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あちーぶ!  作者: キル
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『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』28

 孤児院で勉強を教えているのだけど、これがなかなか難しい。


 国語はなんとかなる。『おおきなピザ』というタイトルで、お爺さんが巨大な生地を引っ張っても生地が広がらない。お婆さんが手伝っても広がらないってお話だった。知ってる話に似ていて、みんなで協力する大切さがわかる良い話だった。


 算数は問題なし。例文が全部ピザ関係であること以外は、現実と同じだった。


 社会は厳しい。そもそも歴史がわからないし、地理もこの街の一部しか知らない。産業については、ピザが中心だったのでなんとか伝えられた。コルニチョーネ化現象は子どもたちの教科書に載ってなかったので、もう少し高学年の勉強なんだろう。


 理科も大変だった。動物は殆どが地上に住む幻の動物で、植物はピザに関するものが中心だった。浮遊都市は東西南北が毎日違うため、日が昇る方向は実体験ではわからなさそうだ。詳しいことは論理的思考力が付いてからだとか。

 そういえば、元素のニホニウムがワフウムに変わってたのを発見して茶子と盛り上がった。ピザっぽく変更されてないのが逆に面白い。


 しばらく勉強をしていると、お昼寝をしていた小さな子たちが起き上がって、こっちに寄ってきた。遊びたいって気持ちと、勉強の邪魔をしてはいけないって気持ちが混ざったみたいで、私と茶子の背中によじ登ったり膝の上に座ったりしてきたけど、無理にどこかへ引っ張っていく様子は無い。

 ただ、1時間くらいのお手伝いの予定だったから、そろそろ帰る時間になってしまう。


[アカネ]もう少し居たいんだけどね。

[チャコ]お昼寝メンバーが起きちゃって離れないよね~。


チャコ:先輩たちは何してるんですか~?

キリ:委員会の方に行ってるんだけど……夕方の店、無しにしてもらっていいかな?

アカネ:はい。こっちもそれだと嬉しいです。

ミカン:お、そっちも進展あったのか?

チャコ:今はないですけど~、孤児院の子たちと交流してて~。

キリ:なるほど。じゃあ、そのままゆっくりしておいで。

アカネ:はーい。


[チャコ]先輩たち忙しそう~。

[アカネ]進展があったっぽいね。


「勉強を見ていただいてありがとうございます。私では教えられないことも多くて」


 夕食の準備をしていた修道女のナキさんが現れた。彼女以外にもあと1名いるのだが、孤児院の管理というより隣にある修道院で周辺の市民との交流が任されているらしい。


 ナキさんは夕食の下準備が終わったようだ。トマトソースと、ピザ生地を作っているようで、今は生地の発酵段階だとか。2時間後にピザを作るらしい。

 ナキさんが作るのは私たちが作っているピザではなく、生地がパンのように分厚いピザパンのようなものらしい。チーズなどの具材を多く使えない代わりに、生地を分厚くしてお腹を満たしているとのこと。


 私がデリバリーで持って行ったピザは、週に1度は孤児院の支援団体から送られるプレゼントだそうだ。


 ナキさんも合流し、子どもたちと楽しく過ごしていると、


『システム:ストーリーミッションが付近にあります』


 と表示され、突然大きな音が鳴り響き、地面が大きく揺れた。


 私と指をくっつけあって遊んでいたコリちゃんを抱き寄せ、地震が収まるのを待つ。しかし、大きな振動はないものの、揺れが収まる気配はなかった。


キリ:アカネ! チャコ! 今どこに居る!?

アカネ:孤児院に居るけど、地震が続いてる!

ミカン:今すぐそこから移動しろ! 30番通りまで急げ!


「チャコ!」


 茶子と視線を交わし、茶子はナキさんの元に向かって説明を始めた。


「みんな! 危ないからここから避難するよ!」


 そう話しかけてみたけど、周りの子の反応は鈍い。


「避難って?」


 避難って言葉がわかってないみたい。私に抱えられたコリちゃんもなんだかよくわかってない顔をしている。いや、言葉じゃなくて考え方かな? おそらく火事だとわかるんだろうけど、地震は浮遊都市に存在しないから避難する行動には含まれていないのだろう。


「揺れて家がつぶれちゃうかもしれないから、安全なところに移動するの!」


 そう聞いて、子ども達はゆっくりとだけど動き出した。何を持っていくのか聞いてきたけど、とにかく急いで外に行こうって誘った。


 ナキさんと、同じく修道女のイロイラさんと共に、幼い子を抱え上げて外に出る。大通りへの移動は、割と距離が近いのでみんなと注意して向かうと、32番通りと33番通りの段差が20センチほどになっていたのが見えた。そこからは、全員が危機感を持ったのか、移動速度が速くなった。


 子ども達の移動速度に合わせつつ、できるだけ急いで段差まで移動する。2歳までの子は私たちがふたりずつ抱えているので、比較的大きな子たちが5歳くらいまでの子を手助けして段差を越えさせていた。

 そこから31番通りと32番通りの段差まで移動するころには、ずれが40センチ近くにもなっている。このままでは本気でやばいのでは?


