『プラモワールド統合版』15
リルダインはビーム銃を撃つが、猫ロボットは即座に左前へ避けて正面に向けて走り出す。ビームを撃つために後ろに寄せていたビーム盾メイスで、銃と入れ替えるように突き攻撃を繰り出すが、メイスを前足で押さえて勢いをつけ後ろに飛び退り距離を取る猫ロボット。
リルダインは猫ロボットの後ろの建物をビーム銃で破壊し、後ろへの退路を防ぐ。そこから距離を詰めるように、リルダインはバーニア全力で接近。ビーム盾メイスを、やや遠距離で振るうと、盾部分と持ち手部分が分離。戦車プラモデルの付属品、牽引ロープがその間を繋ぎフレイルの形状となり、猫ロボットの頭上に迫る。
猫ロボットは横回転で逆さまになり、フレイルの盾部分を両手足で受ける。手と足の関節を使い衝撃を吸収。ただし、前足の爪部分は吸収しきれなかったかヒビが入った。
そのまま後ろ足でフレイルをリルダインが居る方向と逆側へ蹴りだすと、フレイルを持っているリルダインはそれにつられて前に引っ張り出されバランスを崩したまま猫ロボットへ強制的に接近してしまう。
猫ロボットは胸の位置にあるミサイルを1発打ち出すが、リルダインはそこから戦車状態に変形。この変形は強制的に足を後ろに向ける変形なので、その勢いでミサイルをやり過ごす。猫ロボットの胸ミサイルは誘導式だが、ビルに挟まれた都市部では戻ることもできずカーブして付近のビルに激突して爆発が起きる。
爆発したビルの構造物の落下を回避するために、リルダインが飛行機形態に変形して脱出を計る。そのリルダインに向かって、猫ロボットの首輪にある車のウインチに巻いた金属ロープを発射。足のバーニア部分に引っ掛かり、リルダインは脱出に一瞬時間が取られ、頭上から落下する構造物から避けられずに猫ロボットと共に瓦礫に埋もれてしまう。
リルダインはロボット型に変形し、無理やり瓦礫を除き脱出。足のロープを切って飛び上がり、周辺のビルをビーム銃とメイスで粉砕して猫ロボットが居る場所へ落下させる。
高く積もった瓦礫から、猫ロボットのエアバッグがはじけ飛び、瓦礫から脱出。リルダインと猫ロボットは距離を取って対峙する。猫ロボットは前足の一部、リルダインは翼の一部が損傷し、両者とも全体に細かい傷が入りPBCの防御力と出力が2割低下した。
その猫ロボットの胴体部分が光りだす。ゴールドモードのチャージが溜まってきている。
それを見て、リルダインは即座に飛行機形態になり脱出。すぐ真上の疑似太陽の円柱を越え、それを遮蔽物にしてこの場から逃走。
「さっすが。一瞬で判断して行動しちゃうとこがアオナだよね」
飛び去った蒼奈の方向を見て、蒼奈の判断力の速さに舌を巻く。追いかけてもいいが、あと数秒チャージし続ければゴールドモード発動だ。そこから地上を全力ダッシュすれば位置も掴めるだろう。
逃走した蒼奈は、飛行しながらゴールドモードについて考えていた。PBCが理由なのはわかっている。それがどう作用して発動するかだ。
茜のPBCの場所は?
