『プラモワールド統合版』11
『5・4・3・2・1』
カウントダウン画面を、蒼奈が真剣に見つめる。次に戦うのがトキノちゃんにしろ、そうでないにしろ、ここで相手の情報を収集しないとね。
『Battle Begins!』
戦場はサバンナっぽい。動物はおらず、地上は緑と黄色の短い草で覆われている。ところどころで細い木が生えている。
トキノちゃんのロボットは、ずいぶん特徴的だ。
「花? 胴体がみえないけど」
「胴体はあるね。2、3等身くらいのプラモデルが中央にある」
確かに、5つの赤い花びらの中央に、白と黄色の小さなロボットが包み込まれている。花びらが本体の倍以上ある上に、体を覆うようにして畳んで飛んでいるからわからなかった。
『トキノ選手、花びらのつぼみのような体勢で高速飛行! 対するローク選手は冷静に武器を構えている!』
相手は、武士かな? 日本の古い鎧を着ている。赤、緑、黒、金と豪華な見た目だ。遠距離から弓を放ち、トキノちゃんが接近したころには弓をしまい、長い実体剣……刀だね、それを構えて待ち構える。接近したトキノちゃんは、花びらを3枚分離、相手の周辺へ飛ばす。サテラ武器!
「あの大きな花びらを動かすため、5枚全部にPBCが入っていそう。本体は小さいからPBCを1つだけで稼働させてるのかも」
なるほど、小型ロボットにしたのは、それなりに理由があるんだね。小型ロボットは頭が大きく、胴体や手足が小さい。お尻には細長い尻尾があるのでちょっと可愛い。おそらく花びらを本体と尻尾に沿わせるようにして形を整えているのだろう。
3枚の花びらは一斉に攻撃をする。けど、避けたり、ビームをまとった実体刀でビームを弾いたりしてダメージが与えられない。
『ローク選手、ビームを跳ね返した! しかし、減衰したビームではトキノ選手の花弁を貫通することはできない!』
「剣でビーム弾いてる」
「メッキ加工じゃないかな?」
弾いたビームが花びらに当たるけれど、花びらはそれを弾き返す。
「あの花びら、武器、盾、移動となんでも使えるのか」
「PBC内臓なら頑丈だよね」
止まらない集中砲火に、武士ロボットが飛び上がって花びらに乗っかった。そのまま刀を突きさす。さすがにそこまで接近攻撃したら、実体刀が花びらを貫通する。
ただし、刀を突き刺している間に、小型ロボットからさらに2枚分離した花びら、計4枚で集中砲火。刀が貫通した花びら1枚ごと巻き込んで地上へ落下させた。
壊された花びらと一緒に地上に落下した武士が……いない。鎧だけが転がってる。本体は――居た! 忍者っぽい! 忍者はトキノちゃんの小型ロボットに一瞬で駆け寄って、小型の実体剣で攻撃!
『武士の内部から忍者が!! 距離を詰められたトキノ選手ピンチだ!」
実体剣の威力はすさまじかったようで、小型ロボットは真っ二つに壊されてしまった。
トキノちゃん……。
「まだだよ」
小型ロボットを切り捨てて、ゆっくりと姿勢を立ち姿に戻す忍者ロボットに、無数のビームと実体弾が打ち込まれる。
『Battle End!』
『Winner トキノ!』
「うそ、逆転した?」
「逆転というか、そもそもバトルポッドがあの小型ロボットになかったんだと思う。初見では勘違いするよ、あれ」
バトルポッドに与えるダメージは重要。というより、バトルポッドが壊された時点で負ける。
それでも、バトルポッドの位置を探すのは大変だから、全体のダメージ割合による判定で戦う場合がほとんどだ。結果的に、本体中央にバトルポッドを設定する人が多いから、その余剰ダメージでバトルポッドにもダメージを与えて勝つこともある。けれど、PBCが全て分離したプラモデルの場合、それぞれにダメージを与えなければならないから余剰ダメージで勝つのは難しい。
こういった戦いが、本来のバトルポッドの活用方法かもしれない。
トキノちゃんがバトルポッドから降りてくる。こっちにちょっと近寄るけど、さっきほどの近い位置じゃない。寄りづらいのかな?
