058:川越ダンジョンへ再び
今週は予定通りアップできました!
お楽しみいただければ幸いです。
朝6時30分ごろ、藍澤家のステーションワゴンが自宅前に到着した。
すでに美玖も出発の準備は整い、オレの隣に並んでいる。
「おはようございます」
「はろはろ~」
いつも通り助手席にはアイさん。そして後ろの座席にはすでに颯希もピックアップ済みで、アイさんの早朝の挨拶に続き少しおかしめな早朝の挨拶。
後部座席の奥には玲も乗車しており、軽く会釈をしているのが見える。
「おはようございます。朝早くから申し訳ないです」
挨拶を返すオレの横で、美玖はみんなに向けて軽く手を振っている。
さすがにオレはまだ、そこまでお気楽な関係にはなれないな。
「オレ達は後続の車に乗ればいいですか?」
「いえ。本日は到着までにお伝えしたいことがございますので、こちらの同じ車に乗車ください。少しの間、窮屈な思いをさせてしまいますが、ご了承を」
「んじゃ、あーしは後部座席に移動するね」
そういいながら、ワゴンの中央スペースから颯希は後部座席へと移動し、美玖も無言でそれに続いて後部座席に座ったので、オレは今まで颯希が座っていた中央の座席に座り、シートベルトを装着する。
「それでは、このまま川越ダンジョンへ向かいます」
アイさんがそういうと同時に、ステーションワゴンは静かに動き出し、今日も驚くほどスムーズかつ清音性を保ちながら加速していく。
「それで、輝様……というよりはチームの皆様に、川越ダンジョン探索前にお会いしていただきたい方がございます」
うわ。面倒ごとか。とは言え断れないよな……。
「その人ってどなたです?」
「ブリーフィングルームに案内する旨しか承っておらず、どなたかは私もお聞きしておりません」
「そうですか……。了解です」
面倒だけど、アイさんが依頼されたことなら、ダンジョンのアイザワもしくは玲と近しい関係者のはずだから、むやみに断ることはできないよな。
ちらっと玲を伺うと慌てたようsがないので、おそらくは誰と会うかは認識済みだな。
☆☆☆
川越ダンジョンに到着したので、ダンジョンのアイザワが確保している、いつものブリーフィングルームへと向かい入口へと到着すると、アイさんがブリーフィングルームの扉をノックする。
「どうぞ」
扉の向こうからは、少し年配っぽい男性の返答が帰ってくる。
「失礼いたします」
その声を聴いたアイさんは、丁寧な返答をしながら扉を開ける。
そして、扉を抑えながらこちらを振り返りオレたちに向けて声をかける。
「どうぞ、お入りください」
そこには、年配者の男性……おそらく50歳前後の年齢の男性が、オレたちの姿を見ると椅子から立ち上がる。
んっ? この人どこかで見たことあるぞ。一体どこで……。
「こちらのお方は……」
「いや、アイ君……」
「あ、はい」
アイさんが紹介しようとするのを止めて、年配の男性自身が自己紹介を始める。
「皆さん初めまして。私は藍澤龍之介。皆さんの活躍は目覚ましいね。先日の川越ダンジョンまつりの活躍も拝見させていただいた」
んっ? 藍澤龍之介って……ダンジョンのアイザワの代表取締役じゃないか! ということは玲の父親さん!
「は、初めまして! 僕……いえ、私は天真輝といいます。このチームのリーダーをさせてもらってます!!」
(((うっわ、緊張しすぎ)))
なんかすげー緊張してるよオレ。三人の突っ込みの声が聞こえる感じがする。
「はははっ。そんなに緊張することはないぞ」
藍澤さん父は、わざわざフレンドリー気味にオレの肩を叩く。叩かれた瞬間つきものが落ちたように緊張感が解れ、冷静になれた。
「それでお話というのは……」
「ああ、そうだったね。先日の川越ダンジョンまつりでの君たちの活躍を見て、弊社では君たちのチーム黄昏の月への支援を検討している。君たちとの同意が得られれば、臨時役員会にかけて協議をおこなうことになっているんだ」
支援って、あれだよな。ダンジョンのアイザワで優秀なチームに対して行っている、サポート体制を取るってやつか。
確かに、ダンジョンのアイザワから支援されれば、活動の幅は果てしなく広がり、オレ達の利は相当だ。だけど、即答できる内容ではないな……。
「もちろん即答する必要はない。仲間やご家族とも相談して、前向きに検討してもらいたい」
「は、はい。そういうことであれば……」
最終的に、持ち帰って検討することになった。みんなとも相談しなければならないしね。
ただ、ダンジョンへ向かう途中でみんなと話をしたところ、全員前向きということが分かった。特にダンジョン探索経験がオレよりも長い颯希と玲は、このチャンスを逃すべきではないと実に積極的だった。
そんな話をしながらダンジョンの入口へと到着する。
ダンジョンレベルゼロの『神条稲荷ダンジョン』以外は指導者が必要なため、今回はアイさんが指導者として同行してくれる。
今日のアイさんは、赤黒くザラっとした皮素材で出来た体にフィットした装備を装着している。弓装備なので、こういったシンプルなものが理想的なんだろう。
スーツ姿の時にも感じていたけど、この装備だとスタイルの良さが際立っているな……。
基本アイさんは、後方でオレ達の行動を見ながら、命の危険を感じない限り口出ししないそうだ。
もちろんオレも、そんな状況にするつもりはないけどね。
それじゃあいよいよ、前回不本意だった川越ダンジョンへのリベンジといきましょうか!




