何かⅡ
三行あらすじ
挫折した受験生の少年が
河に行ったら
河童に会った
意味が全くわからない。
僕はただ河に来ただけであった。まあ、その理由はちょっとした違和感からなのだが。それでも、こんな事態は想像もしていない。いや、ただ河に来ただけで。
河童に出会うかもしれないと予想する者はよっぽどの臆病者か、天才超能力者だ。
その河から現れた河童は、僕の頭の中の、想像上の固定観念そのものそっくりそのままであった。
背中を覆う甲羅。
頭を包む皿。
長く鋭い爪。
くりくりとした小さな目。
おどおどしい高身長と筋肉。
僕は咄嗟に尻を手で隠した。僕の河童という言葉から連想した知識は『尻子玉を取られる』だったのだ。しかし、僕の尻子玉になど興味がないようで、しかしながら、僕そのものには興味があるようで、ゆっくりとした動きで河から出た。
日はもう静まりかけていて、僕も早く帰らなければならないのだが、そんな事には頭が回らなかった。
そして、その恐怖は、河童の容姿だけではなく、その言動にもある。
「hlhgf;ahgf;hda;gdasbu;ganjgue hgau; hap;hgud;gha gh;a hfg;ahguahgeiua hgf@;a」
「分かる……が……言葉……だ……はず……」
〔言葉が分かるはずだ〕
と、言った気がする。
河童の言葉が分かるわけではない。頭の中に単語が一語一語勝手に浮かんでくるのだ。しかもそれはバラバラでランダムで、いや、ランダムではないのかもしれないが、文字列が日本語とは明らかに言えなくて、それを無理矢理組み替えて、日本語に翻訳した。
どうしてこんな事が出来るのかと言われれば、はてなを返す他ない。僕だって、少し考えようとしてしまえば、頭の中がゲシュタルト崩壊しそうだ。
だからあえて何も考えない。心を無にして、考えるのをやめて、恐怖も取り除いた。
僕は河童と対話をしてみる事にした。勿論河童語など分かる訳ではないので、日本語で話す。
「……お前は、何だ? 何者だ? 人間……なのか? いや、そんなはずはないよな。だったら、お前は何者だ? 生物なのか?」
質問を連続でしてしまったが、後悔はしていない。とにかく今は、疑問だらけで、質問せずにはいられなかった。
すると、河童は答えた。
「hblsgjds higush;gjs hgs hp;ghs bgpsgn uh p; nj ihsoghnioshgs;g hpshgupshgsug」
〔質問には一切答弁しない。お前の疑問は疑問として残ったままなのだ〕
「……はァ!?」
もう訳が分からなかった。タンパク質で出来ているのかすらも不明な緑色の化け物は、僕に何一つ教えてくれなかった。
だけれど、僕の疑問には答えてはくれなかったけれど、河童は全く予想していなかった事を言った。
「jg;ahg hgija ;;b fajjjj igh@aogh ahgf n:@gan ngf@ahgf@aghf@aoe n h@anfgafna@fgha;gfhefagaghiagha@ghegheisghaghiehga hfgi;ahn gfah;fghai hgfahgfia hgfa gfauhgf@」
やけに長いその音のようなものはを解読するには時間がかかった。だけれど、僕がその意味を知ったとき、驚愕というか、呆れたというか、もう何て言えばいいのか分からない感情に陥った。
〔そもそも、何を言っているのだ。お前だった人間ではないだろう〕
その後の僕の行動は、一切後ろを振り向かずに全力で逃走する事だった。
よくよく考えてみれば、こんな化け物と対話している義務は無い。相手は河童だ。河から少しだけ出られたとしても、完全に乾燥した場所での生活は困難なはずだ。
辺りはすっかり暗くなっていて見えるのは家の窓から漏れる光りと、チカチカと点滅する電灯だけだった。
だがそれで道がわからなくなるほど僕も馬鹿じゃない。何年も住んでいる町だ。更に、狭い狭い田舎だ。迷うなんて幼稚園児でもしないほどに狭い田舎町。僕は迷わず家に帰宅する事が出来た。
とりあえず、今日の事は忘れよう、と自分に強く念じて、今日は寝た。
しかし僕は次の日、波崎に尋ねる事になる。
「お前ってさ、僕の事どんな風に見える?」
第一章はこれで終わりです。




