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転職先は異世界でした  作者: そらたろう
声が届く場所(95〜120話)
100/103

第100話「この声が、届くなら」

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

この物語も、ついに第100話を迎えました。


記録とは何か。

声とは何か。

そして、人の想いはどのように届くのか。


そんなことを、圭太とミリア、そしてミサキと一緒に考えながら、ここまで物語を書いてきました。


第100話では、圭太が初めて自分の本音を語ります。

“記録する側”だった彼が、“声を届ける側”になる瞬間です。


少しだけ特別な回になります。

よろしければ、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。

図書室。

いつもと変わらぬ放課後。

けれど、圭太の表情はどこか決意に満ちていた。


ミリアが扉を開けると、圭太がノートを閉じた音が静かに響いた。


「ミリア。話してもいい?」


「…うん」


少し驚いたように見えたが、ミリアはすぐに静かに頷いた。


「俺さ、これまでずっと“誰にも言えないこと”が多すぎて。

それをずっと、“記録”に逃がしてた。

でも……本当は、誰かに聞いてほしかったのかもしれない」


ミリアは何も言わず、ただ視線を合わせる。


「父親がさ、ずっといなかった。母親も仕事で忙しくて、家で会話ってほとんどなくて。

“自分って何のためにいるんだろう”って考える時間のほうが長かったんだ」


少し震える声。


「でも…あの日、あの屋上で、ミサキの“記録”を聞いてから、少し変わった気がした。

誰かの心の声が、こんなにも響くんだって。

それで、自分の声も…誰かに届くかもしれないって、思えたんだ」


圭太の目はまっすぐミリアを見ていた。


「……俺、ミリアに聞いてほしかった。

たぶん、最初からずっと」


ミリアの頬がゆっくりと紅くなる。


「ありがとう、話してくれて。…わたし、ちゃんと受け止める。

ぜんぶ、まっすぐに」


その言葉は、どんな記録にも残らないけれど、

ふたりの間に確かに“残された”。


***


その日の帰り道。

ミリアはスマホの録音アプリを開いて、自分の声を吹き込んでいた。


「今日、圭太が本音を話してくれた。

それはすごく勇気のいることだったと思う。

だから、わたしもこの記録を残す。

誰かの声を聞いて、ちゃんと“返す”役割を……

これからもずっと、大事にしていきたい」


風が、少しだけやさしく吹いた。


第100話までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。


この物語は、派手な出来事よりも、

誰かの心の中にある小さな声を大切にしながら進んできました。


圭太とミリアの関係も、

“記録”という形を通して、少しずつ変化してきています。


ここから物語は、

「声を残す」だけではなく、

「声が誰かを動かす」という段階に進んでいきます。


まだまだ続く旅を、

これからも一緒に見守っていただけたら嬉しいです。


引き続き、どうぞよろしくお願いします。


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