034:決勝前夜のスキル操作
いつの読んで頂きありがとうございます!
少し更新が遅くなりました。
余力がなくなってきたため、しばらくの間、週一回のペースの更新にさせていただく予定です。
今後ともよろしくお願いします!
会場で配信された予選映像は、川越ダンジョンまつり用に用意されたインターネットのホームページで全てがアーカイブ化されているので、その動画をブリーフィングルームで一通り観覧した。
「配信されているオレ達パーティの行動を見る限り、基本行動、連携、アクシデント時のフォロー等、これといった問題はなかったと思います」
パーティーメンバーやアイさんも、それは同意しているようで、異議なしの表情のまま静観している。
「ただ、もし問題定義として何かしら上げるとしたら、最終局面でミクと魔物が遭遇した際に、焦って攻撃を外したあとの行動……くらいじゃないかと」
オレは続けて……。
「あのケースでの理想の行動としては、敵が複数ではないことはアネゴも視認していたはずなので、アネゴ自身が追撃するのもありだったんじゃないかと思います。まあ結果論なので、そんな方法があったかもってことだけ、認識してもらえればいいかなと……」
少し美玖には思考を巡らせたいと思い、数秒間だけ間をおいてから質問する。
「ミク、あの時の状況は覚えてる? どんな思考だったとか」
「えっと……、たしかゴブリンが目の前に現れて、やばっ! って思いながらトリガーを引いたんだけど、当たらなくてドキドキしながら撃ちまくった感じ?」
焦って狙う余裕がなくなってパニックになったって感じかな。まあ想定内だな。戦闘経験が少なかったし、この辺は徐々に経験を積んでいくしかない。
「なるほど。明日以降は、後ろに控えているオレ達に、もっと頼ってくれて構わないから。まあ、オレの経験値はそれほどじゃないかもだけど、アネゴとヒメは同年代の中ではベテラン域のレベルで、後方フォローは安心してほしい」
「うん。分かった。アネゴ、ヒメ、明日もよろしくね」
コクリと頷くアネゴとヒメ。
「それともう一つ、魔銃のフルオートを解禁しようか。弾数の消費が多くなるので少し魔力の消耗が激しくなるかもだけど、連射できると思えば少し気楽に戦えると思う。気を付ける点は、トリガーを引いただけ弾が出続けるから、撃った後はトリガーにかけた指の力を緩めるのを意識するように!」
「んっ!」
あと、個人的にはオレの運が高すぎるのも気がかりだな。ドロップ率が1パーセントと言われている、ゴブリン討伐時に【魔石LV2】がいきなりドロップしたのはシャレにならないよなー。
「ミク、帰宅したらちょっと相談があるんで、家に寄ってもらえる?」
「うん。いいけど何?」
「それは帰ってからで……」
さすがに、スキル操作をしたいってことをここで公言するのはためらい、はっきり言わなかったけど、ヒメとアネゴは何かを察した感じがする。やっぱり鋭いな……。
「明日もありますので、本日はそろそろ引き上げましょうか」
共有したい情報を一通り共有したタイミングで、アイさんが引き上げの号令を出してくれた。どうやら、アイさんが事前に送迎に使用する車へと連絡を入れていたようで、地下駐車場の出入り口付近には、朝に使用した車と同じと思われる高級ミニバンが三台並び待機していた。
ヒメは、ミニバンの周辺で警戒している数名のセキュリティーガードに、中央のミニバンに誘導されながら、社内に乗り込んでいく。
「皆様、それではお先に失礼いたします。明日もよろしくお願いいたします」
「また明日!」
オレが挨拶している両脇で、ミクとアネゴがヒメに手を振る中、先頭のミニバンの先導で、ヒメが乗り込んだミニバンは川越ダンジョンを後にする。
「輝様たちは、こちらのお車にお乗りください」
残った一台に誘導されて、オレ達三人はその車に搭乗し、まずはオレの自宅へと送迎される。オレの自宅横がミクの家なので、ミクも下車し明日の予定を確認しようとアイさんに話しかけようとした時、何故かアネゴも続けて下車する。
「あーしは今日美玖っちの家に泊まんね。いいよね、美玖っち!」
「えっ? いいけど着替えとかは?」
「予備があるし大丈夫」
そういいながら、ポニーテールに使っている濃い目のピンク色をした髪留めのゴムを解いて広げると、なんとフリルが付いたエロ目のショーツに早変わり! おいおい千堂さん。何を髪留めに代用してるんだか……。いや、そうじゃなくて、ミクのうちに泊まられると、オレの計画が狂うんだが。
「颯希ちゃん! こんなところで広げない!!」
「ごめそ」
変な寸劇を見させられている中、アイさんが冷静に一言。
「それでは、明日九時にお迎えに上がりますので、本日はこれで失礼いたします」
そういうとアイさんは、車に乗り込んで去ってしまった。あああアイさぁん……。
「とりあえず輝の部屋に行く?」
「えっ?」
「ほら、相談あるとか言ってたじゃん」
「あーしも!」
戸惑っている状態のまま二人に手を引かれ、玄関からオレの部屋へと移動する……。てか、今、普通に美玖がうちの玄関のカギを開けてなかった? いつのまにかうちのカギを所持しているとか謎過ぎるんだけど。
オレの部屋に入ると、三人並んでベッドに腰を掛ける。なに、この状態。
その間も二人に手は掴まれたままなので身動きが取れないんだが。
「帰宅したよ。で、相談ってなに?」
いやー、この状態で相談事を伝えるのって、ハードル高くない? 千堂さんには別の部屋に行っててもらうとかか……。
「まって! あーしが当てる」
はいっ?
「あれっしょ? 美玖っちがゴブリンを倒し損ねて、輝っちフォローでとんでも魔石ドロップしたから運を下げるみたいな?」
「せ、正解……」
「あーしをのけ者にするなしー」
ん? どういうことなんだ。理解が追いつかないんだが。
「あーしは本日、自制値ゼロ落ちしたんでー、スキル操作おにゃさす! 美玖っちも一緒いいよね」
「えっ!? なに、その理不尽極まりない要求……」
「いいじゃん。長いものに巻かれろ的な?」
「いや、それは絶対意味が違うと思うよ……」
うん。使い方間違ってるねって、イヤイヤそうじゃなくて、この子達は何言ってんのさ。
「ほらほら美玖っちも一緒にお願いしよ」
美玖は右耳から、千堂さんは左耳から囁かれる。
「「お・ね・が・い」」
とりはだー。ぞぞぞぞが止まらないんですがー。ある意味シアワセ空間?
「どうよー輝っち」
「は、はい。了解です」
「なんで敬語ー。うけるんだけどー。で、どうする? ここでする?」
オレのベッドに三人が乗って暴れたら、ベッドが崩壊する未来しか見えん。三人で異空間へ移動だ。
明日の体力温存を考え、オレは運を50まで下げるのみ。美玖と千堂さんは知力を22まで上げ、MPを40に引き上げるスキル操作を行うまでに留めた。




