046:脱出
少し遅くなってしまいました。お読みいただければ幸いです。
時間は少しさかのぼる。
ヒカルとヒメが落石に巻き込まれる状況を、何もできずに見つめるミクとアネゴ、その他無事に反対側へと避難したメンバーたち。
爆発音の後、爆発で破壊された岩盤が、ヒカルとヒカルを助けようと飛び出したヒメ共々、向こう側へと逃げ延びたとは到底思えないほど絶望的なタイミングで、ミクとアネゴの目の前に岩山が積み上がっていく。
「「ヒカル(っち)、ヒメ(っち)……」
茫然とその状況を静観しながら名をつぶやくことしかできない二人。
「あー残念。藍澤も巻き込まれちまいやがったかー」
「まあ、もし万が一生き延びてたら、うちのチームに迎えてやるか」
ヒカルとヒメを心配している二人をよそに、『堕天使の翼』の黒原とサブリーダーの意地北の軽率な言動を耳にし、ミクとアネゴは瞬時に怒りが込み上げ、無意識のうちに手にした魔銃を黒原たちに向ける。
「おい! あんたら、まさかわざとやったのか!?」
「いやいやいや、早まるな早まるな。あいつらが逃げ遅れただけだろう? 藍澤に至っては、本人自ら向かっていったじゃないか」
薄っぺらな言い訳を続ける黒原と井地北と、対峙するミクとアネゴの間に、『赤城サンブレイク』のリーダー沼田が割って入る。
「全員冷静に! まずはここから脱出することを第一に考えよう。その他は出てからだ。ヒールスパイダーが出現した時点で非常事態案件に移行している可能性が高いので、上の階層へと移動していけば、救援部隊と合流できるはずだ。まずは上の階層へ向けて移動を開始しよう!」
若干冷静になる二人。
『赤城サンブレイク』のメンバーをよくみると、後方支援だった自分たちと比べ、近接戦闘を主体としていたこともあり、満身創痍とまではいかないまでも、かなりの傷を負っている状態だ。
どうやら、回復薬はすでに使い切り、僧侶ポジションのメンバーのMPも残り僅かになっているようだ。ここにヒメがいれば、まだまだ余裕だったかもしれないが、現状では全く余裕がないと言ってもいい。B3〜1Fまでは四階層もある。低階層とはいえ、この場で不毛な言い争いをしている場合ではない。
「あーね。あーしたちは、外まで沼田っちに合わすよ。いいよね、ミクっち!」
「うん」
その返答に満足げの『赤城サンブレイク』リーダー沼田。
「君たちもそれでいいか?」
「ん、ま、まあ、かまわないぜ」
「ああ……」
黒原たちも従うらしい。
「退却のフォーメーションは……」
『赤城サンブレイク』リーダー沼田の指示により、前衛には『赤城サンブレイク』のリーダーとサブリーダー二人が受け持ち、その後ろに黒原のチームの五人、その後ろにミクとアネゴの二人、最後方に『赤城サンブレイク』メンバーの四人の、双剣使い、アーチャー、魔法使い、僧侶のフォーメーションを指示される。
指示されたフォーメーションを行っている最中、黒原たちが爆破する直前に突然機能停止していた周辺のドローンが、再度動き始めた。
「ようやく再起動したか。何が原因だったのか……」
再び動き出したドローンを見つめながら、サンブレイクの沼田はつぶやくが、誰もその真相にたどり着かない為か誰も反応できず、無言のまま退却用フォーメーションが完成する。
「移動開始する!」
『赤城サンブレイク』リーダー沼田の号令で退却を開始する。退却に使用する通路は最東側で、この通路は今回まだどのチームも通過したことがない箇所だったため、20M程度進んだだけで魔物と遭遇する。ポイズンスパイダー2体だ。
中央のポジションから戦闘を開始する『赤城サンブレイク』の二人を見ながら、射線を取れる左右の両端へミクとアネゴは移動してレーザーを照射しながら狙いを定める。ミクとアネゴの位置から魔物との距離は、おおよそ7M程度。
『赤城サンブレイク』のサブリーダーの盾がポイズンスパイダーを弾き怯んだ瞬間、右側にポジションを取ったアネゴが魔銃を三連射する。三発とも命中して、ポイズンスパイダーはそのまま消滅し【魔石 Lv3】がドロップする。
続いて『赤城サンブレイク』リーダーがもう一体のポイズンスパイダーに一撃を入れると、怯んで後ずさりしミクの射線に入ったため、ミクも魔銃を連射すると、ポイズンスパイダーはそのまま消滅し、再び【魔石 Lv3】がドロップする。
「おお! その魔銃は正確かつ連射性が高いな!! 今度試させてもらえないか?」
「いやートップシークレット……かな?」
「まあ、ヒカルっち次第」
「そうか……無事再開したときに聞いてみよう……」
最後はテンション下がり気味で沼田は言う。岩の下敷きになったと思われる二人のことは、ほぼあきらめている感じに見える。
「それと、このドロップ品は、致命傷を与えた二人が受け取ってくれ」
そういいながら、アネゴに【魔石 Lv3】を二つ渡してくるが、その一つだけ受け取るアネゴ。
「んじゃ、フェアで分配!」
「いいのか?」
「いんじゃね?」
「……しょ、承知した」
再度退却するフォーメーションを整える間、ミクがアネゴに話しかける。
「たぶん気付いてると思うけど、ヒカルとヒメとの繋がりって感じてるよね?」
「それな! もちのろん!!」
ギャルだかオヤジだか分からない返答に、ちょっとだけ戸惑いながら返答するミク。
「もちのろんって……オヤジギャルおつ」
「ちょっ!」
軽口を叩きながら、ヒカルたちの状況を整理していく二人。
「なんか、むしろヒメとの繋がりが強くなってる感じ?」
「だね!」
「ていうか、100パー物理的に繋がったよね!」
「アネゴ……」
下ネタ全開に言葉を失うミク。
ただ【依存協調】については、リアルタイムで上昇してることが繋がりの度合いで実感しているため、二人が生存してると確信している。
その後、特にフォーメーションは変えずに上の階層を目指し進んでいく。
上の階層へ戻るまで何度か魔物との遭遇戦は繰り広げられたが、イレギュラー的な魔物との遭遇はなかったため、怪我なくB2へと移動することができた。
B2に到達したタイミングで、聖女こと藍澤玲のインターン先リーダーが率いる救援部隊とコンタクトすることができた。
ヒメと同パーティーのミクとアネゴの存在に気付いたヒメのインターン先リーダー上杉さんが、ミクたち二人に質問する。
「藍澤玲は一緒じゃないのか?」
「退却時に分断されたので、その後の状況はつかめてません」
本当はなんとなく分かっていたが、なぜ分かったのかの説明が難しいため、ミクはそう返答するしかなかった。
「そうか……。玲君の救出はアイ君に任せるしかないか……」
そばにいるミクたちにも聞こえるかどうかの小さな声でつぶやく上杉さん。状況を整理しながら、思わず口に出た感じなのだろう。
「これからは我々が先行して露払いをしていくので、安心してついてきてくれ」
「「「よろしくお願いします!」」」
その後、上杉さんが率いるチーム先導のもと、ヒカルとヒメ以外のB3からの撤退メンバーは、無事ダンジョンを脱出するのであった。




