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スキル操作で現代ダンジョンを生き抜く!  作者: ももんが


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27/45

027:川越ダンジョンまつりへ

大変お待たせしました!

ぼちぼち更新を進めていこうかと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 川越ダンジョンまつり当日。

 毎度のごとく甘えさせていただき、藍澤さんちの車の送迎で川越ダンジョンへと到着した。

 到着時間は早朝六時。

 会場のパーキングに止めた車から下車すると、雲一つない空が赤く染まる様子が目に映る。美しい夜明けのこの空は、本日から本格始動を始めるオレたちの門出にぴったりだ。と、キザな思考にちょっとだけ赤面しながら、この思いは絶対口にしないと誓う。


「いやー輝っち。いよいよだねー」

「入学した時には、まさか私までガチでダンジョンに挑むこちになるなんて思わなかったよー」

「わたくしは頼もしいリーダーの誕生に、心が打ち震えております」


 正直オレも、まさか高校入学一年目で、こんなに大会に参加することになるとは思わなかったな。しかも、県内きっての大きなイベントといっても過言じゃない川越ダンジョンまつりに参加することになるなんて、オレ自身想像だにしなかった。

 いや、それよりも藍澤さんのオレに対する態度が、半月ほど前から驚くほど変化している。尊敬? 敬愛? いや、心酔するまであるんだが。心が打ち震えるなんて言動、出会った当初は絶対言わなかったはず。

 【スキル操作】を使ってエッチすると【依存協調】というステータスが生えて、オレに依存していくってことが分かったので、美玖や千堂さんがオレに対する距離が近くなるのは理解してるんだけど、藍澤さんとは今も【スキル操作】をしていない。いや将来的にも、そんなおこがましいことは考えていないんだけども……。

 そのはずなのに、何故か俺と藍澤さんとの距離感が、なんか近い気がするんだよね。


「ねえ、千堂さん。最近、藍澤さんがオレに対する距離が近いって気がするんだけど、何か思い当たることない? この前、依存協調のステータスの話をしたと思うんだけど、その影響を受けている気がするんだよね」


 藍澤さんがアイさんと何かの確認のために距離を取ったので、そのタイミングで千堂さんに聞いてみる。


「ん? そうかな……どれくらいから、そんな感じ?」

「半月ほど前なんだけど」

「んーーーーーーなんかあったっけかなぁ。美玖っち思いあたる?」

「どうかな……あっ! あれじゃない?」


 どうやら美玖が何かに気付いたようだ。千堂さんはまだピンときていないようだけど。


「ほら、あれだよ。お昼しているときに、颯希ちゃんがふざけて玲ちゃんにチューしたときあるじゃない。その接触とか?」

「えーそんなんで感染する? チュー感染ウケるー」


 いやいや、そんなのでステータスが生えちゃうのか?


「颯希ちゃんの感染力やばいわ……」

「人をインフル扱いすんのやめれ!」

「あははは、タミフル処方するよ」

「タミフルは飛ぶんで、ゾフルー処方でよろー」


 おいおい、話がどんどん逸れていくんだが……。


「輝っちが玲っちに、【鑑定!】ってやれば解決じゃね?」


 千堂さんが突如こちらに向き直ったかと思うと、横ピースサインで指の間から片目を覗かせるポーズを取り、至極真っ当な指摘を突き付けてくる。

 この横ピースは、鑑定している感を出してるのか?

 そんな話をしているタイミングで、藍澤さんとアイさんが戻ってきたため、三人ともが藍澤さんへと注目する。


「何かございましたか」


 少し戸惑っている藍澤さん。


「調度いいところに戻ってきた。ほらっ輝っち【鑑定!】ってやっちゃって!」


 再び横ピースのポーズを取りながら急かす千堂さんにつられてオレも横ピース。


「か、鑑定?」


 詠唱なんて必要ないのに、ついつい声を出して鑑定してしまった。超恥ずいんだが。

 鑑定結果はこんな感じ。


---------------------

藍澤 玲

レベル  :6

年齢   :17

HP   :14

MP   :44

経験値  :1970

未配能力値:56

筋力   :6

敏捷力  :10

耐久力  :7

知力   :22

判断力  :18

魅力   :18

運    :15

依存協調 :12

スキル  :火魔法+3

     :聖魔法+3

---------------------


 経験値の増加以外は特にステータスに変化がない? あっ! やっぱり依存協調のステータスが生えてる。まさか本当にチュー感染しちゃたのかよ。


「藍澤さん……。依存協調のステータスが増えてます」

「わたくし、輝様のスキルの御操作をお受けした記憶がございませんが……何故でしょうか」


 少し驚きながらも、たぶん冷静な返答の藍澤さん。スキルの御操作って藍澤さんの普通なんだよね?

