」

桜は頷く。

「分かります」

秀吉は続ける。

「でも」

「戦が終わったら」

秀吉は少し言葉を止めた。

桜は待つ。

秀吉は笑いながら言った。

「俺」

「仕事なくなりません?」

桜は一瞬ぽかんとした。

そして笑う。

小さく。

秀吉は苦笑する。

「いやぁ」

「笑い事じゃないんですけどね」

秀吉の心の声。

(本音だ)

桜は少し考えた。

そして言う。

「秀吉様」

秀吉が見る。

桜は続けた。

「戦が終わったら」

「城を落とす人は減ります」

秀吉は頷く。

「でしょうね」

桜は言う。

「でも」

「国を作る人は増えます」

秀吉の眉が少し動く。

桜は港を指す。

「町」

「道」

「港」

「税」

「人」

桜の声は落ち着いていた。

「全部」

「誰かが作らないといけません」

秀吉は黙る。

桜は続ける。

「戦で国を取る人」

「商で国を育てる人」

「どっちも必要です」

秀吉の心の声。

(なるほど)

秀吉は笑う。

「姫」

桜が見る。

秀吉は言った。

「それ」

「殿と同じこと言ってますよ」

桜は少し笑う。

「そうかもしれません」

秀吉は桜を見る。

じっと。

秀吉の心の声。

(この姫)

(本当に恐ろしい)

十四歳。

だが。

国を見ている。

秀吉は思う。

(俺は)

(どうする)

しばらく歩く。

秀吉は港の端で止まる。

そして言った。

「姫」

桜が見る。

秀吉は少し真面目な顔だった。

「もし」

「俺が」

秀吉は少し笑う。

「戦が無くても」

「天下一になりたいと言ったら」

桜は少し考えた。

そして言った。

「大変ですね」

秀吉が笑う。

「でしょうね」

桜は続けた。

「でも」

「方法はあります」

秀吉の目が光る。

「ほう」

桜は言う。

「国を一番豊かにすればいい」

秀吉は黙る。

桜は続ける。

「戦で一番強い人」

「商で一番強い人」

桜の目は真っ直ぐだった。

「どっちも天下人です」

秀吉はしばらく何も言わなかった。

そして大きく笑った。

「姫」

「面白い」

秀吉の心の声。

(なるほど)

(そういう道もあるか)

秀吉は空を見る。

そして思う。

(殿)

(俺はまだ終わりませんよ)

秀吉は桜を見る。

その笑顔の奥で

野心はまだ燃えていた。

だが。

その形は少し変わり始めていた。

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