表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あちーぶ!  作者: キル
80/388

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』10

~~~アカネ~~~


『システム:スキル【猫五感】を取得しました』


 母猫に額、背中、手足をぺろぺろ舐めてもらい、のんびりと過ごす。

 あれから新たなスキルを取得。猫の五感を使いこなすための技術を覚えた。どんな訓練で覚えたかというと、ただ寝ていただけ。正確には、耳を駆使しながら周囲の情報に注意を払って寝ることだった。

 母猫に抱き着かれてそのまま寝たら、毎回何度も耳を舐められた。どうしたのかと思ったら、警戒することなく無防備に寝ていたことに気が付いた。野良猫は寝るときに周囲の音に注意をすることは知ってたけれど、私はまだ意識的にやらないとできなかった。


 このスキルは、単純に聴力や嗅覚だけではなく、歩いたり走ったりの体幹も強化されているようで、取得したことで猫らしい動きが容易になった。猫っぽい動きが出来ていると思ったけれど、本物の猫からしたら下手な歩き方だったんだろうね。それは確かに、母猫が心配もするよ。


 整え終わったのか、母猫が舐めるのをやめて横になり寝ている。そんな母猫の手の中から外に出て立ち上がる。

 意識して匂いを嗅ぐと周辺の情報がわかる。わかるといっても、レベルも低いから数メートルくらいだけど、背中側の目に見えない樹木や雑草がどの方向にあるかもイメージができる。スキルを覚えたおかげで、猫の状態の嗅覚はかなり性能が良くなった。

 聴覚も優秀で、音を聞き分けるだけじゃなく距離もイメージができるため、匂いと音でおおよその場所が特定できる。


 その嗅覚と聴覚を集中すると、虫だと思われる生き物を発見。そちらを見ると、緑色のバッタがいた。

 【猫潜伏】を使って、バッタに気づかれないように距離を詰める。動きそうになる尻尾をなんとかなだめて、音が出ないように潜む。


 バッ!! 一気に距離を詰めて、【猫格闘】で攻撃! 手に掠ったけれど、するりとバッタが逃げて飛び跳ねた! 左手で叩く! も一度叩く! 全部逃げられた!

 体の向きを変えてもう一度ジャンプ! 居ない! 左右を見る……逃げられた。


 野生の猫の厳しさの一端を知った感じだ。がんばって練習しなきゃ立派な猫になれないなー。

 周辺に大きな虫が居ないのを確認して、母猫の所へ戻る。母猫に近寄ると目を閉じたまま手を使って引き寄せられ抱え込まれた。そのまま目をつむって、猫五感のレベル上げのために耳を警戒態勢にして眠る。この猫五感はレベルを上げておいて損はない。


 周囲の音を聞きつつ、母猫の体温で温まりながら寝ていると、急に母猫が立ち上がった。

 目を開けて見上げると、急に首を咥えられ、走って移動させられた。草木の間をかなりの速度で縫うように走り抜け、斜面のある岩場にたどり着くと、母猫は少し駆け上り、窪みの中に私を入れて、近くの葉っぱで穴を埋めた。


 積み重なる葉っぱからなんとか顔を出して外を見ると、既に母猫は居ない。猫五感で出来るだけ遠くを聞こうとすると、何やら音が聞こえる。

 出て行って何ができるかはわからないけれど、とにかく外に出て状況の把握だ。体全体を何とか外に出すことができたので、子猫から人間に戻る。音は聞こえなくなったけれど、さっきまで聞こえた方向へ向かって走り出す。今はまだこっちのが足が速い。


 目に見えるのは、背の低い人型の魔物だ。顔は鼻が尖った動物っぽい顔だけれど、体毛がない。足が短い代わりに、腕がかなり大きくて太い筋肉質の腕をしている。何か持っているわけではないが、あの腕で攻撃するだけでかなりの威力だろう。

 その数が、ざっと見ただけで10体以上は居る。手前に見える数だけでそれだから、奥にはもっといるかもしれない。

 さすがにこれは相手にできる数じゃない。魔物の移動速度はさほど速くなさそうだけれど、倒すのは無理だろう。


 その魔物は、私には気が付かないようで、一方向に向かって全員が進んでいる。母猫が誘導しているのかも? スピードは母猫が圧倒しているから捕まることはないだろうけれど、何か手助けできることはないかな。


 魔物の視界に入らないように大きく迂回をする。湖沿いを通過して魔物の進行方向の先へと進む。

 現在魔物が居る位置を確認すると、私と母猫がさっきまで寝ていた場所に近い位置に集まって居る。集団全体が移動を止めて、そこで停止している。なんでだろ?


