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あちーぶ!  作者: キル
24/388

『プラモワールド統合版』10

 周辺を確認すると、山に囲まれた湖マップだ。湖がすごく広い。クマは水に潜れるし斜面も登れるから、相手はどの位置でも戦える。

 スナドリネコなら水に潜れるけど、ムーン君はさほど得意じゃなさそう。出来るだけ水中戦は避けた方がいい。


 湖岸から離れたところを走る。宇宙を走る要領で空中も走れるけれど、湖の上空を走ってる最中に水中から攻撃されたら危険。かといって遠く離れても接近戦が主体のムーン君では眺めるだけになってしまうから、岸辺を走るしかない。

 センサーには反応がない……水中かな? クマはそれほど長く潜っていられるとは思えないけどロボットだから違うのかな? 走るのを止めて、湖に近い小さな山に登って、水面を見つめる。


 視覚のモードを切り替える。車に搭載されている、熱感知赤外線センサーを発動。光砂粒子があるとはいえ、車にも安全に自動運転をするシステムはついている。人や物が接近するとブレーキがかかるシステムの探知に、この熱感知赤外線センサーが車に装備されている。それを目の奥に入れておいた。


 水面を見ると、少し離れたところの水中に、他とは違う温度をした大きな動物型の何かが確認できる。

 ミサイルで攻撃する? いや、向こうもこっちを確認している以上不意打ちはできないから外れそうでもったいない。マズルビームで陸に上がるように誘導しよう。

 狙いをつけて……マズルビーム!


「外れた! 屈折した!?」


 まさかロボットのビームが水に屈折するとは思わなかった。威力も減ってる気がする。それでも、胡桃ちゃんがその場所に居るのがわかっただけでも良しとする。

 水中から腕が出てきた……熱反応――ビーム! 一瞬判断が遅れて、片耳が飛んでいってしまった。手の中央にビームが入ってるとは思わなかった。視覚を通常に戻す。熱感知はぼやけて見えるので、特定条件では便利だけど普段使いにするには見えづらい。


 水の中を器用に泳いで、離れたところで上陸してきた。それでも、いつでも水中に入れる位置取りなので、こちらを水中に引き込むつもりかも。

 とはいえ、湖に怯んでいてもしかたがない。地上に出ているなら攻撃するまで!


 勢いよくクマさんに駆け寄ると、クマさんも四つ足の体勢になって構える。接触する瞬間、自分の後ろへ猫のように飛び上がって戻った。ちょうどジャンプした位置に向けて、前足がぶぅんと振るわれた。あのまま突撃したらやられてた!


 そもそも、猫の持ち味は機動力。あのクマさんの腕を見ると正面から力で戦うことは難しい。とにかく、何とかして回り込まなければ。


 今度は、左右にステップを踏むような動きでかく乱して近寄る。前の戦いと違って湖があるからぐるぐる回って隙をつくことはできない。

 近寄って……ジャンプ! 頭を越えられるか――立ち上がった! とっさに腕で防御。頭を越えられなかった上に、追加した装甲が両腕とも壊された。

 猫のように回転して着地後、即座にダッシュ。立ち上がったから、足が狙える。上からの押し潰しが怖いので側面から足へ攻撃。噛みつけた! マズルビーム! ――クマさんが噛みつかれたまま水中へ!? やばい!

 噛んでいた口を離して、水中に逃れるクマさんを見送る。足だけ水の中にはいったまま、立っているクマさん。その場で、両手をこちらに向けてビームを撃ってくる!


 回避は出来る。こちらもマズルビームと足のビームで応戦しているから、あちらも回避しなければならず、狙いもままならない。それでも、時々当たるビームで、お互い胴体や手足にダメージを負っているけど、決定打がない。


 まだ動けるうちに、勝負に出るしかないか。

 回避しつつ、ほぼ直線に向かっていく。今なら水面ギリギリを空中歩行で走れる! 


「うわ! ミサイル!」


 クマさんの胸のパーツが開いて、中からミサイルが4連! 空中を走り慣れなかったので、回避が遅れて右足の先部分が吹っ飛んだ! でも、ミサイルの発射口が開いたからちょうどいい!

