「お宝はっけ~ん」
虫の話がすこし出てきます。
サラ‥‥気づかなくてよいことってあるよね。
次の日、つまり異世界四日目。
朝早く起こされた私は、眠い目をこすりながら朝食の席につく。
昨日試してみて欲しいとお願いしたとおり、ブヒンの肉を薄くスライスしたものをカリッと香ばしく焼いたものが食卓に出てきた。
「お~、ベーコンっ。」
たぶん本当のベーコンは、塩漬けにしたり何かしたと思うんだけど、まあ簡易版ベーコンだと思える程度の出来栄えだった。
しっかり焼いたせいなのか、昨日感じたブヒンの肉の臭みは感じない。
私はそのなんちゃってベーコンとレタスっぽい野菜を一緒に食べる。
少し塩は大目に振ってもらったので、私でもおいしく食べれる料理になっている。
「ああ、なんだか、ようやく普通の朝ごはんが食べれた感じがする」
あまり流通はしていないらしいけれど、モウンの乳も席にはあった。
普段飲んでいる牛乳よりもかなり濃い気はするけれど、こういう牛乳もないことはない。
私はひさびさの普通の朝ごはんにほっとしていた。
もはやスパッダが添えられていようと、スルーできるぐらいには。
料理の味に関しては、これまでに使っている香辛料を多く使ってもらえば、何とかなるらしい。
すべての料理がそううまくいくかはわからないけれど、それに関しては王城ではピューレさんが検討してくれているはずだった。
けれど何か、足りない。
「……ああ、そうか。パンがないんだ」
私は今更ながらにそんなことを思った。
ベーコン、レタス、そして牛乳。これにパンさえあれば完全な朝食だ。
「パン、ですか?」
トアが首をかしげる。
「うん、形はいろいろあるけど、基本的に外は茶色くて中は白い料理なんだけど……ここってパンはないの?」
「申し訳ありません。私ではわかりかねます」
トアが同じく部屋にいたレンとジャスに聞いたけれど、二人とも知らないと言う。
「この世界にはパンってないのかなぁ」
私はモウン乳に口をつけつつ、そう呟いたのだった。
「穀物ってどうなってるんですか?」
「穀物ですか?」
今日も見学ルートを案内してくれるポリトングさんに出合い頭に聞いてみた。
「いままで気にしていなかったんですけど、そういえばルザリドの主食って?」
「虫かと思いますが?」
「いや、虫はメイン料理とか前菜とかでしょ?」
「いいえ、主食でもありますよ」
そういいながらポリトングさんは首をかしげた。
「よくある主食としての虫のリビシュは、昨日の昼食にもでていたかと思いますが」
はて?
私は車酔いで気分が悪く、ほぼ食べられなかった昼食の内容を思い出す。
虫のソテーに虫のスープに虫のサラダに虫のジュースに虫のデザート……
「なかったと思いますけど」
「いえいえ、確かありましたよ。
こう皿にこんもり盛られた、白い虫が」
「え゛」
私は思わず濁った声をだした。
「あの、領主さんがこれは美味しいですよって言ってたやつ……」
「はい、質の良いリビシュでしたので私が、昼食にお出しするようにお勧めしましたから」
………………泣いていいですか。
普通にお米だと思って食べましたよ、それ。
米にしてはプチプチした触感で、変わった品種だなぁと思いつつ、まあ虫を食べるよりは格段にマシかと思っていた時期が私にはありました。
昨日、ポリトングさんに連れられて虫舎と呼ばれる、虫が飼育されている場所をみたときに、両手で持てるような大きさの正方形の箱に、白い虫がすごい密集して詰められていた。
あの箱一つで、一皿分のリビシュだとか……そんな豆知識いらない。
王城ではその米もどき虫は出てこなかった。
毎回食べるものではないらしいし、私が虫は嫌だといったので、最低限しか使わなかったのだろう。
この憤りっ、誰にぶつけたものかっ!
