元悪徳令嬢生まれ変わります!
私の名前はフレイヤ・ディエボルン、16歳。
ディエボルン侯爵家の次女、侯爵家は長女フローレ・ディエボルンが継ぐ予定で妹にフローネ・ディエボルンは病気持ちの深窓令嬢、その間で育った私は根性がねじれにねじれまくっていた。
気に入らないものは徹底排除、それが人間でも物でも同じこと、あげくに暴飲暴食(お酒は除く)の限りを尽くしたその体はでぶでぶとしており、色合いはレイフレの華と言われた母フローラ・ディエボルンを継いでいるけれど鏡の中の私はどう見ても変な色をして豚にしか見えなかった。
自力で動けないほどではなくてもぷっくりとしたほっぺた、擬音にするとドーンドーンドーン!とした三段体型。
いや、もう勘弁して。本当に。
髪は見事、というか今の私からしたら何でこんな色の人間ができるんだという色で頭の上から金色で下にいくほどピンクがかっていくという頭の色がファンタジー。
体毛は金なのよね。なので睫毛は金、目の色は青、それだけ聞けばなんとも素敵なご令嬢のできあがり、ただしメタボを除く!!
私は、あの瞬間、思い出したのだ。
唐突に、前触れもなく!
私はこの世界ではないところに生まれていた、惑星の名を地球、国の名を日本国、職業でいうなら今と同じ学生でもっというなら花の女子高生だ!
なのにどうしてか私は死んだ、その時のことを事細かに覚えてはないけれど死んだという事実だけはわかる。
だって、私生まれ変わっているし。
私はあの時日課である奨学過程クラスと共同で使う場所でいつものようにイジメを繰り返していた。
取り巻きの二人とともに繰り返されるそれはじっみーに鬱陶しい足掛けとか、私にお辞儀をしなかったとか通る場所をあけなかったとか、お前はどこのヤーさんだよと突っ込みたくなるほどにくだらないいちゃもんをつけて一人の女の子のみをターゲットに繰り返されていたのだ。
彼女がまた、無言で耐えるというスルースキルを使ったもんだからこっちも意固地になって繰り返して堂々巡り。
そして人気のない場所に連れて行って泥まみれにする・・・寸前で思い出したのだ。
その時のことを考えると不気味かな。
いきなり動かなくなって、唐突に「帰る」といってその場を放置してきたんだから。
いやいや、思い出した今本当に申し訳ないことをしたと思うよ!やってたことは小学生レベルだとはいえ、奨学生でしょ!?実力がともなってこの学校に来てるのに、本当にしょうもない!
私ってなんてしょうもない人間なのかなあ!?
多分、彼女は、寂しかったんだ。
うん、彼女は最初から寂しかっただけなんだ。
母が死に、家は姉が継いで、仕事馬鹿な父親は姉に自分の後を継がせるために奮闘していた。
だから父とはまともな会話をした覚えがない、ただ髪とかの色合いが姉妹の中で母に一番私が似ていたから・・・似ていたのに、母とは全く違う醜い容姿になっていく私に眉を寄せて、嫌なものを見るような目をしていたことをよく覚えている。
それに妹は病気だ。
この世界には魔法と呼ばれるものがある。
魔法はどこかの世界で言う火とか水とかじゃなくて、なんていうんだろう、私の前の世界で言うところの超能力に近い力なんだけど、その源を生み出す器官がダメになっていたんだ。
その源は体を血液のように循環していて、その器官で生み出される。
その器官がダメになっていて汚染された源が体中を回っているものだから、すごく免疫力が弱い。
そんな妹を使用人たちは心配し、かわいがった。
妹もお人形みたいに可愛らしくて、金色のくるくるした髪が白いシーツに広がっているところを見たときには眠り姫がいるかみたいだ。
フローネは私も大好きよ、かわいいし、健気だし、でも、ただ寂しかったの。
あっちは病弱なお姫様、こちらは雨の日に荒馬を乗りこなしても風邪一つひかない馬鹿と名がつきそうな丈夫さ。
どちらを構うって、そりゃあ妹だわ。
でもね、きっと寂しかったのよ、お父様・・・ちょっと声をかけてくれるだけでもよかったの、何故わがままばかり言うのかって言ってくれるだけでもいいの、なんだったら怒ってくれてもよかったわ。
でもね、無視は嫌なの、どんな声高に叫んでも、どれだけわがままを言っても、お父様は一つも私に目をくれなかった。
妹が喜びそうな誕生日プレゼントの大きなくまさん、私は欲しくなかったの、それは妹がほしいものだもの。
私は、ただ一夜の少しに時間でいいの、お父様とお話できるのが誕生日プレゼントでよかった。
ただ・・・望んだのは、それだけなのにね。
「・・・馬鹿だなぁ・・・」
本当に馬鹿ね、フレイヤ、やることが間接的すぎたわ。
わがままがダメなら他の方法をとるべきだったわ、お父様は実力主義よ、認められるように勉強すればよかったのよお姉さまのように。
ダメなら淑女としてのマナーを極めたり、他に才を持つべきだったわ、そのための土壌はいくらでもあったのに。
それでなくてもこの学校に入ったときにはちゃんと学ぶ姿勢を持つべきだったのよ。
あまりの私の素行の悪さに辟易した父はこの学校に入学させた。無言でねっていうか会ってもいないしね。
諦めなさいフレイヤ・ディエボルン、今までの方法ではお父様はおろか、誰もいなくなるわ。
そう、これが機会よ、私は生まれ変わるの・・・ってもう生まれ変わってるけど!
これからは卑怯なことはしません!わがまま言いません!ちゃんと勉強もします!あとできれば痩せます!!
フレイヤ・ディエボルン、これから生まれ変わります!!