「おめでとう、強かったね!」
問答無用で、お姉さんは近寄ってお祝いするからね?
「当然」
言葉は素直じゃないけど、口元が笑ってて嬉しそう。
「次は僕と対戦だね、楽しみ」
「勝つから」
「僕だって」
バチバチって程じゃないけど、いい緊張感。
さて、次の試合は、私が勝ったら戦う相手となる人の勝負だ。
ひとりは、さっき少年から私たちをかばってくれた人。もう一人はまったく知らない相手。
「お前は見る必要ないぞ。俺がお前に勝つんだからな」
きた、「女」呼びした少年。カクト君だったかな。胡桃ちゃんやトキノちゃんよりも年下? 背が低いだけかもしれないけど。
「そう? わからないよ、勝負は」
「わかるさ。兄貴が作ったリルダインは完璧だからな!」
兄貴? なるほど。お兄ちゃんがつくったプラモデルで参加か。
「兄貴って、ダッサ」
トキノちゃんが聞こえるようにつぶやいてる。
「なんだと! 馬鹿にしてんのか!」
「自分で作ってこそ、良い操縦ができるんじゃないの?」
「アニメのパイロットだって自分で作らないぞ!」
「メンテナンスしてる主人公は多いようだけど?」
「ただのプログラミングだろ!」
「ストップ、ストーップ! ふたりとも、注目されて試合停止しちゃってるよ?」
ハッとして、ふたりが周りを見ると、試合進行が止まって、次の試合の選手すらふたりに注目しているのに気が付いた。
「他の人が作ったプラモデルを使って戦うのは認められてるんだし、お兄ちゃんのプラモデルで参加も問題ないからね」
「ほれみろ」
カクト君が得意げな表情をしてトキノちゃんをみる。トキノちゃんは無視だ。
「でも、トキノちゃんの気持ちはわかる。自分で作ったプラモデルのが強いって信じられるから。だから、カクト君。君との勝負、お姉ちゃんが勝つよ」
カクト君はむっとした表情をする。トキノちゃんは無表情だけどこっちを見た。
「トキノちゃん、自分で作ったプラモデルが強いってこと、お姉ちゃんが証明するね?」
少しだけこちらをじっと見て、頷いてからそっぽを向くトキノちゃん。
うん。負けられない理由がまた出来た!
突然、拍手が起こった。
「アカネ、ズームされた映像が流れてたよ」
ええぇ、個人同士のプライベートだとは思うけど……ステージの上だとちょっと扱いが違うのかな。
カクト君は少し離れて距離を取った。トキノちゃんの距離は変わらない。
『アカネ選手勝利宣言!! 後の試合が楽しみになってきました!』
うわ、勝利宣言が全体に聞かれた! 恥ずかしい……。
『しかし!! これからの戦いも熱い戦いだ! 全身シルバーの銀の騎士、カム選手と、全身黒い黒の騎士、クレスト選手の対戦だ!』
そのまま次の対戦へと実況が進んでいく。みんなの意識をすぐに切り替えるように誘導してくれて助かった。
『Battle Begins!』
月面ステージ? 空は真っ黒な宇宙で、地面がある。
カクト君に声をかけられたときに、間に入って助けてくれた人は銀騎士だ。銀メッキのプラモデルだよね。お兄さんの積んである倉庫に、似たような光ってるのがあった。
メッキは、ビームに対して強い。でも、全身メッキはセンサーへの隠蔽能力が低く、プラモデルの種類も限定される上に、塗装や改造も難しく良いことばかりじゃない。
黒騎士は、トキノちゃんみたいに体の周囲に配置した5つの筒状バーニアで接近する。バーニア自体は板状のもので接続されているので、分割では無さそう。PBCの節約かな? ただ、それがマントっぽく見えるのがかっこいい。
索敵範囲に入ったのか、黒騎士がマントを開く。マントの内側の左右に各ふたつある筒バーニアを相手に向け、ビーム攻撃をしつつ近寄る。
銀騎士は盾を構え、避ける様子もなくまっすぐ武器をもって突撃。先端が尖った武器、ランスだ。
ビームの真っ只中に入る銀騎士は被弾も何度かするけど、被弾したビームを周囲に弾きつつ、黒騎士にぐんぐん迫っていく。銀メッキはビームに対するノックバックの耐性もあるようで、銀騎士の速度は少ししか下がっていない。