「ジャスっ、うろこを」
「ダメです」
どさくさに紛れて提案しようとしたけれど、言葉の途中までで拒否された。ちぇっ。
気を取り直して、結局米はこちらにはないらしい。
ヒューモスの国ではわからないけれど、少なくともゼリウンで栽培している場所はないという。
だったらパンは、というと小麦粉はあるらしい。
昨日のブヒンの飼料にも麦が使われていたらしいからあるだろうとは思っていたけれど、その情報にはほっとした。
あまり量産はしていないけれど、厨房に行けばある。エンフォーレに帰る際にはそれなりの量を分けてもらうことも可能なようだ。
けれどパンの作り方がわからないらしい。
そんなの、私にもわかんないよ。
スーパーに行けば四つ切りとか六つ切りとかの食パンが当たり前に買える日本で、料理好きでもない人間がちゃんとした作り方を知ってるわけがない。
王城に帰ってからピューレさんに相談してみよっかな。
仕事が増えるのは申し訳ないけれど、なんとなく彼女ならなんとかしてくれそうな気がする。
「それでは今日は農園の方に向かいましょうか」
ポリトングさんは納得した私を促した。
昨日と同じメンバー+リーゼだ。
昨日は一日、領主の館にいたリーゼも、今日は一緒に回るらしい。
そんな感じで出かけた農園では、特に問題がなかった。
確かに日本にあった野菜とかとは種類が違うけど、細かいことは私では分からないし、拍子抜けするほどあっさりと視察が終わってしまった。
昨日見せられた虫よりも、明らかに種類が少ないし、畑を実際に見てもわかることはあまりない。
ポリトングさんも菜園や畑の案内は、昨日の虫園の案内より力が入っていなかった。
ルザリドは一般的に、野菜や果物を食べはするけれど好きではないらしい。
一切食べない人もいるそうだ。
ベジタリアンならぬムシタリアン?
まあチョロちゃんも、基本的には虫しか食べなかったし、生命活動に必要な栄養素の上では問題ないんだろう。
一通り見て回っても、まだ昼になってもいなかった。
「予定より早いが、やることがないならエンフォーレに戻るか?」
アルにそう聞かれて私は悩む。
エンフォーレに帰ってからもやることはあるんだけど、せっかくここまで来たんだからもう少しいたいような気もする。
やることがなかったか思い出すために周囲を見回して、ふと気づく。
「この辺りって昨日も来たよね?」
「ああ、あの岩のあたりに来たな」
そういえばチュウンがいると言われて連れて行かれた場所が、アルの示すあたりだった。
先ほどまで見ていた菜園は町から一番離れているところにあったので、ほぼ隣りと言ってよい場所にチュウンの飼育地もあるようだ。
せっかくなので少し寄ってもらった。
ここまで来たんだし、チュウンという獣も見れるなら見て帰ろうか、ぐらいの軽い気持ちだったんだ。
昨日も来た地面に穴が空いている場所へやってきた。
ポリトングさんが一応、チュウンの担当をしているルザリドに声をかけてくると言ってくれたのでお願いする。
普段はその担当ルザリドは町にいるらしいので、ポリトングさんが一人町に向かって駆けていくのを見送った。
「やっぱりいないかなぁ」
私は昨日案内された穴を順番に回っていた。
今日はブヒン小屋には行っていないので、体臭はまだマシなはずだ。
けれどやはりチュウンらしき獣は見つからなかった。
なんだかいないと逆に、余計探したくなるよね。
宝探しのように私は少しわくわくしながら、岩陰を探していた。
しばらくそうしていると、少し離れたところにある大きめの木の傍にある岩が気になった。
すこし坂になっているみたいで、その大きめの木がウサギとカメのお話のゴールのように見えた。
「あっちにも行ってみるね」
周囲に声をかけて、私は岩に向かって走っていく。
「サ、サラ様、お待ちください……っ」
レンの声が聞こえたので振り向くと、レンが私を追いかけるように走ってきていた。
その後ろをジャスが付いてきている。護衛ルザリドもその後ろからきていた。
アルとトアとリーゼは揃って町の方を見ていた。エンフォーレに帰るときの打ち合わせでもしているんだろう。
私が岩の元まで移動したのには気づいていると思うから、改めて彼らを呼ぶ必要はないでしょ。
周囲を確認した後、私は目の前の大岩を見つめた。
「この岩、気にならない?」
