『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』16
ゲームにログイン。昨日は時間を朝まで進めてからログアウトした状態なので、時間は早朝。本来なら、鉄道で移動する時間なんだけれど、ミテラさんが上に移送されるので、見送りに向かった。
医務室には、マードレ・ピッツァの3人が既に集まっていた。ミテラさんも起きているようで、話し声が聞こえる。
「おはようございます」
黄里先輩が挨拶して医務室に入り、続いて私たちも挨拶をして中に入る。
「おはようございます。皆さん、こちらへどうぞ」
マードレ・ピッツァの人たちが場所を開けてくれたので、そちらへ入らせてもらう。ベッドに寝ているミテラさんは、足は当然固めて動かないようになっているけれど、首も動かせないようにカラーで固定されていて、痛々しい。掛布で見えないけれど、体にも包帯を巻いているとか。
「アカネちゃん、チャコちゃん、昨日はありがとうございました。おかげで、これくらいの怪我で済みました」
ミテラさんの手が上がったので、その手を私と茶子が握る。
これくらい、と言うけれど、かなり酷い怪我だ。痛みもあるだろうに、私たちに向けて笑顔で接してくれる。
「首が治れば自由に動けるようなので、上へ戻ったらお礼させてくださいね」
お礼は無くて良いので元気になってほしいと伝え、上に戻ったら必ずお見舞いに行くと約束をした。少し雑談をしたら移送する準備ができたと連絡が入った。
ベッドから移動用の車輪がついたベッド、ストレッチャーに移し替えられて体をベルトで固定して運ばれていく。その後ろへついていき、搭乗するゴンドラまでたどり着くとその場にアエラさんとスインさんも居た。スインさんの左手側には、旅行用と思われる大きなカバンがある。
「スインさんも戻るんですね」
「この腕ではね」
スインさんの右腕も包帯でしっかり巻かれ、首に回した三角巾で腕を吊っている。さすがに仕事は継続できないか。
「改めて、ありがとうございました。特にアカネさんには、あの瞬間に意図が伝わって助かりました」
「まさか、あの場面で目が合うとは思いませんでした」
あれほど命がけな状態で、焦らずに周囲を確認できるなんてすごい。私だったら、自分の体勢を整えることで精一杯だろう。ミテラさんを助け、私に視線を送り、ランヤードでお互いを繋ぐ。ちょっと真似できないレベルだ。
「父からも話があったと思いますが、アカネさん、マーレさん、チャコさんには、後日お礼をさせていただきます」
スインさんは軽く礼をして、ゴンドラに乗り込んだ。ミテラさんも、その後でゴンドラにストレッチャーごと入った。みんなでミテラさんとお別れをした後、ゴンドラの扉が閉まり移動を開始した。
ゆっくり、振動を押さえた走りのゴンドラはそのまま外周方向に向かって進んでいった。だんだんと小さくなっていくゴンドラを見送り、ほとんど見えなくなった頃に、
「それでは、準備をしてから次のデリバリー先へ列車で進みましょう」
というアエラさんの言葉で、みんなが行動を開始した。
護衛艦から運び込む荷物は無いのだが、昨日の騒動で列車も傾きはしないものの振動で揺れたため、道具や食材の一部が散乱していて、それの片づけ作業がある。
掃除道具を使って作業すること20分。人数も居るので比較的早く掃除が完了した。その後は、朝食のためのピザを焼く。その間、アエラさんは運転席で護衛艦側と連絡を取り合い、今から出発することを伝えた。
「移動開始します。20分後に到着予定なので、それぞれ短いですが休憩してください」
アエラさんの言葉に、7人は先頭車両である宿泊車両に集合した。アエラさんは運転しながら、私たちはこの場で朝食のピザを食べる。うん、やっぱり護衛艦内の自動販売機よりこっちのピザの方が遥かにおいしい。
「やっぱり、ピザは焼いた方がいいですね」
メエルさんの言葉に、誰もが頷く。
「アンダーピールの人たちは上の人の生活を守るために、あのピザで頑張ってるんですよね。頭が下がります」
マドラさんはもぐもぐ食べながら、アンダーピールの人たちの苦労を思い起こしている。
「それにしても、ここから見えるあれも全部護衛艦なんですよね」
マーレさんの目線の先には、アンダーピールの底に張り付いているでっぱりだ。おそらく護衛艦がくっついているんだろう。
ミカン:この世界って戦争はあるんかね?
チャコ:浮遊都市同士の戦争かな~?
キリ:地上の土地に縛られないから、外部との戦争ってなさそうだけどね。
アカネ:いざという時は、飛んで逃げればいいんだからね。
チャコ:あの護衛艦、何であるんだろ~?
キリ:どうしてなんでしょうね
「あの護衛艦の役割って、皆さん知ってますか?」
黄里先輩がマードレ・ピッツァの3人に直接聞いた。聞かれた3人は顔を合わせた後、視線がマーレに集まった。
「一番有名なのは、飛行ユニットの補助エンジンとして使われていることかな。このマルゲリータの中央にある飛行ユニットは、単体で30番通りまで余裕を持って航行が可能とされています。けど、当初からそれ以上の建築も視野に入れていたらしく、30番通り以降も建築が出来るように補助エンジンを設置していると本には書いてあったのは読んだことがありますね」
「じゃあ、マーレさんは護衛艦があるって知ってたんですね」
「護衛艦というより、補助エンジンという認識でしたね。切り離せる船の形状ではなく、浮遊都市内部に埋め込んであるものだと思っていました」
「護衛艦がなくなると、墜落するの~?」
「浮遊や回転だけなら問題なかったはずです。素早く移動するのには影響はあるでしょうね」
急いで雨水を集めたり、台風を避けたりすることは難しくなるということかな。護衛艦が生活に必要な機能だというのがわかる。
「後は、その名前の通り護衛艦ですね。他の浮遊都市が友好的かどうかはわからないので、おそらくですが戦力としてあるのではないかと。ただ、これは想像なので正解かどうかはわかりません」
「そういえば、他の浮遊都市の話は聞きませんね」
「宇宙から見たら、この浮遊都市なんて小さな点だからね。他の都市と会うこともないから、交流もないんじゃないかな」
黄里先輩のつぶやきにマドラさんが答える。
実際住んでみると巨大なんだけど、地球全体からしたら確かに小さな点のサイズにしかならないのは確かだよね。そうなると、計画的に会おうとしなければお互いの交流はできないのか。
ミカン:だとすると、あの人たちは軍人ってより整備員って側面が強いんだな。
アカネ:服も作業着っぽいの着てたよね。
チャコ:戦争はなさそうだね~。
キリ:少なくとも、浮上してからは一度も無いように感じたな。
その後、予定通り20分経過後に目的地の座標に到着。ミテラさんが怪我で戻っちゃったけど、これまでと同じようにピザのデリバリーをがんばろう!
[チャコ]少なくとも、戦うために護衛艦を解除したわけじゃなさそうだね~。
[アカネ]先輩の上の人が、考えてることを先輩たちに全部話してたら、だけどね。
護衛艦レベルの飛行ユニットは常に作っています。彼女たちが見ているその他の護衛艦も、すべて完成品なわけではなく、建造中の護衛艦も含まれています。