ランスが当たる直前、黒騎士は背中の筒バーニアで上へ逃げる、しかし足にランスがひっかかり片足の足首が壊される。
銀騎士は、持っている盾を相手に向け、盾の内側にあるビームで追撃。黒騎士はマントのバーニア噴射口が黒騎士の周囲に集まりビームを発生。四角い盾状になって相手の攻撃を防ぐ。
「なるほど」
とつぶやくトキノちゃん。あの花びら、同じことできそうだもんね。
しばらく銀と黒の攻防が続いたけれど、決着は黒騎士の筒バーニアから放出される4つのビーム剣によって行動を防がれ、両手に持った2本のビーム剣で切り刻まれた。いくらビームに強いメッキでも、耐久を超えて切られたらビーム剣だとしても耐え切れない。
『Battle End!』
『Winner クレスト!』
うん。黒騎士は強かった。
でも、それはそれとして私が勝負するのは黒騎士じゃない。
カクト君を見ると、プィッと向こうを向いてしまった。ま、しょうがないよね。全力で頑張ろう!
「アオナ、行ってくるね!」
「うん。頑張って」
いつも通り蒼奈の応援を受ける。こっちを見ているトキノちゃんにも、手を握ってグッと片手でファイティングポーズをしたけど、こっちもプィッと目をそらした。かわいい。
青いバトルポッドに入り込む。いつもは転送だけど、この位置で周囲の映像が切り替わりだした。コックピットに乗り込んだ感じがする。これは体験してみないとわからない経験だ。
いつも通り設定。戦闘開始を待つ。ただ、何やら歓声が起こっている。
『アカネ選手の猫耳姿に、会場が騒然としている!』
会場の人にも猫の良さが伝わったのかな。猫はいいぞ!
『Plastic Model Battle!』
『Countdown!』
呼吸を整える。
『5・4・3・2・1』
『Battle Begins!』
山奥のジャングルステージかな。高い山からは滝が流れているのが見える。その下は滝つぼと川で、周囲はうっそうとした森が広がっている。
木があるなら好都合ってことで、周辺の森の中を縫うように走り抜ける。
センサーに反応。上空で飛んでるみたいだね。反応があった瞬間に、出来るだけ身をひそめるられる場所を選びながら移動。おそらく相手にも反応はあったと思うけど、遮蔽物が多いからいまはセンサーに出ていないはず。
こういった場所って、木が折り重なるように生えてるから、地上は夜のように暗いんだよね。ムーン君の背中が黒だからぴったり。そのうえ、猫は細い隙間もスルスル進めるから、ジャングルステージってかなり有利なのかも。
さっき私がセンサーを拾った場所で爆発が起こった。あの一瞬で攻撃したみたいで、判断の速さはすごいね。
木の隙間から空が見えるので、こちらが捉える相手のセンサーも途切れ途切れになるけど、方向はわかるのでそちらへ向かう。旋回したのか、進行方向から真っすぐ戻ってきた。そのまま後ろへ通過していく。……いや、目的地は変えないで行こう。
~~~~~~
「くっそ、どこに居るんだ!」
一度センサーに相手の情報が入ったが、それきりだった。下を見れば木が生えているばかりで、見つかる様子もない。かといって、下に降りたところで見つかるとも思えない。
相手も森の中では移動も碌にできないと判断して、センサーがあった場所を重点的に捜索する。飛行位置を低くして捜索するが、再度センサーには引っ掛からない。
何度目の旋回だろうか。方向を変えるために機体を地上に対して垂直に傾けて曲がっている最中に、地上からビームが放たれた。
「今かよ!」
姿勢が悪く、飛行状態では回避ができない。無理やり回避するために、ロボットに変形すると、飛行ルートをビームが通過した。
「あそこだな!」
被弾は免れたので、反撃に切り替える。ビームが飛んできた方向を確認する。今はセンサーに反応はないが、今なら近寄れば確実に捉えられる。
けん制のビームを撃ちながら地上に接近。センサーに反応! 正面!
