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あちーぶ!  作者: キル
79/246

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』09

 出来ることといえば、ここから離れることだ。後ろにじりじりと下がる。


「グアアァアァアアアァアアアア!!!!!」


 ワイバーンの咆哮に、後ろへ向けて一気に走り出す。とにかくここを離れる!

 幸い、この稜線はそろそろ小さな山にたどり着くから、それを超えたら下りになるので走りやすくなるはず!

 稜線沿いではなく、横にそれて迂回をするように小山を抜けて先へ進もうと走ると、背中から風の風圧で飛ばされ、それと同時にダメージを受ける感覚があった。


HP:25/155


 やばい! 風魔法だと思うけど、1撃でかなり減った! 地面を転がりながら、周辺に逃げられそうな場所を探す。

 さっきの小山、裏側に大きな岩が並んでいる。隙間に入れるか!?


 少し上にあるので全力で登る隙に、ワイバーンが飛んできたため、杖を槍投げのように投げつける。ワイバーンが杖を大きく回避したぶんだけ、時間が稼げたので、岩場に何とか到着……隙間が小さい。


「[ディグアース]!」


 土を掘るだけの魔法だけれど、岩の下を掘ればなんとか隠れる隙間が――岩が転がってきた!?

 目の前の巨大な岩が手前に転がってきたので、それを慌てて避ける。その岩は斜面を転がっていったけれど、岩が転がったおかげで隙間が開いたので、そこに身を隠す。多分このサイズの穴ならワイバーンも入ってこれない!


 ……襲ってくる様子がない。あきらめた?


『システム:特殊能力【巨体特攻】を取得しました』

『システム:特殊能力【龍種特攻】を取得しました』

『システム:称号【ジャイアントキリング】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【ジャイアントキリング】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【ドラゴンスレイヤー(中級)】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【称号取得】を獲得しました』

『システム:種族進化しました』

『システム:アチーブメント【初進化】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【特殊進化】を獲得しました』


 ……え?


 岩陰から顔を覗かせる。転がった岩によってワイバーンが押しつぶされている様子が下の方で見えた。……素材回収しよう。


 素材の解体方法がわからなかったけれど、ストレージに丸ごと収納できたので入れておいた。ストレージ便利だ。課金して増やしてもいいくらいだけど、みんなはどうするのかな。


 そんな風に現実逃避している。


名前:ギンガ 種族:ドワーフ(ジャイアント) 年齢:15 性別:女

レベル:12 職業:戦士 状態:正常


HP:25/165

MP:65/70


筋力:32

体力:16

耐久:13

敏捷:6

器用:6

精神:4

知力:3

魅力:7

感知:11


ステータスポイント:7

A:6 B:2 C:1


 ステータスを何も振ってない状態で、筋力が+5されている。種族ボーナスがとんでもなく上がってる……。

 それに、レベルも一気に12まで上がってしまった。みんなと揃ってレベル上げが出来なくなった。一緒に強くなるのが楽しみだったのに……。


 ……良いことなんだろうけれど、ギンカは嫌だ。


 山に登るのは後にして、ログアウトする。


~~~~~~


 ベッドから起き上がり、シーポンを起動して電話を掛ける。ゲームしてるかな?


『もしもーし、銀華? どしたの?』


 黄金音ちゃんが電話に出てくれた。


「うん。あのね、またやっちゃって……」


 ワイバーンの遭遇から討伐、アチーブまでの話をする。


『あー、いつものになっちゃったのか』


「うん……。大丈夫かな? みんな何か言ってくるかな……」


 いつもの……なぜか、ギンカは運が良い。常に強運なわけじゃないけど、くじ引きは当たるし、懸賞の抽選は当選するし、遊びでのトランプは良いカードばかり来るし、テストの解答へ適当に思いついた言葉を書けばそれなりに正解する。

 ゲームでもそれが反映されていて、単純なじゃんけんでも勝ち続けるし、ゲーム内のレアアイテムも普通に引く。


 おかげで、友達と対等に遊ぶことができなくなった。ギンカが入ると面白くなくなるからって、遊ぶこともなくなり、最終的にずっとひとりだった。


 今回のキャラクター制作でも、最初に獲得した特殊能力は【伝説の英雄】だった。2回目が【真・大魔王】で3回目が【勇者皇帝】。どれもステータス補正や効果が強力過ぎて、ひとりで何でもできてしまいそうな特殊能力だった。


 けど、ギンカはそれは嫌だ。せっかくできた友達と楽しく遊びたいから、過剰な強さはいらない。

 贅沢な悩みって言われるかもしれないけど、友達と一緒に遊ぶことがギンカにとって一番欲しいもので、ずっと手に入らなかったものだ。


 転生で手に入れた特殊能力はキャンセルして、ヴァンパイアを獲得した蒼奈に会いに行き、その後で1年の3人に見守ってもらいながら手に入れた普通の特殊能力が剛力晩成だった。すごくうれしかった。

 それなのに、また何やら特殊能力が押し寄せてきた。なんで?


『最近は、あんまり発生してなかったよね?』


「うん。野球もテラパも思ったより普通だった」


『茜にもじゃんけん普通に負けてるよね?』


「うん、初めて3連敗した! 嬉しかったけど顔に出さないの大変だった!」


『蒼奈にも落ちゲー連敗だよね?』


「そう! 蒼奈は1年で一番強い!」


『茶子にもオセロ完敗だよね?」


「オセロでパスがあるって知らなかった!」


『じゃあ、あの子たちは銀華の運に負けないレベルですごいんじゃないかな?』


「そうかな?」


『一緒に遊んだゲームで、銀華が負けたり運が悪かったりしたなら、多分あの子たちが銀華の運の良さを普通にしてくれてるんだよ』


「そうなのかな?」


『そう思うよ。銀華は高校前、気合入れて友達作るって言ってたでしょ? ギンカからギンガになるんでしょ?』


「うん」


『それなら、せっかくできた友達を信じないとね』


「うん! ありがとう、黄金音ちゃん!」


 シーポンを切る。……顔を洗ってこよう。

 アチーブメントはシープの称号なので、ゲーム内のプレイヤーに何か影響を及ぼすことはありません。称号はゲーム内のシステムなので、ゲームに影響します。

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