 首輪に着けた車のパーツ、ウインチに巻かれた金属ロープを飛ばして発射口に引っかける。そこから、巻き上げ引っ張って――転倒させた! それでも、クマさんは片手をこちらに向けながら、すぐに立ち上がろうとする。


「間に合え!!」


 胴体の側面に、手に組み込んだパーツを押さえつけ――手をひねった。


 それだけで、胴体パーツが分割されて隙間が開いた。その中へ一気にミサイルを打ち出す! クマさんの手から放たれたビームが右手を破壊するが……。


『Battle End!』

『Winner アカネ!』


「勝てたー!」


 強かった! 本当にギリギリで攻撃が間に合った。ワープポータルから出ると、蒼奈がいる場所を確認。周りには……いた、胡桃ちゃん。ちょっと泣いちゃってる。


「クルミちゃん強かったよ。一瞬も気が抜けなかった」


「うん……アガネちゃんも、づよかった……」


 泣きながら頷く胡桃ちゃん。ほんとに、気持ちも強い子だね。


「楽しかったよ、また勝負しようね?」


「うん!」


 まだ涙は流れてるけど、元気に答えてくれた。次に戦う時はもっと強くなってるんだろうな。

 一緒に蒼奈の場所へ移動する。蒼奈は頷いたので、無事に勝ったのだろう。


「クルミちゃん、席はどこかに予約してある?」


 聞いてみると、ふるふると横に首を振ったので、もしよければって前置きして知り合いの居る場所に誘ったら、行きたいと返事が来た。やっぱりここでバイバイは寂しいからね。


 ……うん。やっぱりプラモ女子は集まる傾向にあるね。自分の行動がレベッカさん達みたいだと気が付いた。


~~~~~~


 席に戻ると、『白い閃光』さんがいた。お仕事は良いんですかと聞くと、


「……自由を得る権利は誰にでも保障されているものだ」


 ということらしい。試合を見るために休んだのかな? お兄さんに色々協力してもらったし、試合が気になったんだろうね。

 ちなみに、いまだに正体は明かしていない。


 胡桃ちゃんは、レベッカさんにも、萌黄先輩にも大歓迎された。もちろん、お兄さんもだし、ダリオさんも私たちのとき同様、教えたい欲が湧いているようだった。


 一度休憩してからベスト8の試合をする流れは、レベッカさんのときと変わらないので、今回もフードコートへ移動。

 私と蒼奈は、一度ログアウトして、現実で準備してから再度ログイン。フードコートにもワープポータルがあるからすぐに合流できた。


 今回の私は、お皿で食べるオレンジのクレープ。オレンジの甘酸っぱさと上にかかっているゼラチンのさわやかさがとてもおいしい。甘いムースも口触りがいい。

 蒼奈は、抹茶のパンケーキ、萌黄先輩は、ベリーのせミニバウムクーヘン、レベッカさんは、リンゴジャムのシフォンケーキ、胡桃ちゃんは、お皿のイチゴクレープ。ダリオさんは、わらび餅、お兄さんは、モンブランだ。男性陣はコーヒーを飲んだけど、女性陣は紅茶を飲んだ。


「アオナは私とクルミちゃんの試合、最後は見てたんだよね。最後何かわかった?」


「うん。パーツ外す道具だよね? 道具としての性質が、プラモデルにはかなり致命的」


 デザートをいただきながら、試合について話をする。胡桃ちゃんはもう吹っ切れたようで、おいしそうにデザートを食べてる。


「その武器も、今のランクなら良いが、シルバーランクあたりで使えなくなるな」


 お兄さんが話に入ってくる。モンブランを食べていたフォークを掲げているのは何のポーズなんだろう。


「そうなんですか?」


「シルバーランク以降は、合わせ目消しをして出場するものがほとんどだからな」


「プラモデルのパーツの隙間を埋める技術よ。隙間が埋まるから、パーツセパレーターではどうしようもないわね」


「こんな感じになる。無塗装で合わせ目消しをしたリルダイン、参考にするといい」


 お兄さんがプラモデルを出して見せてくれる。確かに、蒼奈のリルダインと比べると、パーツ同士の隙間がない。


「よく持ってたわね」


「無塗装成形色仕上げは、1度は通る道ではないのか?」


 持ち上げて、眺めて……うん。バックパックもピッタリくっついてるし、これはどうしようも無さそう。


「そういえば、私が指定したアチーブは、もう達成しちゃったんだよね」


「はい。ふたりともベスト8に入ったので、達成ですね」


「けど、ここまで来たら、ねぇ」


「うん。アカネとステージで勝負したい」


「見てみたいです!」


 みんなで楽しく過ごしていると、運営からシーポンに連絡が入る。蒼奈も同じく入ったみたいで、連絡を確認している。


「アカネ、最後まで勝たないとダメみたい」


 ベスト8のトーナメント表。蒼奈と戦うには決勝進出が条件だった。


