040:B3階層突入
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駆け足でB2階層を進み、ついにB3階層へと到着したオレたち。
運値が高いオレは、この階層でも、なるべくトドメを刺さないよう努めるが、スパイダー系は素早さが高いため、こちらの発見が遅れれば、先を越されて攻撃されることも十分考えられる。
この階層には『アーススパイダー』『ポイズンスパイダー』『ビッグスパイダー』の三種類が生息している。
ただ『ビッグスパイダー』だけは、上位の魔物のためか非常に出現率が低い。
この階層での遭遇は稀なので、アーススパイダーとポイズンスパイダーとの戦闘がほとんどになるはずだ。
そのスパイダー系の二種は、攻撃力、耐久力共に劣るものの、オークよりも素早さはある。オークよりは戦いやすいはずだが、素早さが高い分油断は禁物だ。
なので、この階層からは、すべての手札を解禁する!
「みんな、ここからはアンリミテッドだ! 遠慮なしで行くぞ!」
「「「了」」」
オレたち『黄昏の月』は、各自判断で躊躇なく戦闘することを宣言する。オレが何をドロップさせちゃうのか、ちょっと怖いんだけどね……。
意を決して、いよいよB3階層へと踏み出したその時、大きな破裂音と共に地響きが響き渡る。このタイミングで地震か?
でも、この地響きは地震の揺れと少し違う気がするんだけど……。
一旦足を止めて様子を伺っていると、地響きもすぐに収まる。
どうやら地震でもなさそうだ。だとすると誰かのスキルの影響とかか?
そういえば、黒原の奴が爆発系のスキルを、親の仕事の関係で手に入れたとか噂されていたな。いや、噂と言うより、本人が自慢したくて口を滑らせたんだっけか。
まあ、どっちでもいいけどな……。
「今のは地震じゃないよね?」
「ああ、おそらく爆発か何かの影響だと思う」
「ヒカルっち。ダンジョンって勝手に爆発するっけ?」
「そんなダンジョンもあるかもだけど、少なくとも川越ダンジョンでは聞いたことがないな。誰かが爆発系のスキルを使ったのかも……」
その情報を聞いて嫌な顔をするミク、アネゴ、ヒメ。
そもそも爆発系のスキルを黒原が持ってるって情報元はこの三人から。
三人を自分のパーティーに勧誘したくて、いかに自分が優れたスキルを持っているか自慢……もとい、自分のパーティーに入ればいかに有益だと思われたくて、うっかり口にしたらしい。
正確なスキル名までは口にしなかったようだけど、【+3】のスキルを所持しているらしい。
「ああ……黒原君たちのチームがこの階層に居るのね」
「うわ、だるっ」
「……」
気を取り直し、足を前へ進める。
この階層に入ると、曲がりくねった一本道がしばらく続く。
距離にして約200メートル進むと、最初の分岐地点へと到着する。
オレたちはまず、この分岐点を目標に進行することにする。
今の地響きで、魔物にも何らかの影響があったかもしれないので、少しだけ警戒を強めての移動だ。
南へ延びる通路を20メートルほど進むと、通路が右方向へと緩やかに曲がっている。
その付近にまで近づくと、ミクが魔物の気配を察知した。
「通路先に魔物の気配。あれっ? 足音らしい音が左右の壁側から聞こえるんだけど……。数は2」
「了」
オレはBのフォーメーションを維持し、二十式魔銃を構えながら通路を進んでいく。
ここまで近づけば、オレにも魔物の気配がはっきり分かる。
ついに魔物が視認できる場所まで辿り着く。すると二体のアーススパイダーが10メートルほど先の左右の壁へと一体ずつ取りつき、その場で前後左右にぴょんぴょんと跳ねながら、どこへ向かうか悩んでいるような動きを見せている。
もしかして、さっきの地響きの影響で、魔物自身も動揺しているのか?
アーススパイダーは、細身の体からスラっと細長い足が延び、腹部を含めた全身が深いブルー色をしている。
腹部はほぼ球体で、そこには白い筋状の模様がところどころ付いている。
その形状と模様が、まるで宇宙から見た地球に似ているため、アーススパイダーと命名された。
ハンドサインで、ミクとアネゴに左右それぞれのアーススパイダーを攻撃するように指示した後、オレは通路中央で膝撃ちに構える。
ミク、アネゴはそれに続き、オレの左右後方で魔銃を構える。ヒメだけ北側通路には出ず、その手前で後方を警戒する。
まずは左側の壁にいるアーススパイダーを狙い散弾グレネードを発射!
