075:最も憂鬱な救助①
遅くなりました。
今回もお楽しみいただければ幸いです。
ダンジョン探索中に、何らかのトラブルによって自力での解決が不可能になった際、探索者リーダーは救援要請を発信することができる。
優秀な人材をできる限り救済するための制度で、これまで数えきれないほどの優秀な人材や、将来性のある人材が救出されてきた。
優秀な人材の育成には、時間的にも金額的にも相応のコストがかかる。
その人材を救うことは、探索を進めていくうえで重要度が非常に高い……高いんだが、あいつらを救ったところで、今後も貢献するのかどうか、非常に怪しいところだ。
まあ、オレたち学生が救援要請に参加できることはあり得ないことなので、希少な経験が得られるということで、納得するしかないか……。
「ここからは私が先行します。速度が速いようなら、お声がけください」
そう言うとアイさんは、オレたちの返事を聞く前に移動を開始する。
オレたち四人は、それに追随する。
アイさん、足速えーーー。
とはいえ、オレたちはその速度についていけないほどではない。
スキル操作による強化のおかげなんだけどね。
すでに攻略済みの階層を、再び戻っていくだけなので、まったく魔物と遭遇することなく、B9層への階段へと到着する。
一旦、足を止めるアイさん。
「皆様、B9層へ移動しますが、問題ございませんか」
救援活動中とはいえ、一度間合いを取ったのか。
なるほど、勉強になるな。
アイさんのことだから、この機会も教育の一環として、意識的に利用しているんだろうな。
「ヒカル、問題なし」
アイさんに答えるオレ。
「ミク、問題なし」
「アネゴ、問題なし」
「ヒメ、問題なし」
オレの返答に続き、三人も返答する。
その返答を聞き、アイさんは無言でB9層への階段を降りていく。
そのあとを、オレたちも追う。
B9層に降りると、少し遠くから戦闘音が聞こえる。
どうやら、まだ全滅はしていないらしい。
この階層は、B8層やB10層と似ているため、かなり遠方まで視認することが可能だ。
見た感じ、どうやらこの階層の中腹辺りで戦闘しているようだ。
アイさんは、これからどう行動するか思案している。
「アイさん、急ぎましょう。あと半分、距離が縮まれば狙撃が可能です」
「分かりました。移動します!」
すぐさま移動を開始するアイさん。
オレたちもそれに続く。
二人が魔物と戦闘しているところへ少し近づいて分かったが、黒原たち……ではない。
少し年配者に見える。
黒原たちのパーティー指導者の二人なのか?
ゴブリンキングやシャドウウルフに囲まれて、なんとか魔物の攻撃を凌いでいるように見える。
「アイさん! そろそろ狙撃可能距離に入りました!!」
「では、そこから狙撃をお願いします! 玲様……ヒメはヒカルの援護。ミク、アネゴは私に続いてください」
「「「「了」」」」
オレは、その場で膝撃ちの姿勢を取り、ゴブリンキングのヘッドショットを狙う。
レーザーポインターがゴブリンキングの頭部にあることを確認し、魔銃をフルオートで発射!
見る限り、すべての魔弾はゴブリンキングの頭部に吸い込まれていく。
「ブモオオオオォォォォォォーーーーーん……」
ゴブリンキングは、断末魔とともにその場で倒れ、魔石に変わる。
なんとか、あの二人は救えたのか?
ゴブリンキングと対峙していた二人は、気が緩んだのか、その場で膝をついた。
あとは……。
周囲を見渡すと、オレたちと近い場所に、魔物たちが集まっている場所を発見した。
ゴブリンキングと二人が対峙していた場所よりも近い場所だが、壁際だったため発見が遅れたようだ。
魔物たちの先に、人がいるのか?
「博士、この階層にオレたち用のドローンって飛んでる? オレは視認している先の魔物たちの周辺を確認したいんだけど」
川越ダンジョンの外で待機している博士に伝えると、すぐに返答がある。
「すでに数台のドローンにより、その階層の情報は収集中です。映像を送ります」
タイムラグなしで、ゴーグルに映像が表示される。
壁側にある窪み辺りに向かい、シャドウウルフが何かに群がっているように見える。
シャドウウルフの群れは、窪みの先にある何かを襲っているようだ。
それが黒原たちなのか?
「アイさん、超迷惑なごくつぶし軍団を発見。これから周辺の魔物を掃討します」
『うわっ、やる気なさそー』
あまりの棒読み通信に、ミクからツッコミが入る。
無気力感があふれ出てしまった。
気を取り直し、魔銃の射撃モードをフルオートからセミオートに切り替える。
フルオートだと、黒原たちも同時に討伐しかねないからな……。
数台のドローンからの映像で、シャドウウルフの先に、人が重なり合うように倒れていることは確認済みだ。
レーザーサイトのスイッチを入れ、黒原たちを襲っている最後方のシャドウウルフを狙い撃つ。
命中。
シャドウウルフは魔石に変わる。
んっ?
オレの攻撃に気が付いていないのか?
一体が魔石になっても、それに気づかずに黒原たちを襲い続けている。
動きが早いシャドウウルフが四散しないのは好都合だ。
オレは次々にシャドウウルフを狙い撃つ。
そして、いよいよ最後の一体になったとき、シャドウウルフはようやく後ろから攻撃されていることに気付き、逃亡を図る。
あ、その方向は……。
逃亡を図ったシャドウウルフは、ゴブリンキングがいた方向へと走り出した。
「アネゴ!」
『補足済』
だよな。
逃亡したシャドウウルフは、目の前の人影に向かい、本能的に攻撃態勢に移ると、噛みつこうと飛びかかる。
噛みつきが成功したと思ったその時、シャドウウルフはおかしな方向へと吹き飛んだ。
どうやら、アネゴのハンドガンによるスパイク攻撃が、見事成功したようだ。
相手が悪かったな。
シャドウウルフの討伐を見届けたあと、周辺を軽く索敵していると、アイさんからの通信が入る。
『視認、ドローン情報共に、この階層には魔物の生息は見受けられません。これから救助活動に移ります』
その通信で、オレも救助活動へと気持ちを切り替え、さっきまでシャドウウルフが群がっていた場所へと向かった。




