『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』17
あれから、何度かログインとログアウトを繰り返し、ついにアンダーピールを一周してデリバリーのお仕事を完遂した。
あれからもう1度、別の護衛艦で宿泊したけれど事件は起きなかった。けれど、少なくとも先輩たちのデリバリー先が護衛艦に偏っているのは確かだった。
最後の移動は、睡眠している間にアエラさんが運転してくれたようで、朝に目が覚めたら、最初に乗り込んだ地点に戻ってきていた。
鉄道から離れ、最初に乗り込んだゴンドラに、バイクと共に乗り込んで久しぶりの上への移動となった。
「太陽だ!」
ゴンドラが上昇しならがらも、そこから見える太陽! アンダーピールでは天井の奥深くで生活していたので、朝の太陽が登った直後と、夕方の沈む直前のように、水平になった一瞬しか光は差し込まなかった。さらにそれすらも、36番通りのパーツや建造している機械に光を阻まれて、陽の光を浴びることは無かった。
「現実だと日傘がほしくなる日差しだよね~」
茶子は太陽を手で遮りながら上を見ている。夏のような暑さではないけれど、雲一つない青空と太陽を久しぶりに浴びると、じりじりと焼かれているような気がした。
茶子と一緒に空を見上げていると、ゴンドラが上の街の高さまでたどり着いて停止した。ゴンドラの扉が開くと、最初の日に別れたメイドさんが待っていた。
「おかえりなさいませ、ご苦労様でした」
背筋がすっと伸びた姿勢から綺麗な礼をするメイドさん。見習いたいくらいに綺麗な動作だなぁ。
メイドさんが、マドラさんたちに小さな封筒を渡す。
「こちら、ミテラさんの入院された病院の地図と病室の詳細です」
あ、それ私も知りたい。ちらちらと封筒を眺めていると、メイドさんがこちらに来て同じ封筒を渡してくれたので、お礼を言って受け取る。
「依頼の料金については、それぞれの店を通じての支払いとなります。これで依頼完了となります、ありがとうございました」
もう一度メイドさんが礼をするので、こちらも礼をした。
『ストーリーミッション:CLEAR!』
長かったけど終わったー! シナリオクリア数を確認してほっと一息つく。
「まだ病院へお見舞いにいける時間帯じゃないね」
封筒から病院の詳細を取り出し、確認する黄里先輩。それからマードレ・ピッツァの3人へと移動して、「お見舞いの予定だけど」と話しかける。
メイドさんはアエラさんと話をして、一度こちらを見て礼をした後で移動した。依頼者側の人が離れたことで、私たちもここから移動してもいい雰囲気になる。
「私たちは午後からお見舞いって決まったよ」
黄里先輩が戻ってきて、お見舞いの予定時間を告げた。病院に何人も行くのは迷惑だろうってことで、バラバラで向かうことにした。マードレ・ピッツァが午前から昼にかけてで、私たちが午後に向かうことにした。
封筒に入っていた紙には、入院期間はあと10日程度らしいので、お見舞いの品も豪華にすることなく、簡単に食べられるお菓子の方が相手も負担に感じないだろうと配慮することにした。
とはいえ、この世界のお菓子ってのがよくわからないから、どこかのお店の人に聞いてみるのが一番手っ取り早そう。4人でどこかの店に行こうと決定したところで、
「ちょっとまってて~、知り合いが居た~」
そう言って、茶子が離れたところに居る人へと駆けていった。距離があるけど、薄黄色い修道服を着たシスターさんが居た。あれ? 私も見覚えがある人だ。
距離があるから何を話してるかわからないけど、親しそうな感じだ。
チャコ:ミッション関係の知り合いで~、私に手伝ってほしいみたいなんだけど~、別行動していいかな~?
キリ:午前中ならいいんじゃないかな?
ミカン:さすがに今朝はピザ焼く気分じゃないしなぁ。
チャコ:はーい。じゃあ、いってくるね~。
キリ:時間になったら病院ロビーで集合ね。
そうして茶子が修道女さんについていった。
「前にあの修道女さんの孤児院にデリバリーしたことあるんですよ」
「アカネちゃんも知ってる人なんだ」
「はい。ミッションの途中で少しお世話になった人なんです。面倒見がよくていい人でした」
ウインカーを知らない私に、丁寧に教えてくれたいい人だった。
少し無言の時間が過ぎ、蜜柑先輩が私を見てくる。
「行ったら? 気になるんでしょ?」
「……はい。じゃあ行ってきますね」
アカネ:チャコ! 私も行くよ!