今までの戦闘と、今回の戦闘から判断するに前足は脆い。そこにはPBCはないだろう。かといって、PBCが無ければ腕も動かせないから、両前足の付け根の中央に1つ設置して両腕を動かしていそうだ。
他には、マズルビームが高威力だから、顔か喉あたりにはあるはず。
後ろ足は強力なのでそれぞれに1個使っていそうだ。足先から付け根のどこかで片足をコントロールするPBCがある。猫好きの茜なら、猫基準で考えるだろう。猫のどこを強化すれば脚力が得られるか……股関節から太腿近辺か。
残り二つは、おそらく胴体。前の戦いで胴体を貫かれたけれど、相手が押し込んでも切られなかったことから、丁度PBCのある位置だったのではないか。となると、猫の動きから考えると……背中とお腹だろう。縦に貫いたビームが、ちょうど上下のPBCに阻まれて押せなかったに違いない。
『アオナに詳細が言えなくてかなり辛いんだけど、えっと、言える範囲内では、レベッカさんが私のムーン君を持ち上げて調べたあの行為は意味があったんだと、今ならわかる』
茜のくれたヒント。制約がある中で、言わなくても良いヒントをくれた。できれば、その思いに応えたい。
センサーが鳴る。茜が来た。
「考える時間もくれないとか、さすがアカネ。私の弱点をよく知ってる!」
茜から逃げて疑似太陽に到達した蒼奈は、茜から見えない位置で疑似太陽を沿うように飛んでいた。この位置が地上から最も遠いからだ。
ただし、それは都市部や山間部などの地上を基準にした話である。
このコロニーは、コロニー完全再現ではなく、コロニーの一部を輪切りにして残りは映像で遥か遠くまでコロニーを表現している。
つまり、レベッカが宇宙の壁を歩いたように、このステージの端までいけば輪切りにした境目部分である空中が壁になっているのだ。
蒼奈が進む方向の先には、空中の壁を駆け上がる猫ロボットが居る。宇宙や空中を走れる猫ロボットとはいえ、足場の有無は機動力が違う。全身を金色に輝かせながら爆速で駆け上がる姿は脅威だ。
ステージ端の壁は破壊不能オブジェクトのため、これまでのように地形を利用することはできない。逃げたところで、あの状態の猫ロボットからは逃げ切れない。
被弾前提で勝負しなければ切り抜けられないと、覚悟を決めて向かった。
「この速度なら、太陽の付け根でアオナと合流かな」
蒼奈が疑似太陽に到達したころ、猫ロボットはゴールドモードになって、蒼奈の追撃を開始した。少し走ってみたが、飛んでいるリルダインの姿が影も形も見当たらなかった。
そこで思い出したのは『閃光』。光に紛れて完全に隠れてしまうあれは、空にある疑似太陽でも似たようなことが起きているんじゃないだろうか? そう思い疑似太陽を見ると、わずかな影が遠くに向かって移動しているのが見えた。
空中を飛び上がることもできるが、まずは速度の出る地上からあの影が進む方に向かうことを優先した。
走ってる最中に茜が思い出したのは、レベッカがステージの端を移動していた光景。同じ仕組みだとしたら空中を走って登れるのではないかと思い至る。疑似太陽の影を追い越して先へ進み、ステージの壁に到着。前足をかけてみるが、爪が引っ掛かる様子はない。それでも踏み込むことが出来そうなので、壁伝いに登った。
「さすがに、コロニーそのものじゃなさそう」
中央へ向かうにつれて、浮力を感じるようになった。一方で、周辺のコロニーが回転している様子はない。遠心力で重力を発生させるスペースコロニーの再現ではなく、プラモバトル用に疑似的な重力を発生させて、中央に向かうほど重力をなくしているだけの疑似スペースコロニーのようだ。
おかげで、高速回転している地表に落下する事態にならずに済みそうだ。運営もそのようなバトルの決着は望んでいないのだろう。
目視で蒼奈の位置を捕える。飛行形態で飛んできているが、直前で何をするかわからないから走りつつも警戒をする。
接触直前、飛行機の翼に狙いをつけて飛び掛かる。リルダインは上下反転して飛行していたようだが関係ない。リルダインも避ける様子もなく、そのまま猫ロボットに突撃。
猫ロボットは、目標の翼に噛みつき、そのまま片翼を引きちぎる。
リルダインは、上下反転したおかげで、ビーム銃が猫ロボットの腹部を狙える位置になる。その銃口に接続してあるビーム盾メイスを射出。
ビーム兵器よりは遅いものの、素早い速度で発射されたメイスが猫ロボットの片足を貫通。膝から下を全て吹っ飛ばす。
そのままロボット形態に変形し、ビーム銃に接続したビーム盾メイスの持ち手のビーム剣の柄を、ボルトアクションライフルのように動かすと、銃とビーム盾メイスが繋がれた鎖が引き戻されて射撃状態に戻った。
