第100話「この声が、届くなら」
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
この物語も、ついに第100話を迎えました。
記録とは何か。
声とは何か。
そして、人の想いはどのように届くのか。
そんなことを、圭太とミリア、そしてミサキと一緒に考えながら、ここまで物語を書いてきました。
第100話では、圭太が初めて自分の本音を語ります。
“記録する側”だった彼が、“声を届ける側”になる瞬間です。
少しだけ特別な回になります。
よろしければ、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
図書室。
いつもと変わらぬ放課後。
けれど、圭太の表情はどこか決意に満ちていた。
ミリアが扉を開けると、圭太がノートを閉じた音が静かに響いた。
「ミリア。話してもいい?」
「…うん」
少し驚いたように見えたが、ミリアはすぐに静かに頷いた。
「俺さ、これまでずっと“誰にも言えないこと”が多すぎて。
それをずっと、“記録”に逃がしてた。
でも……本当は、誰かに聞いてほしかったのかもしれない」
ミリアは何も言わず、ただ視線を合わせる。
「父親がさ、ずっといなかった。母親も仕事で忙しくて、家で会話ってほとんどなくて。
“自分って何のためにいるんだろう”って考える時間のほうが長かったんだ」
少し震える声。
「でも…あの日、あの屋上で、ミサキの“記録”を聞いてから、少し変わった気がした。
誰かの心の声が、こんなにも響くんだって。
それで、自分の声も…誰かに届くかもしれないって、思えたんだ」
圭太の目はまっすぐミリアを見ていた。
「……俺、ミリアに聞いてほしかった。
たぶん、最初からずっと」
ミリアの頬がゆっくりと紅くなる。
「ありがとう、話してくれて。…わたし、ちゃんと受け止める。
ぜんぶ、まっすぐに」
その言葉は、どんな記録にも残らないけれど、
ふたりの間に確かに“残された”。
***
その日の帰り道。
ミリアはスマホの録音アプリを開いて、自分の声を吹き込んでいた。
「今日、圭太が本音を話してくれた。
それはすごく勇気のいることだったと思う。
だから、わたしもこの記録を残す。
誰かの声を聞いて、ちゃんと“返す”役割を……
これからもずっと、大事にしていきたい」
風が、少しだけやさしく吹いた。
第100話までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
この物語は、派手な出来事よりも、
誰かの心の中にある小さな声を大切にしながら進んできました。
圭太とミリアの関係も、
“記録”という形を通して、少しずつ変化してきています。
ここから物語は、
「声を残す」だけではなく、
「声が誰かを動かす」という段階に進んでいきます。
まだまだ続く旅を、
これからも一緒に見守っていただけたら嬉しいです。
引き続き、どうぞよろしくお願いします。