チャコ:はーい
走って追いかける。さほど離れていなかったので、すぐに追いつくことができた。
「あら、あなたはウインカーの人ですね?」
「はい! その節はお世話になりました!」
ほんの少しの出会いだったのに、覚えててくれたようでうれしい。
「バイクに乗っているのにウインカーを知らないのですから、印象に残ってたのです」
悪い印象だった! でも仕方がない、間違いなく事実なんだから。
「えと、あらためて。チャコと同じピザ店で働いてるアカネです」
「こちらこそ、自己紹介が遅れました、ナキと言います。知ってると思いますが、修道院と孤児院に勤めています」
移動しながら話を聞くと、近くフリーマーケットがあるらしい。そこで販売するための鍋つかみを子どもたちが作っているのだけど、ハサミや針を使っているので怪我の恐れがあるため、大人が付き添って作っているらしい。
鍋つかみを作りたい子どもは沢山いるけど、大人の人数が少ないので参加できる子どもが少ないらしく、私たちが手伝えば子どもの参加者も増やすことができるので手伝ってほしいとのこと。
ご近所の人にもお願いしているようだけど、ひとりでも多く手伝ってほしいそうだ。「ボランティアになってしまいますが」と言われたけど、もちろん茶子も私も了解してお手伝いすることにした。
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『クエストミッション:START!』
『システム:ストーリーミッションが付近にあります』
2歳の女の子、コリちゃんを抱え込み、一緒にハサミを持って布を裁つ。コリちゃんはハサミを手に当ててるだけなんだけど、真剣な表情だ。
「ここきう!」
「うん、ゆっくり切ろうね」
布に緑色のチャコペンで切る線が引いてあり、女の子はその線を指さして切りたい場所を指示するので、それに合わせて一緒に切る。
私の周りには、6歳の男の子エズン君と、8歳の女の子ラータちゃんがいて、その子たちは自分で上手にハサミを使っている。ハサミに関しては危なげなく使っている。この後の針仕事に関しては、女の子はできるって聞いてるけど、男の子はどこまでできるのか。
コリちゃんと一緒に布を1枚切り終わったところで、ラータちゃんが3枚を長方形に切り終わった。今回は子どもが作る鍋つかみなので、手の形をしたものではなく、四角形のシンプルな形状だ。鍋つかみとして使わなくても、鍋敷きにも使えるのが便利そうだ。現実の方でも作ろうかな?
エズン君は少しのズレもないように丁寧に切っているので、時間がかかっている。そのかいあって、既に切ってある1枚は綺麗な長方形だ。
「ラータちゃん、この布の内側に縫い代を残して線を引こうね……そうそう。その布と、この布をそれぞれ向かい合わせに重ねて、内側になる生地の上に乗せて……それで、ここを縫うからマチ針を刺すんだけど……」
ラータちゃんだけではなく、コリちゃんも真剣に話を聞いている。途中でエズン君も参加したけれど、上手くできるかな?
ふたりとも頑張って縫っている。鍋つかみはちょっと縫う場所の布が分厚いので、指ぬきを使ってゆっくり進めている。あらかじめ縫う場所の線を引いたから、大きくぶれることもなく進めている。
「慣れると怪我しやすいから、気を付けてね」
「きおつけてー」
コリちゃんとの作業は中断して、ふたりでエズン君とラータちゃんの応援だ。応援というか、コリちゃんの作業をしながらでは縫う作業を見守ることが出来ないから中断しているんだけどね。コリちゃんに端切れの布を持たせたら満足しているのも助かった。針に興味を持たれても困る。
ラータちゃんが縫い終わり、角を少し切って返し口からひっくり返す。あとは返し口を縫って完成!
「できた!」
鍋つかみを両手に、ラータちゃんが笑顔で持ち上げている。フリーマーケットに出すかどうかは、作った子が判断すればいいことになっているので、このまま自分で使用してもいいらしい。
おめでとうって拍手をしたら、コリちゃんも真似をして拍手していて可愛い。
ラータちゃんはこのまま2つ目を作るって張り切っている。それを見てエズン君もちょっとペースが上がってるので、危ないから慎重に縫うように注意した。
周囲でも何人か完成した子が居るみたいで、喜んでいる声が聞こえる。コリちゃんと一緒にエズン君を見守り、少し遅れてエズン君も完成した。
エズン君は声に出さなかったけど、表情を見たら完成して嬉しそうだ。
『クエストミッション:CLEAR!』
一日中ここでお手伝いしたいけど、お見舞いに行かなければならないから長居ができないのが非常に残念。コリちゃんを抱っこしていると戻りたくなくなる。
それに、気になることが1つある。ここを出る前に確かめておきたい。
修道院とか出していますけど、宗教に関して今は何も考えていません。ゲーム内にある、なんらかの宗教といったふわっとした感じの設定です。他の浮遊都市だとガチガチの宗教都市があるかもしれませんね。