~~~~~~


 少し時間に余裕を見て、ステージ前に集まる。


「なんだ、女か」


 そんな声が聞こえたので、むっとしてそっちを見ると、小学生くらいの年齢の、金髪の少年が居る。まぁ、小学生なら生意気なところもあるか。そう思って無視する。


「おい、無視すんなよな!」


 うーん、ちょっと面倒だ。かといって、返事するのもなぁ……。


「待ちなさい、少年。女性には親切にするものだよ?」


 私たちと少年の間に、男性が割り込んできた。お兄さんより年上かも?


「知るか。プラモを捨てるのはいつも女だって、兄貴が言ってた。俺もそんなニュース何度も見たし。男の世界に女が入ってくるな」


「違うぞ少年。誰かを傷つけるのに性別は関係ないんだ。その捨てた人と捨てられた人は、互いに分かり合えなかっただけなんだ。よく話し合い、理解し、お互いの考えを分かり合えさえすれば、そんな悲しいことにはならなかったはずだ」


「なんでだよ。実際事件が起きてるじゃないか」


 じわりじわりと、ふたりから距離を取る。かばってくれた人には悪いけど、関わるのは面倒だ。


「また女じゃねーか。なんだよこの大会」


 まだ少年が叫んでる。その言葉に入口側を見ると、鮮やかなピンク色のツインテール少女がいた。胡桃ちゃんくらいの年齢かな?

 少年は、懲りずに少女に絡んでいったけれど、


「うるさい、俗物」


 の一言で一蹴されていた。強い。


『ベスト8まで残った皆様、時間になりました。ステージへお上がりください』


 女性の声の案内に従い、出場者がばらばらとステージへ向かう。女の子の方を見たけど、特に向こうから見ることもなかったので気にせずに上がる。


 ステージ上では、並ぶ位置に小さなライトが付いていたので、そこへ整列。順番は特にないらしい。

 先週レベッカさんの試合で実況をしていた男性の声で、スタジアム中に説明をしているのが聞こえる。

 選手紹介では、名前を呼ばれたらスポットライトが当たって何かアピールしてる様子なので、自分の番は無難に手を振って終わらせた。


「今回はいいね。可愛い子が3人もいる。君、名前は?」


 隣に立った男性が話しかけてくる。顔を上げると、一瞬目が合うけれどそれ以降は視線の位置が胸元にずれている。これはだめだ。


「実況の選手紹介、聞いてなかったんですか?」


「直接聞きたくてね。わかるだろ? 俺はベック、よろしくな」


「はい」


「いいねぇ、クールだ。そのキャラのロールプレイかな? でもあのキャラは笑顔も良いんだ。アカネちゃんも笑顔になってみる?」


「けっこうです」


 笑顔と言いつつ、視線が私の顔より下に固定されてて不快。並び順を間違えた。紹介早く終わってほしい……終わった。


「行こう」


 蒼奈がさっと手を取ってくれたので、即座に移動。蒼奈はかわいいだけじゃなくてかっこいいな。


「もう少し変な言い方したら通報して追放したのに」


「現場押さえないとね」


 シープの世界にも色々な人はいるから、システムで守られているとはいえ、注意して遊ばなければいけない。


 ふと、別の視線を感じたのでそちらを見たら、さっきの女の子がこっちを見ていた。そして、目が合ったらサッと視線をそらした。……。


「こんにちは」


 声をかけてみる。雰囲気は胡桃ちゃんと同じくらいの年齢かな?