再度攻撃を試みる蒼奈だが、マズルビームがこちらに向いているため逃走を選択。ゴールドモードのマズルビームは危険だ。
翼がやられたため飛ぶのは安定性に欠けるので、出来るだけ猫ロボットの正面に立たないように足のホバーで側面を回り込むように回避する。
そして放たれるマズルビーム。その威力は宇宙要塞を切断したレベッカの威力に匹敵する。ただし、光の太さは猫ロボットの身長程度だ。
回避するリルダインを、マズルビームを放ちながら首の動きだけで追撃する猫ロボット。
「理屈としては近づいた方がいいんだけど!」
円を描いて追撃されるのであれば、円の中点から見て外側より内側の方がビームが迫る速度は緩やかだろう。
だからと言って、ビームが飛んでくる方に向かう方が安全だと飛び込んでいくのは、余程の回避技術がある人だろう。さすがにそこまでの操作はできない蒼奈。
そして、現状はもうすぐマズルビームに飲み込まれてしまう。
回避のために向かってくるビームの反対側に行きたいが、ビームの下をくぐるほどの隙間はない。ということは上を越えて向かうしかないが、緩やかに飛び越えさせてくれるとは思えない。
ビーム盾メイスとビーム銃を外す。
「おねがい!」
ビーム銃をバーニア設定に変更し、逃げている側の進行方向へ全力で放出する。その向きは回避のために全力で飛ばしていた足バーニアと正反対だ。結果、銃を持った腕を起点に足バーニアがスリップ。胴体が浮き上がり、その勢いのまま回転して逆さまの体勢でマズルビームの上を通過する。
頭部はマズルビームに巻き込まれ消失したが、そのまま反対側へ逃げ切る。
そこから、一気に距離を詰めてビーム盾メイスをフレイルに変え横から叩きつける。ヒビの入っていた前足を砕いたところで、猫ロボットの足ビームが飛んできて被弾。
お互いにメイスと足ビームで吹っ飛び逆方向へ。
吹っ飛ばされつつもマズルビームをこちらに向けてくるので、顔が完全にリルダインへ向く前にロボット形態の胸にあるフラッシュを発動。猫ロボットはセンサーをやられて方向を見失う。
そのまま両者は、飛ばされた方向の重力に引っ張られ、地上に落下していく。
「耐えきった!」
蒼奈は落下しながら、拳を握りつつ安堵する。おそらく疑似太陽の飛行ルートからそのまま逃げたら、あのマズルビームで撃ち落とされていただろう。鏡越しにビームを命中させる茜の射撃能力を過小評価してはいけない。
そして、今の攻防で猫ロボットの足にあるPBCの位置が確定した。足股関節の付け根だ。PBCがゴールドモードに重要な要素なら、PBCごと足を吹っ飛ばした場合、ゴールドモードは終わっているだろう。それが終わってない以上、まだPBCは健在だ。
あとは……あのときのレベッカさんの行動。
『親指と人差し指で何かしていた』
何をした?
プラモデルを手に取って、掴むでもなく親指と人差し指で……測った? 長さを?
何の長さだ……PBCとPBCの距離だ。
どことどこのPBCを測った?
ゴールドモードは、最初に腹部から発動する。いや……腹部よりやや後ろ?
「正四面体か!!」
システム:ゴールドモードの発動条件を取得しました。条件を知らない相手に発動方法を伝えることは制限されます。詳細を『アオナ』のシープに送付します。
詳細を確認する。全てを読む暇はないが……。
「僕のリルダインのPBCは、頭と腕を動かすための胴体の上部、可変機構のための胴体の下部、足バーニアのため膝に2つ。飛行形態で手足を出したあの状態で、足を固定させれば発動可能か!?」
胴体が寝ている状態で、足を調節して広げれば正四面体になる。機動力は下がるが、すでに翼がやられているから今更だ。膝を固定してバーニア移動で地上を移動するなら支障はない。
落下しながら、膝の位置を調整する。微調整が難しい。足幅、膝の角度、胴体をどれだけ前傾にすればいいのか。全てこの場で調節しなければならない。
地上に激突する直前、バーニアを使い向きを変え地上に立つが、移動することもなく微調整を続ける。
一方で茜は、地上に降り立った後でフラッシュの影響がないか確認しつつ、チャージを押しながら進む。なんとか左手と右足は残ってくれた。進みにくいが戦闘不能ではない。
まだセンサーに表示はないが、蒼奈の落ちた方向だけはわかっている。頭部が壊れたリルダインはセンサー範囲が低いだろうから、こちらから先制できる可能性が高い。
走って、走って、やがてセンサーに反応があった。落下地点と変わらない。
「なんで? 動けないの? 落下で倒れるとか嘘だよね!」
勝負の終わりがそれでは、あまりにも……。勝負に勝ちたいのであって、大会で勝ちたいのではない。
駆け抜けた先で、蒼奈のリルダインが視界に入る。思わず、口元が緩んで、笑顔と涙目になる。
半分飛行機形態のリルダインが、金色に光っている!!
