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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』04

「[ストレージ]」


 拾い上げた板や彫り物を全部ストレージに収納する。綺麗な板も汚れた板も同じスペースに収納できたのは不思議だった。製品としては同じ分類なのかな?


 見つけた鳥の足跡周辺で隠れられそうな場所を探し、【子猫化】を使用する。白黒ハチワレ柄の猫に変身。

 体の大きさは生後2か月と3か月の間?。子猫過ぎないけど大きくない感じ。ただ、目の色はキトンブルーなので、それで考えると生後2か月くらい。ゲームだから現実の年齢や大きさなどは違っていそう。

 消費MPが100必要なので、頻繁に猫化は出来ないけれど、1回変身すれば持続のためのMP消費をしないので、とても助かる。

 

名前:アカネ 種族:猫 年齢:0(15) 性別:女

レベル:5 職業:野良(治癒士) 状態:正常・子猫


HP:50/50

MP:15/95


筋力:3

体力:3

耐久:2

敏捷:8

器用:4

精神:8

知力:9

魅力:15

感知:15


 上昇したステータスもあるけど、おおよそ下がってる。でも、この状態で本格的に戦闘をするわけじゃないから問題ない。


 この能力最大のメリットは、夢の猫生活が送れることだから戦闘なんて出来なくていいのだ。猫最高。

 2番目のメリットとしては、猫の好感度が高くなること。猫の集会に入ってもよそ者が入ってきたと思われるだけで、解散にはならない。なお、好感度上昇は犬とか他の動物にも適用されている。

 3番目のメリットは、小さくなれること。どこにでも隠れられて非常にばれにくいため、こっそり調べるのにすごく便利。


 あとは、鳥がいつやってくるかわからないので、近くの茂みに隠れながら待ち構える。


 待っている間は暇だけれど、やることも多い。

 まず寝る方法を色々試さなければならない。とりあえずは丸くなる、横に伸びる、へそ天を試すことにした。

 ベータの時も試したけど、MP100も消費する能力は冒険前には使えず、ログアウト前の何もないタイミングで使うしか無かったので、ゆったりと違いを確かめる暇はなかった。猫から戻るときはMPの消費が無いから助かるけどね。


 最初は猫のスタンダードな寝方である、丸くなる方法から極めていこう。手を畳み足を顔の付近によせて、尻尾を外回りで顔付近まで持ってくる。目は閉じても耳は警戒するように周辺の音を聞くようにする。

 このとき手足の肉球は、野良の場合すぐに走りだせるように地面に接地しなくてはいけない。


 うん。これだ。子どもの頃はベッドの上で頑張って丸くなって寝ていたけれど、骨格が猫じゃないので目が覚めたら丸まった格好じゃなくなってた。猫の体だと無理なく自然に体を丸めることができるので、これなら目が覚めても体が丸まったままに違いない。

 手にあごを乗せる感覚も独特だ。人間がこの恰好をすると首が痛いから長時間できないんだよね。


 次はそのまま体を伸ばし、体を横に倒して手足を伸ばす。これも寝やすい。背中と手足が自然に丸く三日月のような体勢になる。手を腕枕にするのも良い。猫の集会で寛いで寝ている猫のイメージがある。


 最後はへそ天。仰向けになって寝転がるだけだ。腕は横にできるけど、足は骨格の関係上少し曲がったままになる。それでも体全体が楽な姿勢になってこれも良い。やっぱり普段寝ている恰好だから、違和感は一番ない。


 うん。猫は素晴らしい。のんびり眠りながら鼻をぴくぴくさせると、ちょっと嗅いだことのない匂いがした。目を開けると、目の前には巨大なウサギさんの顔が……。

 一瞬体がビクッとして硬直する。大きすぎてかわいいというよりちょっとだけ怖い。ウサギさんは、私に鼻を近づけてピスピスと匂いを嗅いでいる。

 急に動くと敵対行動になっちゃうかな? とりあえず嗅がれるままに過ごす。目が合った……お腹を鼻でぐりぐりしてくる。大丈夫そうかな?


 ゆっくり起き上がって、ウサギさんを見る。知ってるウサギさんと違うな。顔と体、前足はウサギさんのままで、長い足は半ばから鳥の足に代わっている。

 毛の色はほとんどが真っ白だけれど、顔の一部が茶色の模様になっていて可愛い。

 手を伸ばして、ウサギさんの顔に触れたけれど、逃げられる様子はない。


 ふわっふわだ! 両手でぎゅうぎゅうと押しても、ふわふわした感触で気持ちいい。


 むにむにむに……。


 いや! そうじゃなくて!

 顔が近くにあるうちに、当初予定した島からの脱出計画を発動! がんばってウサギさんの顔にしがみついて登ってみる。

 ちょっと巨体すぎる……爪を立てるのは怒られないかな? 色々試行錯誤していると、ウサギさんがしゃがんでくれた! 乗せてくれるみたいなので、遠慮なく背中に乗る。ここは首のあたりかな? 背中に乗って気が付いたけれど、ここも一部が茶色い毛の色になっている。


 背中に乗ったらウサギさんは立ち上がり、近くの木に近寄って実をいくつか食べた。それから、海岸に視線を向けて歩きはじめ、早歩きになり、スピードを上げて走り出す。

 耳だと思ってたものが開いて翼となり、3回強く羽ばたいて空へ向けて飛んだ!