猫ロボットの向きが側面なのを確認。木々を縫い距離を詰めビーム剣を取り出し、そのまま突撃する。
「隙あり!」
剣が届く直前、機体がガクンと何かに引っ掛かる。
「なんだ? 障害物なんてなかったぞ!」
胴体部分を確認すると、ロープのような何かが、木の間に引っ張ってあり、それに引っ掛かったようだ。
細いロープなので、ビーム剣で容易に切断できた。だが、切断すると同時に、片足が付け根の関節部分で吹っ飛んだ。
「実体兵器か! でも、足が無くても!」
通常のリルダインと違い、腰部分のパーツが広く作られている。腰の内側にあるバーニアが噴出し、姿勢を制御する。センサーで相手を確認。少し距離はあるが、一気に詰め寄れる距離だ。ただ、また罠があるとも限らない。
そのため、サテラ兵器を飛ばすことにする。とはいえ、一度に操作できるのは2個までだ。それ以上だと動かすことに思考が取られて、本体の動きがおろそかになる。
相手の側面から攻撃するようにサテラ兵器を誘導するが、移動させてる最中に猫ロボットが正面から突撃をしてきた。
盾を前にかざし、完全に防御姿勢を取った後でサテラ兵器による攻撃を行う。サテラ兵器の威力は低いが、相手の突撃速度を押さえればビーム剣で反撃可能だ。
センサーの反応が上、その後に後方へと移動する。頭上を飛んで超えたようだ。通常のロボットではやらない、猫ロボット特有の動作である。
「後ろの対策もあるんだよ!」
背中のバックパックが開き、ミラーボールを半分に割ったような半球が現れる。その半球からビームが周囲一帯に大きく拡散する。威力は低くても、ビームの光と圧力によって相手を近寄らせないようにする。そしてその間に振り向けばいいだけだ。
腰のバーニアを調整し、拡散ビームを発動させながら後ろへと振り向く。しかし、そこに猫ロボットはいなかった。センサーにも引っ掛からない。
「くそ! 逃げられた!」
少し前に時間を戻す。
茜は、相手の頭上を越えて真後ろに降り立った。そのまま攻撃する予定だったが、拡散ビームによって突撃を阻まれた。距離を取ればダメージを受けない代わりに、現状は近寄ることもできない。
一瞬、撤退も頭をよぎったが、センサーを見て気が付く。相手の表示がない。
「……拡散ビーム、強く放出しすぎて『閃光』と同じ効果になってる?」
ビームによる90%の遮蔽。それが今、目の前で行われている。
拡散ビームが途切れる様子もない。その上で、相手の体が旋回しているので、その向きに合わせて移動をする。
「一瞬だけ拡散ビームを使う装置として、お兄ちゃんは積んだんじゃないかな」
拡散ビームが途切れるのを、姿勢を低くしつつ、木陰に潜みながら待つ。少しでも長く相手のセンサーに反応しないためだ。
光が薄まった瞬間を狙って飛び出す。相手の盾を持つ側の肩に噛みつく。しかし、いつもと違いかなり頑丈だ。合わせ目消し、ヤスリ掛け、下地塗り、塗装、仕上げと、丁寧な仕上げと何層も塗った表面は、これまでの相手とは違った強度だった。レベッカや萌黄と模擬戦をしたとき以上の硬度だ。
その時のアドバイスで、猫の牙や爪を尖らせるように言われてとがらせたが、思ったより噛みつきの効果が出ない。
それでも、口の中にはビームが入れてあるので思い切り噴射するが、多少の損傷で終わった。
「さすが兄貴のプラモ。ガラスコートは伊達じゃない!」
噛みつかれても、ビームを撃たれても軽傷損傷で済んでいる。
プラモデルの仕上げに、プラモデル用スプレーではなく車用のガラスコートを使ったため、他のプラモデル素材とは違った強度を獲得している。ガラスコートは表面処理に使っただけなので、コートされていない足の関節の付け根を壊されたのは誤算だった。
