033:予選通過チーム発表
いつも読んで頂きありがとうございます!
少し更新が遅れました。
予選終了と共に、会場に設置されたメインモニターが四分割され、各チームの活動状況が映し出されている。
この映像を眺めているだけでも、各チームが同じ時間帯にどのような行動をしていたのかよく分かる。
移動しているのか、戦闘しているのか、休憩しているのか等々。
一目でそれぞれのチームを比較できるので、見ているだけでも勉強になるなあ。
各チームの映像には、魔物討伐数や獲得アイテム数も表示されており、討伐や獲得のたびに数値が更新されていく。
それを観ている周囲の観客たちも、数値が更新されるたびに盛り上がりを見せる。
これまでの動画はすべてネットで配信しているはずだから、あとでアーカイブ映像を見られるか確認してみよう。
「すごっ! あーしたち、あんな感じなんだー!」
自分たちと他のパーティーの映像を見比べて、アネゴはテンションが爆上がりしている。ほぼ観客だよ。
ミクもヒメも、同じように目を輝かせている。
「ねえヒカル……なんか、私たちの映像だけ、凄く浮いている感じがしない?」
あはは……。四つに分割された各パーティーの活動を冷静に見比べると、うちのパーティーはものすごーく異質だよな。
他のチームは様々な魔法を駆使し、剣や盾を使った攻防で魔物を倒していく。さらにファイヤーボールやウインドカッターなど、どこかで聞いたことのある魔法を放ちながらダンジョンを攻略していく。
その姿は、まさに王道ファンタジーそのものだった。
かたやオレたちのパーティーは、ヒメを除く三人がそれぞれアサルトライフルやハンドガンを手に、魔物を討伐していく。
どう見ても、現代人が異世界で戦っているような光景だ。
他のチームと比べれば、異質に映るのも当然だ。
「このチーム内では、わたくしだけが浮いているようで、疎外感を感じます……」
およおよおよと、泣き出しそうな雰囲気を醸し出すヒメ。
うん。銃を撃ちまくってる後方でたった一人、聖女そのものな格好だもんね。さしずめ、異世界転移したオレたちに協力する、お姫様的ポジションだ。
個人的には中二心をくすぐる最高のポジションだろ。
ただ、ミクとアネゴは魔銃以外をダンジョン用の装備で固めているので、見た目だけならダントツで浮いているのはオレだ。なので大目に見てほしい。
モニターの映像は、いよいよ終盤に差し掛かり、MCによる実況のテンションがさらに上がっていく。
後半へ進むほど、オレたち以外の三パーティーは下層の手強い魔物に苦戦し、討伐数が減っていく。
対してコンスタントに魔物を倒し続けているオレたちへの実況は、自然と増えていった。
『下層で戦闘を行う三パーティーは、1Fよりも手強い魔物の討伐に少し手こずってる感がありますねぇ。それに比べ、下層へは進まずに1Fの周回を選択している黄昏の月《トワイライトムーン》は、ほとんど一度の攻撃で魔物を倒しているので、戦闘時間が短く、すぐに次の魔物へと向かうことができるんです。これが勝負の分かれ目になったようですね!』
MCの煽りに、会場はさらにヒートアップ! 歓声なのか絶叫なのか悲鳴なのか、もはや感情の赴くままに会場は盛り上がりを見せる。
そんな中、後方から何者かに声を掛けられた。
—
「聖女様人気に肖っただけじゃなかったんだな。思った以上にいいパーティーだ」
この人は……どこかで見た覚えがある。聖女様云々の下りは、どこか聞き覚えがあるんだけど……。
「沼田様。そちらこそ、予選通過おめでとうございます」
そうだ。赤城サンなんたらの沼田さんだ。
「ありがとう。それと天真君。この前ぶりだね」
「お久しぶり……というほどではないですが」
赤城サンブレイクのリーダーが手を上げ、挨拶してきたので、軽く会釈をしながら……。
「よかったら座っていきます?」
立たせっぱなしってのも何なんで、一応、イスを勧めてみる。
「いや、このままで問題ない。長居をするつもりもないんでね。一つだけ聞きたいことがあるんだが……」
「構わないですよ」
一呼吸置いてから、沼田は質問を行う。
「三度目の戦闘で女性がピンチになった際、しばらく介入しなかったように見えたが、なぜすぐに援護しなかったんだい」
ああ、三匹目のゴブリンの気配を見逃して、ミクがピンチになった時のことか。
実際には、対応力を確認するとか、あきらめずに対処し続ける経験をさせるとか、アネゴの援護姿勢とか、パニック時の行動力とか、正直に言えばいくつかの理由があるけど、ここで正直に伝えたくはないな……。
「そんな風に見えましたか? 実のところ、単に躊躇しちゃって介入が遅れただけなんですよ」
とりあえず、適当にそれっぽいことを言ってみる。
「あはははははははっ」
えっ? オレなんか面白いこと言ったっけ?