散弾は見事命中し、アーススパイダーの丸い腹部の破裂を確認し、散弾グレネードの次弾のため魔力を再チャージしながら、右側の壁に取りついたアーススパイダーへと狙いを定める。
左側のアーススパイダーへの攻撃で、右側の個体も刺激されたようだ。
少し身をかがめる体勢になる。ジャンプして、こちらに飛び掛かるつもりか?
ジャンプするより早く右側のアーススパイダーへ攻撃するため狙いを付ける。
その直前、左側後方から魔弾の射出音が聞こえる。
ミクが左側の壁にいるアーススパイダーへ向け発射したようだ。
オレも右側のアーススパイダーへ攻撃するためトリガーを引こうとしたその時、右側後方からも魔弾の射出音が聞こえる。
どうやらミクの発射に釣られて、アネゴもトリガーを引いてしまったらしい。
「あっ! やばっ!!」
当然オレもトリガーを引き散弾グレネードを発射。
右側のアーススパイダーには、アネゴの攻撃後、オレの攻撃が命中。できる限り避けていたオレがトドメを刺す状況が、この階層で早々に成立した。
「ヒカルごめそ……」
「オッケー。まあ、そんな時もあるさ」
アーススパイダーから落ちたアイテムなんだけど、ミクが倒したほうは【魔石+3】オレが倒したほうはジュエルボックス……。中には【攻撃+2】のジュエルが入っていた。やっぱりオレがトドメを刺したほうは、最もドロップ率が低いアイテムかよ……。
気を取り直し先へと進む。
北へ60メートルほど進むと、そこからはS字を描くようなカーブが続く。
見通しが悪いので警戒しながら進んでいくが、ここでは魔物との遭遇はなく、S字カーブを超えると、そこからは緩やかな長いカーブが南へと延びている。
ここからはあと約150メートルほど行けば分岐点へと到着するはずだ。
ここからは見通しがいいので、少しだけ警戒を緩めて足を進める。小走りとまでは行かないけど、歩行スピードよりは若干早い速度で進んでいく。
分岐地点まであと半分ぐらい進んだ辺りで、ミクは魔物の気配を察知する。
少し進むと、今度はアーススパイダー四体との遭遇だ。10メートル先に二体。15メートル先に二体が見える。
今度は四体もいるんかよ! そう思った瞬間……。
「スロウ! ヘイスト!」
ヒメの詠唱と共に、魔物にはスロウ、オレたちにはヘイストが掛かる。
さすがヒメ。状況判断が早くて的確だ。
四体いるが全てにスロウが掛かっているので、焦る必要はない。
まずは10メートルの距離にいるアーススパイダーに、一発ずつ散弾グレネードを撃ち込む。
その後の処理はミクとアネゴに任せて、オレは15メートル先のアーススパイダーへと狙いを定め、再び一発ずつ散弾グレネードをお見舞いする。
万が一に備え、アーススパイダーの動きを確認しながら、照準を付けた状態でその場で待機していると、壁を跳ねながら近づいてくるアーススパイダーを、ミク、アネゴは期待通り、次々と危なげなく四体とも討伐する。
同じ失敗は繰り返さない。さすがの二人だ。
この戦闘では【魔石 Lv2】×3【魔石 Lv3】×1がドロップした。
アーススパイダーが最もドロップするのが【魔石 Lv2】で、次にドロップするのが【魔石 Lv3】なので、これが正常なんだよな……。
オレは若干モヤッとしながら、分岐地点へと足を進める。
まだまだ地響きと爆発音の影響がありそうなので、警戒気味に進行していくが、結局北と東に向かうことができる分岐地点まで、特に魔物と遭遇することなく到達した。
この分岐から北へ進むと、大きな円を描くように通路が続き、最終的には東側の分岐へ戻ってくる構造になっている。
円の中ほどには横断通路が一本あり、最東部の分岐からは西南方面へ戻る道と、次層へ向かう道に分かれる。
……とはいえ、決勝での使用エリアはこの層までなので、その通路を使用することはないだろう。
分岐地点から先のルートを思案しながら、オレたちは分岐へ向けて進んでいく。




