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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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187話 理の方針転換

桜は、迷わなかった。

会談の翌朝には、すでに港に立っていた。

南蛮船――

その巨大な船腹と、常識外れの積載量を、桜は“戦力”として見ていた。

(兵を運ばず、物を運ぶ)

(これで、義と理の戦場を塗り替える)

桜の指示は、速く、具体的だった。

「里見の特産を、すべて積んでください」

ガラス細工。

医薬品。

乾燥椎茸。

加工保存が利くものは、ありとあらゆる物を船倉へ。

「売る時は、相場より安くする必要はありません。

 むしろ――出せる限りの高値で捌いてください」

商人たちが一瞬、目を見張る。

だが、桜は続けた。

「その代金で、南の温暖な地方へ向かいます」

「今年、豊作だった地域があります。

 そこから――」

米。

野菜。

油。

塩。

生活必需品を、大量に。

ただし、と桜は言葉を強めた。

「現地の民の暮らし向きが悪くなるような買い付けは、絶対にしないでください」

「値を吊り上げることも、買い叩くことも禁止です」

「相場を壊さず、しかし量は確保する。

 それが条件です」

商人は、ゆっくりと頷いた。

(……これは、普通の商いではない)

そう理解したからだ。

輸送の指示も、細かい。

「物資は、行き先で分けます」

「一艘は、上杉方面へ」

「残り二艘は、東廻りです」

桜は地図を指でなぞる。

「武田、小田、佐竹、山内上杉……

 この方面は領地が多い」

「三艘のうち二艘は、必ずこちらを回してください」

「欠乏しているところに、行き渡るように」

そして最後に、桜は念を押す。

「価格は――通常の値段です」

「普通に、利益は上げなさい」

一瞬、間を置き、

「ただし」

桜の声が、低くなる。

「不当に、価格を吊り上げることは許しません」

「これは、救済であって、搾取ではありません」

商人たちは、深く頭を下げた。

誰もが感じていた。

これは戦ではない。

だが、戦よりもはるかに広く、深く、効く一手だと。

港を離れる船を見送りながら、桜は心の中で整理する。

(これで、民は“苦しめられている”とは言えなくなる)

(上杉の義は、満たされる)

(北条も、武田も、刃を振るう理由を一つ失う)

そして――

(里見は、血を流さずに名を残す)

桜は、静かに息を吐いた。

設計者として。

そして、この時代に生きる者として。

(さあ、次は……)

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