「さ、さぁ? どうでしょうか……?」
「ジャスは?」
「…………」
返答はない。追いついてきた二人に私は苦笑しながら岩を触った。
まったく湿り気のない岩で、触れたところからぽろぽろと粉がこぼれる。
私が五人ほどいればようやく手をつないで一周できるぐらいの大きな真ん丸な岩で、この一帯にある岩の中ではもっとも大きいだろう。
岩の周囲にはチュウンの穴はないようで、私は舌打ちしながら岩に蹴りをいれた。
ドゴッ。
「え」
予想してた衝撃と音ではなかった。
思っていた以上に軽い岩だったらしい。
ゆらりと岩の全体が蹴った方向へ動き、その動きは加速する。
「わわわわわっ、みんな避けてーーーーっ!」
坂の頂点にあったその岩は、転がりつつ坂を下っていく。
坂の途中まで来ていた護衛ルザリドは、慌てて道を開ける。
その隣を通過していく岩。
加速していく岩が目指すのは、坂のふもとで話をしていた三人。
護衛ルザリドのように進行方向から逃れるトアとリーゼ。
けれどアルはその場を動かない。
私が体を堅くしてそれを見つめていると、アルは腰に佩いていた剣をゆっくりと抜いた。
そう言えば一度、あの刃の部分を突き付けられたことはあったなぁ……って、今はそんなことしてる場合じゃないでしょっ!
私の心の中の叫びには構わず、アルはやはりその場から動く気配はない。
アルに岩が迫る。
「――――ハッ」
気合と共にアルが剣を頭上から振り下ろした。
目を逸らすこともできずに私が見守っていると、徐々に岩の回転が止まり始めた。
そしてアルの目の前で、彼よりも大きな岩は真っ二つに割れたのだった。
なに、この、アニメみたいな展開。
この後アルが「またつまらん物を」とでも言い出したら、それこそ完全にありえないわ。
私は呆然としていると、アルが剣を収めてこちらへと向かってくる。
足音が地響きを立てているように感じるのは気のせいだろうか。
やばい、怒ってるっ……!!
私は咄嗟にアルを褒め称える。
「さすがトーカスハさんの息子だね~、すごいすごいっ」
「お前は、少しは、考えて行動しろっ」
こうか が ないみたいだ・・・
坂を駆け上ってくるアルからの逃げ場所を探すように、私は視線を動かした。
「あ、ねぇねぇ、岩の下。穴が開いてるっ」
そして気付いた。
もともと岩のあった真下に、マンホールを三倍ぐらいにした穴が開いていたのだ。
「これってチュウンの穴かなぁ?」
「ど、どうでしょう?」
レンがオドオドと穴を覗き込む。
穴は結構深いように見えるけれど、まっすぐではない。
たぶんかなり急なスロープのようになっているんだと思う。
ジャスも私の側で穴を覗き込みながら、首をひねった。
「形はチュウンの穴に似ているけど……、かなり大きいわね」
そうなのだ。
これまで見たチュウンがいるという穴も、まっすぐな縦穴ではなかった。
けれど入り口の穴の大きさからして、これまで見てきたチュウンの穴の八倍ぐらいはあるんじゃないかな。
私は穴から顔をあげ、周りを見回した。
護衛ルザリドさんは私が穴を覗きはじめたぐらいから、少し私から離れて周囲に散らばっている。
けれどそんな巨大チュウンらしき獣は見当たらない。
まあ穴が岩でふさがっていたから、今は使っていない巣穴なのかもしれない。
「何をやってるんだ」
アルがこちらに向かって歩いてやってくる。
怒りはまだ収まっていないようだけれど、私たちの行動が気になったらしい。
私は穴を覗き込みながら、それに応える。
「ここにね、穴がっ」
その時、
「―――っ」
「えっ」
「きゃ」
隣にいたジャスの背中が私に向かって倒れてきた。
私はさらに隣にいたレンの服を掴み、そのまま目の前の穴へと体が傾ぐ。
「うわぁぁっぁぁぁああ」
私とレンとジャスが一緒に穴の中に吸い込まれて。
背後からアルの声が聞こえた気がしたけれど、振り返っている余裕はない。
「ぎゃああぁぁぁあぁぁあ」
私は悲鳴を上げながら、穴を滑り落ちて行った。
穴は三人で一緒だとあまり広くはない。滑り台のようになっていて、とっかかりも見当たらない。三人でもつれ合うようにしてどれぐらい経っただろう。
唐突に広い空間に放り出された。あまり高いところからではなかったけれど、突然だったので私は着地がうまくできずに腰を地面で打った。