 自分には分からないと言おうとした時、オレに変わって千堂さんが話し出す。


「この前、玲っちにチューしたときに、あーしから感染したかも。えへっ」

「えへっではございません! どのようにすれば治療が可能なのでしょう。輝様、何かご存じですか」


 いやーそんな修正マニュアル知らないんだけど……。


「ムリじゃね? 玲っちもあーしたちみたいにラブラブすればいいと思う!」

「いやいや颯希ちゃん、さすがにそれは……ねぇ」

「ラブラブでございますか……」


 あれっ? 藍澤さん受け入れに前向き? 少し頬を赤く染めたような気がしたけど、それは気のせいということにしておこう。


「ゴホン。皆さま、そろそろ受付に参りましょう。この時間でも、既に受付が可能だそうなので」


 沼った会話にアイさんが介入して、とりあえず場は収まり受付へと向かう。

 簡易テントに設置された受付に着くと、顧問のアイさんが代表して受付の手続きを行ってくれている。といっても、アイさんの端末に表示されたQRコードのスキャンで一発完了。どうやら、事前に用意されたフォームに、パーティー名やメンバーのプロフィール、人数等の情報を記入し、QRコードで共有していたらしい。

 この情報を元に、人数分の「生体認証リング」を受け取りその場を後にする。


「控室が使用できるまで、まだ少し時間がありますので、一度会場へと向かいましょう。そこで、生体認証リングの配布と説明を行います」


 アイさんの案内で会場へと向かっていくと、次第にその全貌が目に入ってくる。

 早朝ということもあり、会場はまだ閑散としているけど、そんな中、会場のメインステージに設置された横幅二十メートルを超えるモニターは圧巻で、これでもかってほどの存在感を示している。

 さらに、そのモニター上部に三つのモニターが設置されていて、計四カ所のモニターでダンジョン内での各チームの様子がリアルタイムで配信される。

 その映像の配信はダンジョンのアイザワが開発中のドローンが一手に担い、予選の開始と共に百台以上用意されたドローンがスタート前からダンジョン内を飛び交うということだ。

 今のところは、十機程度のドローンがこの近辺を飛び回り、その映像情報がモニターに配信されているので、たまにオレ達の姿もモニターに映し出されたりする。


「あそこに座りましょう。あのスペースは、黄昏の月《トワイライトムーン》の専用スペース認りますので」


 アイさんが指さす方向を見ると、すごく豪華なガーデンテーブルセットが用意されている。どうやら各参加パーティーには使用できるエリアが用意されていて、設備等の持ち込みも可能とのことだ。きっとこのテーブルセットは藍澤さん関係者が用意したと思われるが、わざわざその確認は無粋なので口をつぐもう。


「まずは、皆様に生体認証リングをお渡しします。動作確認を行いますので、各自、腕に装着して下さい」


 オレ達四人は、生体認証リングを受け取り腕に装着すると、装着したと同時に数回点滅し、ポンッと高温の警告音と共に点滅が終了する。


「認証が無事終了したようです。装着している間は、皆様の生体状況がリアルタイムでスキャンされます。装着中は、装着者の位置情報や生体情報等が共有されるので、もし危機的状況になれば、救助に向かうために上級探索者が待機しているとのことです」


 なるほど。この装備は、そういうための装備だったのか。もしパーティーメンバーに危険が訪れた時、これがあればある程度保険になるかもしれないな。とりあえず、控室で準備を進めるまでは、もうやることはないな。それまでは、ここでのんびりさせてもらおうかな。


 身体の力を抜いて、用意された椅子に身体を委ねリラックスしていると、モニターには今日参加する十六のチームが紹介されていく。

 すべてのチームの紹介が終わると、次には試合形式の説明が始まる。

 予選は、四チームが一グループになってダンジョンに潜り、タイムトライアル形式で制限時間内に討伐した魔物の数とドロップした魔石の価値総計でグループ中トップのチームが決勝へと進出できること。

 予選を突破した四チームが、同様のルールでダンジョンへとタイムトライアルを行うこと。

 これらの説明が、繰り返しモニターに表示された後、次は優勝候補チームの紹介。

 優勝候補の筆頭には、群馬のパーティー「赤城サンブレイク」このチームが優勝候補ナンバーワンらしい。

さらに、天使の吐息、深淵(しんえん)のベルーガ、黒原のパーティー堕天使の翼。そして最後には、オレ達のチーム黄昏の月(トワイライトムーン)が、そこに名を連ねている。

 奴らも優勝候補内にいることを確認しうんざりしながら、控室へ入れる時間になったので、いよいよ川越ダンジョンまつりに参加すべく、控室へと向かった。


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