「何をそんな見え透いた嘘を……。君はゴブリンと遭遇した後すぐ、常にゴブリンに狙いを定め続けてたじゃないか」
ちっ、誤魔化せなかったか。あのシーンも配信されていたとはなぁ。
「あれ、バレバレでした?」
「ああ、バレバレだ」
まあ、バレているか。なら、一つだけ理由を話すことにした。
「すぐに介入してもよかったんだけど、せっかくピンチの状況になったので、その時二人がどう立て直していくか、ギリギリまで様子を見させてもらってたんです。相手はゴブリンだったからできたことなんですけどね」
「……なるほど。それだけではないと思うが……、君は、かなり面白い思考をしているようだな。いずれ、じっくりと話してみたいもんだ」
オレに向けるその視線は、明日の決勝だけでなく、その先まで見据えているように感じた。
この人がリーダーだからこそ、『赤城サンブレイク』は学生チームの中でもトップクラスなんだろう。いずれは学生の中ではなく、探索者の中でトップクラスに上り詰めていくんだろうな。
「あ、すまん。あと一つ聞いても?」
「あー、かまいませんよ」
「君が使用している武器は、ダンジョンの吸収アイテムだよな。他のパーティーメンバーの武器も同様に見えたが、何か入手のコツがあるのか」
「ちょっとそれは企業秘密ってことで」
「ふっ、だろうな。あっ、そろそろ時間か。とりあえずお暇させてもらうよ。決勝ではお互い頑張ろう!」
そう言うと、サンブレイクのリーダーは立ち去って行く。決勝で待ってるって、まだ結果は出てないんだけど……。と思っていたところに、MCの声が響き渡る。
『みなさま、おまたせしました。予選第四グループの順位が確定です。通過第一位はーーーーー『黄昏の月《トワイライトムーン》』だーーーーーー!!』
MCの絶叫に合わせて、モニターには各パーティーの名前と魔物討伐数、アイテム獲得数、獲得合計ポイントが表示されていく。
1位:黄昏の月
魔 物:16体
魔石1:3個
魔石2:1個
合 計:86,500ポイント
ーーーーーーーーーーーーーー
2位:土浦パープルライン
魔 物:10体
魔石1:3個
合 計:51,500ポイント
ーーーーーーーーーーーーーー
3位:国立イーグルアイ
魔 物:9体
魔石1:3個
合 計:46,500ポイント
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4位:鴨川キラーホエール
魔 物:6体
魔石1:1個
合 計:30,500ポイント
オレたちのパーティーの獲得ポイントは、他チームを大きく引き離し、ダントツで予選通過していた。
よっしゃー!
予選通過は想定内であっても、やっぱり結果が出るってのはシンプルにうれしいな!
静かに喜びをかみしめているのも束の間、左右と正面から勢いよく飛びつかれた。
ミク、アネゴ、ヒメの三人がオレに飛びつき、そのまま予選通過の喜びと達成感をぶつけるように抱きついてきたんだが、ち……力が強すぎる……。
正面から飛びついてきたアネゴは、勢いよくオレの首に腕を回し、力の加減なく抱きついてくる。アネゴの胸に顔が埋まり苦しいんだけど……。
「ずるいー。私の胸も押しつけてもいいかなぁ? ……いいよね!」
「で、では、わたくしも僭越ながら……」
右側から抱きつきながら、やきもちを焼いておかしな提案をするミク、左側からは、控えめにくっつきながら、おかしな提案に便乗しようとするヒメ。
公共の面前で、これ以上破廉恥なことをしなくてもいいからね。
『これで、ついに決勝の四チームが確定ですね。群馬県代表「赤城サンブレイク」。千葉県代表「深淵のベルーガ」。埼玉県代表「堕天使の翼」。同じく埼玉県代表「黄昏の月」の四チームが決勝進出となりました。埼玉県代表の二チームは、なんと同じ学校だそうです。今年はまだ参加チーム数が少ないとはいえ、非常に珍しいことです。とても優秀な学校なんですねー』
優秀かどうかはどうかな……。
『決勝は、明日の十三時スタートです。ルールは予選と同じですが、制限時間は四時間の長さで、解放エリアも一階層増えてB3エリアまで探索可能になります。このエリアでは、スパイダー系の魔物三種類、アーススパイダー/ポイズンスパイダー/ビッグスパイダーが出現するようになりますので、更にスリリングな戦闘が繰り広げられることになるんじゃないでしょうかね』
一旦間をおいてMCが再開される。
『出現するスパイダーの主な特徴ですが、アーススパイダーは素早さに長け、ポイズンスパイダーは毒攻撃、ビッグスパイダーはサイズが大きく耐久力が高いようです。これらを踏まえて、明日の決勝では参考にしていただければと』
決勝は、階層が深くなるから予選と同じ作戦は使えないんだよな。深い層の魔物はドロップ内容が段違いになるため、魔物の討伐数よりもドロップ内容が大きく影響する可能性が高い。ただ、全パーティーが同じエリアに集中すれば、魔物の取り合いになる可能性もある。それも悩みどころなんだよな。
この後、みんなと相談して、基本線を詰めたいな……。
「まさか、おまえが決勝に残るとはな。相変わらず女子に守られてるみたいで、いいかげん情けなくないのかよ」
うわっ! 出やがった。声を掛けてくんなよ。
「いったい何の用だ。オレたちはこれから明日の対策会議だから忙しいんだけど。黒原たちは、明日の対策を立てたりしないのかよ」
「はぁ? 大きなお世話なんだよ。お前らこそ、対策なんかしても無駄になるだけだぜ」
「ぷぷっ、黒原っち。予選のポイントうちらに負けてんよ?」
「くっ!」
あー、頭に血が上がってたな。顔真っ赤にしちゃってるよ。アネゴナイス!
「あー、それじゃオレたちはこれで! アイさん、打ち合わせするいい場所ありますか?」
「それでしたら、川越ダンジョンビル内のブリーフィングルームの使用が可能です」
前に使用した場所かな。
「おい、待てっ!」
いやいや待たないよ。そもそも毎度ワンパターンのウザ絡みするだけで、なんも生産性がないんだもん。付き合ったって時間の無駄。
「じゃ、黒原また明日な!」
黒原はまだ何かわめいていたけど、パーティーメンバーと関係者を引き連れて、完全スルーでブリーフィングルームへと向かった。
内容に齟齬がありましたので、文章を若干調整しました。