「たっ~~……、レン、ジャス、大丈夫?」
私が腰を押さえながら顔を上げると、二人はしっかりと立っていた。
着地に成功したらしい。
なんだか私の運動神経が悪いみたいだけど、これはルザリドが優れているだけだからねっ。
私はそんなことを思いつつ、少し悔しがっていると目の前に誰かが立った。
「ごめんなさい。
立ちくらみがして……私が倒れたりしなければ、こんなところに落ちなかったのに」
ジャスはそう言いながら、私に手を差し出していた。
え、これ、取っていいのっ? 取っていいんだよねっ?
思わぬサプライズに、私はニマニマしながらジャスの手を取って立ち上がる。
「いい、いい。だいじょーぶ。
誰にだって体調が悪い時ってあるよ」
「本当にごめんなさい」
ジャスは心から謝っているようだ。
取った手からそのままウロコ満喫タイムに洒落込めるような雰囲気ではなく、私とりあえず自分の服についた汚れを叩いた。
「大丈夫だって。
怪我もないし。
それよりもジャスはもう大丈夫なの?」
「ええ、もう治ったわ」
そうジャスが言ったとき、彼女は何かに気づいたように、私たちが落ちてきた穴を見上げた。
「聞こえます」
何が?
ジャスの言葉に私が首をひねっていると、レンがそんな私に気づいたのかこう言った。
「アルとトゥーキアさんが今、その、こちらに話しかけてきているんです」
そうしてから、レンも同じように穴を見上げた。
「わたしも、サラ様も一緒です」
さきほどのジャスと同じように、穴に向かってレンは話した。
おそらくは話しかけてきているというアルとトアとの会話が成り立っているんだろう。
地上の声は私には聞こえない。
二人の邪魔をしないように私は黙った。
「はい――――知りません。――――広い空洞のようです」
「――――だ、大丈夫です。すみません」
ルザリドって、トランシーバーいらずだよね。
私は暇だったので、空中に向かって受け答えをする二人を置いておいて、周りを見回した。
随分と下って来たので、私たちが出てきた穴からは一切光が入ってきてはいない。けれど私の目は周囲が判別できる程度の光をとらえている。
明るいと言うほどの光量はないけれど、どこが光っているんだろう。
私は手軽な岩がすぐ傍にあったので、それに腰を下ろしつつそんなことを考えていた。
そうしてしばらくすると、
「わかりました」
と地上と話をしていたジャスが言って、こちらを見た。
「アルベルト様が今から降りてくるから、そこをどいて」
「アルが?」
私は座っていた場所からどく。
レンが私を促すので、誘われたほうへと移動した。
時間をおかずに、私たちが出てきた穴からザーっという音がして、すぐにアルが出てきた。
彼は体勢を崩すことなく、地面に着地する。
くそぅ。やっぱりルザリドって身体能力高いよね。
「本当に無事だな」
降りてきたアルの第一声はそれだった。
「無事、無事。上は大丈夫?」
「……ああ、トアもリーゼもいるから大丈夫だろう」
そっかぁ、アルは一応警備責任者だからわざわざ降りてきてくれたんだ。
「――――待て。今、ポリトング殿が戻って来たらしい」
アルがそう言って、私に手の平を向けた。
耳を澄ます三人のルザリドと、一切何も聞こえないヒューモスの私。
なんとなく寂しい気がして、私はまた周りを見回した。
やはり光源が気になる。
私は自分の足元を見た。
あまり濃くはない上に土の上だから見にくいけれど確かに影がある。
つまり影とは逆の方向に光っているものがあるはずだ。
あっちか。あ~あれが光ってるっぽい。
私が歩きだそうとしたとき、私は宙に浮いた。
「え、え、え」
宙をかく足を二三歩ばたつかせてから、私は背後を振り返る。
「勝手な行動をするな」
アルが私を両脇から持ち上げていた。
かなり間抜けな状態なので、私は下ろすようにお願いしたけれど、アルは聞くつもりがないのか、地上のポリトングさんから聞いたであろう情報を披露する。
「町を作るよりもかなり前に、ここ一帯はチュウンの住処だったらしい。
草木を植えたり、町を作る過程でだいぶ減ったがな。
ここはそのころの巨大チュウンの元住処らしいぞ」
……どんだけ大きかったんだ、チュウン。
「どこかに出口があるはずだ」
アルはそう言って、私の摑まえたまま周囲を見回した。
この捕獲状態のままで移動ですかっ?
