閑話 里見義堯への説明と明日の評議
書院の静かな空気の中、桜は深く頭を下げた。
「殿……私からも一言、申し上げねばなりません」
義堯は桜の顔を見つめる。
「……どうした、桜」
桜は声を低く、しかししっかりとした口調で言う。
「北条殿との婚姻同盟の件で、誤解を招く発言をしてしまいました。あの婚姻は、里見家にとって有利な情報操作のためのものであり、まな姫の意思とは無関係でした。殿に正しく報告できず、混乱を招きましたこと、心よりお詫び申し上げます」
義堯は一瞬黙り、桜の頭をゆっくりと見つめる。
「……ふむ……そうか……しかし、お前が里見家のため、そしてまな姫のためを思っての判断であれば、私も理解しよう」
桜は少し息をつき、目を伏せる。
「殿、重ねて申し上げます。決して軽んじたわけではございません。全てはまな姫の安全と、里見家の将来を考えた上での策でした。今後は、必ず正確な情報とともに殿にご報告いたします」
義堯は穏やかに頷き、桜の背筋を見つめる。
「……よかろう、桜。お前の誠意は伝わった。だが、策を巡らせるだけでなく、私を信頼して報告することを忘れるな」
桜は深く礼をして、静かに頭を上げる。
「……はい、殿。必ず守ります」
書院には落ち着いた空気が戻り、桜は自分の役目を改めて胸に刻む。
(……策は必要でも、正直さは何より大切……これからも、まな姫と里見家の未来のために、誠実に動かねば……)