 よく見ると、鼻を動かしているな……匂いで相手を確認している? さっきまで私たちが居た場所だから、その残り香を探しているのかな。でも、それだと私が見つからない理由がよくわからない。視力が良くないにしても、嗅覚があればこっちはわかるんじゃないかな?


 ……猫五感と一緒の仕組み? 嗅覚の有効範囲があって、範囲内なら詳細がわかるけれど、それ以外だと極端にわからなくなるとか? それなら、鼻を頼りにしている様子なのに、私が近い距離に居てもあの場でとどまっている理由にもなる。


 後ろを見る。木が沢山あるけど、しばらくは平らな道が続いているから、走ることは可能だ。もう一度魔物を見るが、鼻だけ長い禿げ頭なので耳が発達しているようには見えない。物音だけで延々と追いかけられるような能力は無いと信じたい。

 距離を取って、遠くなりすぎないような位置取りをする。ここから叫べば気を引けるかもしれない。


 そう思って準備すると、魔物の場所が騒がしい。目を凝らすと、母猫が先に魔物の気を引くために向かって行って攻撃をしている! マズい!


「ニャーーーーーーーー!!!」


 あわてて思い切り叫んだ! 魔物の方を見ると、こっちに気が付いたようでかなりの数が走ってこっちにやってくる。


 私も後ろを見ながら、再度「ニャー!」と叫び、なんとか相手の気を引くことに成功。10体以上は引っ張ってる。相手の走る速度はあまり速くないので、追いつかれることはないけれど、気になることがあるとしたら体力かな。

 そう思っていたら、魔物が手を地面に着いて4つ足で走り出した! やばい、速い!


 慌てて全力で走る! 幸いにも地面は走りやすいから転倒することなく走り続けられる。ちらりと後ろを見ると、距離がかなり狭まっている。もうちょっとしたら追いつかれそうだ。


「ニャアァアアアァアア!!!」


 追いつかれて倒される前に、少しでも魔物を母猫から引き離して距離を取る! 気合をいれて叫び全力ダッシュ! 木が連なった部分を抜けて、ちょっとした平地に飛び出した。まだいけるか!?


 バガッ!!


 追いかけてきた魔物の先頭に居た者が体当たりでぶつかって来たので、そのままバランスを崩した。

 そのバランスを崩した隙に、後からきた魔物が体にまとわりつき、さらにその奥からも魔物が迫ってくる。


 ここまでか! 改めて魔物の数を見る……距離はバラバラだけど、20体近くいる。よし、十分に母猫の負担は減らせた! 


 最初に体にくっついている魔物の頭を左右から掌底を当てる。ひるんだすきに蹴って距離を開け、すぐそばの別の魔物に肘打ちをする。

 右足を、あの太い腕で振りぬかれてバランスを崩しかけるけれど、なんとかこらえてその蹴った魔物の首を掴み地面に叩きつける。


 走って突撃してきた魔物に対して、左腕で防御をし、そのまま左腕を外に振り回してその魔物を地面に転がす。

 追加で突撃してきた魔物の頭突きをもろにお腹に受けて転がる。


「[ヒール]」


 ダメージを回復しつつ、横に転がる。そのまま、さっき左に転がした魔物を持ち上げ、さらに追加で突撃してくる魔物に対して盾のように使い、お互いをぶつけ合う。


 とはいえ、生き物を盾に使うのは難しい。小型の生き物とはいえ重いので、自由に扱えない。他に盾になりそうなもの――ストレージから木の板を取り出す。まだこっちのが軽くて丈夫だ!


 とはいえ、盾スキルも無いので気休めにしかならない。板を持った左手を振ると、そっちに居る魔物が怯むくらいで、相手の戦意は失われていない。


 一度に攻撃してくる相手は多くないものの、さすがに周囲を囲まれた。もう逃げ場がない。

 覚悟を決めて、魔物たちを見て一気に殴り掛かる!

 もう少し茜が猫の体を使いこなせたのなら、猫の方が走る速度は速くなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