下ろしてほしいという再度の私の主張は無視され、アルは進む方向を決めたようだ。
私ではまったくわからないけれど、アルが言うには、若干地面が傾斜していてそちらから風が流れてきているのがわかるらしい。
「リーゼ、聞こえてるな。
今から出口を探して移動する。
予定の時間までに俺たちが戻らなければ、その穴から応援をいれてくれ」
叫ぶでもなくアルがそう言って、しばらく耳をすます。そして動き始めた。
私には何も聞こえないけれどリーゼの返事が、アルたちには聞こえているらしい。
本当にこの程度の距離はルザリドの聴覚の前では何の障害にもならないようだ。
「行くぞ」
「ねぇねぇっ、あれって何?」
歩き始めたアルを、私は止める。
先ほどから気になっていたのだけれど、アルが進もうとしている方向とは逆の場所にぼんやりと光っているものがあるのだ。
私の説明を受けて、レンが屈んだ。大きな岩の下に隠れるようにいくつも落ちていたので、高身長のアル達では気付かなかったのだろう。
レンがその光っている物を持ち上げる。それを見てアルが声をあげた。
「魔石だな……これは大きい」
「魔石って?」
「魔素を集めている石だと聞いたことがあるが、詳しいことはリーゼに聞け」
ああ、そういえば昨日、魔素は溜めることができるとか言ってた気がするなぁ。
レンの手には私なら一つを持つのがやっとかなと思えるほど大きな、石と言うよりは岩があった。
ぼんやりとした光を放っている。なんとなく私が召喚された転位陣の光ににているような気がする。
あれは集まった魔素が発光しているんだろうか?
わたしがふむふむとレンが持っている魔石の一つを見つめていると、後ろでアルが地上に向かって話しかけていた。
「ポリトング殿。この魔石は持ち帰っても? 調査に回したいんだが」
なんだか貴重なものだったみたいだ。
許可が出たらしく、レンとジャスが手分けして、いくつも手に抱えている。
わおっ、やっぱりルザリドって力持ちぃ。
「私も一つぐらい持とうか?」
「もうお前は勝手に動くな」
完全にアルからの信頼が無くなっているようだ。
その後、それほど苦労なく地上には戻ることができた。
けれど私はトアに引き渡されるまで、ずっとアルに両脇を抱えられた状態だった。
そんな私をレンとジャスはおそらく暖かい目で見ていただろうし、地上にでたところで合流できた護衛ルザリドの視線は、かなり痛かった。
なんだろう、この公開処刑。
言葉で謝るよりも、かなり反省できた気がする。
ちなみに地上に戻ってから、リーゼは目を輝かせて魔石を受け取っていた。
結局チュウンは見ることができなかったけれど、それなりに良いお土産が手にはいったんじゃないだろうか。
エンフォーレへの帰り道、私はまたアルに負ぶってもらった。
トカゲ愛が抑えきれずに、二回ほど落とされそうになったのはご愛嬌というやつだと思う。
そうして昼を完全に回ってから、エンフォーレへと私は帰ったのだった。