それでも、この堅牢さで今までどれだけ被弾しても勝ち抜いてこれた。腕が動かしにくくなったのは確かだが、そこまで重要ではないとカクトは考える。
茜は一旦離れて、木陰に潜む。とはいえ、相手から丸見えなので潜む理由はない。
「もう一度使ってくれるといいんだけど」
それでも、相手が勘違いを起こして欲しいから隠れる。つまり、
「ちぇ! さっきは木に隠れたからセンサーから消えたんか!」
拡散ビームの影響とは思わせないようにするために、相手から見えていてもあえて木陰に潜んだ。
潜んではいるが、相手から丸見えなのは変わらないため、目が合った後は攻撃のために木陰から飛び出して接近。リルダインは盾と剣を構えるが、盾を構える動きが若干鈍い。
猫ロボットの前足を地面に揃え、逆立ちをする要領で後ろ足を上に伸ばして盾を攻撃する。
「くそ、腕が!」
強力な後ろ足の攻撃で、盾を持つ腕のが跳ね上げられる。
正面から蹴られたなら耐えられたが、下から救い上げるような攻撃に対して盾を向けるのが間に合わず、盾ごと腕を跳ね上げられた。わずかな腕の稼働性能の低下で起こった事故だ。結果、腕の稼働が極端に低下する。
それでも、腕の稼働が問題なだけで、腰のバーニアによって姿勢は常に保たれている。
サテラによる攻撃を、思い出したかのように向けるが、狙いも甘いので被弾しない。
サテラの操作に集中してしまい、目の前の猫ロボットの口が光っていることに気が付くのがかなり遅れた。そのため、ただでさえ稼働が鈍くなった盾を構えることが出来ず、上半身が直撃を受ける。
マズルビームの直撃後、猫ロボットは先ほどと同じように頭上を飛び越え後ろへ回り込む。しかしその動きはセンサーで追跡している。当然、防御のために拡散ビームがリルダインから放たれる!
「次こそは隠れさせない!」
後方に実弾ミサイルを周囲にばらまく。ビームと違い、周辺に爆発を起こすので、森に潜んでいても相手をいぶりだせる。
しかし、拡散ビームを放った状態での実弾兵器は、閃光と同様に拡散ビームの接触で誘爆し、爆風すら茜の所までは届かない。
「いない! どうして!?」
振り向いたリルダインは、猫ロボットがどこにもいないことを知る。
拡散ビームが消えた瞬間、茜は相手の足があった場所へもぐりこむ。関節パーツが割れて、中身が丸見えなので、そこへ向かってミサイルを発射させる。
~~~~~~
『Battle End!』
『Winner アカネ!』
「よっし!」
なんとか勝ちを収めた。さすがにあれだけ頑丈に作ってあると、攻撃で狙う場所も難しい。
「くそ、森じゃなかったら勝てたのに!」
悔しがってるカクト君。確かに、森じゃなかったら勘違いはしないかもね。
「場所が悪かっただけだからな! 覚えてろよ!」
こっちに指をさし、そう言い残してステージを降りていった。
「ダッサ」
うん。トキノちゃんも相変わらず辛辣。そのトキノちゃんも、こっちを見て何か言いたそうな感じをしつつ、目をそらす。いいんだよ。こっちか勝手に約束しただけだからね。
「トキノちゃん、僕と勝負だよ」
蒼奈がトキノちゃんに話しかける。そっか、もうふたりが戦う番なんだ。
「私が勝つ」
そう言い残して、トキノちゃんはバトルポッドに向かっていった。
「アオナ、頑張って」
「トキノちゃんはいいの?」
「応援はアオナに決まってる」
「うん。勝ってくる」
手を振る蒼奈に、手を振って返した。頑張れ!
車用のガラスコートはプラモデル用のガラスコートと比べて防御は高いのですが、速度と耐久は低いです。バランスとしてはプラモデル用のが強いのですが、カクト君のお兄さんは弟の操縦技術から被弾は避けられないと思い防御を重視した設計にしました。
ハチワレの額に三日月の猫が股間に潜り込んでの攻撃はやってみたかったです。