『システム:アチーブメント【飛行生物に乗って空を飛ぶ】を獲得しました』


 耳の翼は最初に飛び立つ瞬間は強く羽ばたいていたけれど、今ではゆっくり羽ばたいている。ウサギさんの首にしっかりつかまりつつ後ろを見ると、さっきの島がもうかなり真下に見えた。ここから周辺を見ると、海ばかりで陸地が全く見えない。泳いで渡るのは無謀だったかも。


 しばらく風を受けながら空の旅を続けていると、陸地が見えてきた。街らしき影はわからないけれど、離れたところに畑っぽい平地が見えるから、あのあたりに家があるのかも。

 ウサギさんは、当然畑の方には向かわず、森林の方へと飛んでいく。海岸を越え、草原を越え、森林を越え、また現れる草原を越えて森林の中にある湖のそばに降り立った。


 どうするのかと思ったけど、ウサギさんが翼を私に押し付けて降りるように促してきた。そのまま押されるように地上へ降りると、ウサギさんはそのまま走って飛んで行った。


 ……えっと?


 ぽつんとひとりで湖の付近に残されて、どうすれば良いか考えていたら、付近の草むらからガサゴソ音が鳴った。

 そちらを見て警戒態勢を取る。いつでも逃げられるように反対側へ走り出す姿勢をとってそちらを見ると、奥からサイズの大きい動物が現れた。猫科だ!


 サイズは、ヒョウくらいはあると思う。猛獣の中では中くらいのサイズかな? 顔つきはキリッとしていて、体の毛の色が全身真っ黒だ。――いや、白もある? 瞬きして見ると、私と同じハチワレだ。森が暗かったから真っ黒に見えたのかな。


 ……同じ種族に思われたのかもしれない。親切なウサギさんだ。


 それはそれとして、ウサギさんからしたら同じ種族に見えそうだけれど、実際は猫と猛獣なので別種族。果たして目の前のハチワレさんはどんな対応をしてくれるのか。


 のそりと近寄ってくると、そのまま鼻と鼻を近づけて匂いを嗅いできた。クンクンしてる。

 そのまま私の後ろに回って……知ってる、お尻の匂いを嗅ぐやつだ。恥ずかしいけれど、猫同士なら当たり前の行動なので、尻尾をあげる。確か、立場が上の猫が先に匂いを嗅ぐルールだ。


 ハチワレさんが匂いを嗅ぐ。猫だけど猫じゃないので妙にドキドキする。……もう良いのかな? 次は私の番だよね? ハチワレさんの後ろに向かってお尻に近寄る。

 尻尾が! ハチワレさんの尻尾がパタパタ振るわれている! 思わず尻尾に手をだして追いかける。


 ――はっ! いかん、尻尾に夢中になってしまった。触っても怒られないのは至高である。見知らぬ人に尻尾を触られたら怒る子もよくいるから、出会ってすぐ触っても怒らないのはありがたい。


 改めて匂いを嗅ぐ……うん。猫歴が浅いから、臭い以外よくわからない。ただまぁ、気を許してくれたのは間違いない。


 その後ハチワレさんは、私を抱きかかえ頭をぺろぺろと舐めてくれるので、されるがままに寝転がる。

 非常に気持ちいい。猫としてこのまま過ごしていきたいとは思う。ただ、このままだと蒼奈たちと完全に会えないままなんだよね。それはそれで困る。


 毛づくろいをされながら、空から見た地上の様子を思い出し、進むべき方向をイメージする。途中の平原に出てから、田んぼがある方向へ進むのが近道になりそうだ。


 ハチワレさんの毛づくろいが終わったようなので、立ち上がり、お礼に「ミャー」とひと声かけて平原の方へ進もうとすると、ハチワレさんが私の首を咥えて、そのまま別の場所へと連れていかれた。

 着いた場所は湖沿いの小さな平原。そこで降ろされて、ハチワレさんが少し遠くを見ると一気に走り出し何かを咥えて戻ってきた。ネズミさんだ。


 え、食べるの? と思ったら、ネズミさんを私の前に向けて手で転がす。逃げるネズミさんをさらに追いかけてまた私の前に転がす。


 うーん。子猫へのエサだったらネズミさんを殺して私の前に出すよね。生きたままって……訓練かな?


 ネズミさんを前足で転がそうと試してみる。もちろん、ネズミさんも大人しく触らせてくれないので逃げるけれど、そこはハチワレさんが元に戻す。


 そんなことをしばらく続けていると、だんだんネズミさんを手で押さえることが出来るようになってきた。


『システム:スキル【猫格闘】を取得しました』

『システム:アチーブメント【レアスキルを取得】を獲得しました』


 聞いたことないスキル取得した! 初見なので効果はわからない。ただ、猫用のスキルなのは間違いがない!


 そして、スキルを覚えた瞬間に、なおも逃げ出そうとするネズミさんは、ハチワレさんに遮られることなく逃げていった。


 ハチワレさん、スキル教えてくれたのかな?

 そう思ってハチワレさんを見上げると、また首を咥えられて別のところにプラプラと揺れながら運ばれるのであった。

 猫を操作するゲームは良い。

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