「やっぱり、アオナは天才だよ!! 私のように偶然じゃない。考えて正解までたどり着いたんだ!!」
猫ロボットのチャージ完了。ゴールドモード発動。
それを待っていたように、リルダインも地上をホバーで走り出す。
猫ロボットは銀の板を8枚すべて発動。2枚を盾に使い、2本の足で駆け抜ける。
しかし、一瞬でリルダインが右側面へ回り込む。両足のホバーが健在なリルダインの方が機動力は格段に高い。
そのリルダインに真後ろからビームが刺さり、バランスを崩す。
「反射攻撃!? 何回反射すれば逆側の足のビームがこっちに来るんだ」
完全に死角からの攻撃。防御に使っている2枚の銀の板以外は、全て反射攻撃として使われると思って間違いない。
体勢を立て直し、後ろに回る。その移動途中、尻尾をビーム銃の剣モードで切る。煙幕やフラッシュは危険だ。ただでさえ頭部がやられてセンサーの性能が落ちてるのに、さらに低下したらゴールドモードの意味がない。
そして、背中から攻撃! というところで、バトルポッド内がフラッシュのように光に包まれる。
「フラッシュ!? 切ったはずなのに!」
後ろに下がり距離を取る。フラッシュのようにセンサーが不能になったわけではなさそうだ。では今のは?
猫ロボットがリルダイン側に向きを変える。正面に振り向いた瞬間、リルダインに向けて全力で駆け寄り、同時にミサイルを発射して並走する。
「最初の!」
初めて戦った時の攻撃方法だ。あのときの蒼奈は誘導ミサイルと知らなかったから無視してダメージを受けた。しかし、今はミサイル対策のビーム盾メイスがある。ロボット形態ではないため大きく振り回すことはできないが、防御のために正面に突き出すことはできる。
ミサイルとビーム盾メイスが直撃。本体の直撃は免れたので、後は猫ロボットの突撃を回避すればいい。
というところで、またしても光がバトルポッド内を満たす。ただ、今回は見えた。疑似太陽の光を銀の板で反射してこちらに当てていた。
おかげで回避できずに機首を噛みつかれたが、センサーが生きてるため猫ロボットの正確な位置は捕えている。
そして、この次の手はわかる。
「「マズルビーム!」」
撃たれる瞬間、リルダインもビーム銃を撃つ。機首を巻き込んで、マズルビームとリルダインのビーム銃が激突する。
「僕のPBC、6つ目はこの銃に入っている!」
PBCが近くにあれば稼働するのであれば、手を動かすため手にPBCを入れる必要はない。ビーム盾メイスと、ビーム銃に入れたPBCを手に持っておけば、両手の稼働を助けてくれる。
そして、PBCの入ったビーム銃と、PBCが発射口の近くにあるマズルビームなら、威力は同等。
両者の間に、巨大なビームが発生、周辺の地面を削り取る。お互い、ビームの勢いで飛ばされないようにその場で踏ん張る。茜は銀の板に背中を預けて板を地面に突き刺し、蒼奈はビーム盾メイスを地面に突き刺しそれを支えにする。
やがて、ビームが巨大な音を立てて、両者のビームは共に消失。
お互いにゴールドモードが終了する。
ビームがはじけた瞬間、猫ロボットが最後のミサイルを発射、リルダインはビーム盾メイスをかざすが、連続のミサイル被弾によりビーム盾メイスが左腕ごと粉砕。
ミサイルをおとりにした猫ロボットは片足だけで跳躍、上からリルダインを強襲。
リルダインが上に銃口を向けるため人型に変形し、ビーム銃を猫ロボットに向けるが、銀の板がビーム攻撃を防ぐために猫ロボットの正面に集合する。
蒼奈は口元に笑みを浮かべ、銃の引き金を引く。
銀の板を全て粉砕し、PBC内臓の実体ミサイルが猫ロボットを貫通する。
『Battle End!』
『Winner アオナ!』
バトルポッドを降りた二人は、そのままお互い駆け寄り抱き合った