アカネ:先輩、どうなってるの!?

ミカン:わからん! うちらの組織の上層部も混乱中だ!

チャコ:30番通りは安全なの~?

キリ:わからないけど、少なくとも29と30の道は途切れていない!


 とにかく、30番通りまで行けば最低限の安全は確保が出来る可能性が見えてきた。


「やばいぞ! 走れ!」


「くそ、車では登れないのか!」


「家が燃えてる! 火の手がこっちまで!」


 周辺の人達も危険な状態に気が付いたのか、ドンドン走って避難している。子どもたちのことが見えないのか、ぶつかって子どもを転倒させてしまう。しかし、助けるわけでもなく走って行ってしまう。


「だいじょうぶ~? 立って歩ける~?」


 転んだ子を茶子が気遣っているけれど、茶子の両手にも子どもがいるので、助け起こせない。倒れた子は気丈に起き上がって、がんばって歩いている。


「えらいね、あとすこしがんばろう!」


 みんなで励ましあいつつ、お互いが離れないように固まって進んでいく。

 混乱状態のまま30番通りと31番通りの境界まで到達する。段差が私の腰近くまであるのも問題だけれど、5センチ程度の隙間ができている。もしこの下へ落ちたらただでは済まない。


「子どもか! こっちへ来なさい、引っ張り上げる! おい! そこの人たちも手伝ってくれ!」


 段差の上から、若い男性が声を掛けてきた。離れたところに居る人たちにも声をかけてくれている。

 何人か集まって、子どもを抱え上げ、次々と上へ移動させてくれた。


 私も茶子も引っ張り上げてもらい、全員が30番通りまで避難できた。


「ありがとうございます、助かりました」


 ナキさんが男性にお礼をいい、私や子どもたちもそれに倣ってお礼を言った。


「ここが安全かもわからないから、もっと先へ進んだ方がいい」


 私たちは頭を下げて、さらに先に進んでいく。29番通りを目指す人も沢山居るので、子どもがぶつからないように注意して進む。


 しばらく進んだ後で振り返ると、先ほど助けてくれた男性たちは後から来る人達が段差を上るのを手伝っている。子どもだけではなく、お年寄りにもあの段差は厳しい。

 その姿を見て、なんとも言えない気分になる。


[アカネ]チャコ。プレイヤーの私たちが、ただ避難するってどうなのかな?

[チャコ]そうだね~。なんか違う気がする~。


 子どもたちを守るのは大切なことだ。それでも、私たちに出来ることは他にないのかな?

 考えているうちに、29番通りまで到着し、休憩も兼ねてみんなが立ち止まる。抱えていた子ども2人を下ろして考えに集中する。

 これまでに知った情報を思い出す。いろんな人を助けられる何か、手段とか道具が……。


「……チャコ。無茶苦茶で、現実ではありえないとは思うんだけど、意見聞かせてもらって良いかな?」


「うん、いいよ~。アカネの意見は大抵そうだから~」


「いや、そんなことないでしょ!?」


「アカネが何か思いついたときは、いつも変だよ~?」


「ええ……いや、確かに今から言うのは変だと思うけど……」


 普段からそんな発言してるかなぁ? うーん、自覚は無い。


「話を聞くよ~?」


 そうだった、自分を振り返ってる場合じゃない。


「えっとね……」


 思いついたことを茶子に伝える。聞き終えた茶子は、目を閉じて考える。


「やっぱり、変な発想だよ~」


 そうかぁ。そうじゃないかとは思ったんだ。普通なら無理なはずなんだよね。

 考え込んでいた茶子は、パッと目を開けて私の目を見てくる。


[チャコ]けど、ここはゲームなんだから~、それくらい変なのも通用するかも~?

[アカネ]ほんとに?

[チャコ]アイテムとかの説明書は~、書かれていることはどれだけ理不尽でも意味があるからね~。試してみる価値はあるよ~。


 よし、じゃあ試してみよう! 子どもたちも29番通りまで避難できたし、行動に移すにはいいタイミングだ!


「ナキさん、ちょっとお店に戻りますね!」


「あ、そうですよね。そちらも心配ですよね。おふたりともどうぞ行ってください」


 離れることを嫌がる子どもをなんとか説得し、キックボードを取り出して全力で店へと戻った。

 無事に成功しますように!

 没話。

「そこで犬は言ったんだ、『お腰につけたピザ団子、ひとつ私に分けてください』って。それを聞いたピザ太郎は『私はピザヶ島に行って、焼かずにピザを食べる鬼に焼いたピザを叩きつけに行くんだ。ついてきてくれるか?』と聞いて……」

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