「……こんにちは」


「トキノちゃんだっけ? 私はアカネ。もし戦うなら、決勝になりそうだけどね」


「そう」


 恥ずかしがり屋かな? 無視してる感じでもない。話しかけたら半身だけこっちに向きなおしたからね。視線は足元ばっかり見てるけど。


「こんにちは。僕はアオナ。お互い1回勝ったら、僕と戦うからよろしくね」


「わかった」


 距離感はあるけど離れる様子もないし、無視されてるわけでもない。知らない人が近づいてきたらこれぐらいの警戒感はあったほうがいいよね。


「それじゃ、行ってくる」


 一番最初のバトルは蒼奈だ。手を振って見送る。相手は……ベック。あの不快な人だ。


「じゃあ俺も行ってくるぜ、アカネちゃん」


 なぜか私にも挨拶してどこかに行くベック。……蒼奈、よろしく。

 視線は相変わらずだったし、不快通報でもしておこう。


 バトルする人以外は、ステージから若干遠くに移動。トキノちゃんと一緒に行動した。


『Plastic Model Battle!』

『Countdown!』


 中央の映像を見る。この位置だと大迫力だ。


『5・4・3・2・1』

『Battle Begins!』


 蒼奈がロボット形態で飛び出し、そのまま飛行機形態へ変形する。ただ、最初のリルダインとは、飛行機の形がかなり変わっていた。

 もともとは、仰向けにひっくり返り、機首になる盾を体の上に持ってくる。手持ちの銃を背中にくっつけ、背中の羽根が広がり、足はスクワットのように曲げて飛行機になっていた。


 それが、仰向けで盾を正面に持ってくるのは変わらないけど、背中から頭の部分を隠す突起がせりあがってきて機首になっている。盾は小さくなった代わりに銃がのような棒が付けられていて、盾の下に手持ちの銃が入り込む。羽根の広がり方は同じにみえるけど、パーツを二つに分けたから下から見ると最初の姿とは大きく違う。足は、スクワットではなく、足の裏側、キャタピラを追加した場所をくっつけるようにひねった状態にする。


 よくあそこまで改造できたなぁ。凝り性だからかなり考えたんだろう。


 ステージは、ビルがいくつも建っている都会。全体マップで見る限り、川はあるけどほぼ建物だ。相手は町中に降り、隠れて空をうかがってる。


 蒼奈が通過……向こうからは見えただろうけど、蒼奈からはセンサーのみかな。旋回して別角度から同じ方向に向かって飛んでいる。


『ベック選手、予選でも使っていたカモフラージュ用の布を取り出した! 今回は都市迷彩! 何種類持ってきているのでしょうか!』


 スキャンして持ち込んだ布の場合、ステージの設置物のようにもともとあるものや、ビームやスモークなど後で生み出したものと違って、90%の遮蔽物にはならない。布も感知対象となる。ただ、見た目を隠すだけなら効果的だ。遠くから見るだけでは、センサーがあったとしても場所の特定が難しい。


 もう一度蒼奈が通過する。通過する軌道を狙って相手の攻撃! ビームが空に放たれるが、蒼奈は回避。その後旋回している間に、相手は位置を変えて別の場所へ移動した。

 蒼奈が戻るころには、相手はその場所にいない。蒼奈が戻ってくることを見越して、またビームの攻撃が別の場所から放たれる。


 このままだとずっと位置を変えられて撃たれっぱなしになる。蒼奈はどうするんだろう。


~~~~~~


「空からは無理」


 センサーとビームの位置で場所を割り出そうとマップに入力していたが、飛行状態だと通過してしまうので、全ての行動が後手になっている。空中で止まったり切り返す方法はあるが、狙撃のいい的になりそうだ。


「でも、傾向はつかめた」


 相手は高層ビルを起点に移動している。移動速度は速くない。日の当たらない北側に隠れている。あの場所から行けるのは2か所。

 次の飛行で仕掛けよう。

 そう思い、旋回して真っすぐに飛んでいく。


 その飛行を確認するベック。布で隠れているため真上に近い範囲でしか飛行する軌跡を確認できないけれど、戦い方としては十分。


「何度通過したところで無駄さ」


 FPSゲームから流れてきたベックは、得意としていたスナイパーライフルの要領でこれまでの戦いを勝ち抜いてきた。

 ビーム兵器は想像以上に速度は遅く、引き金を引いてすぐに相手に当たるようなものではない。光を放つ分だけ避けられる可能性も高いが、弾切れを心配することもなく射程も実体弾より長いので、撃っては移動するを繰り返せば最終的にこちらが勝てる。

 相手が空にいるなら、遮蔽物のある地上から。相手が地上なら、高い場所や建造物から撃ちおろす。撃ちやすさを考えると高い場所から撃った方が良いけれど、相手は選べない。


 視界にまた飛行機が飛んできたのでビームを撃つ!


「っしゃあ!」


 今回の狙撃は見事命中した。どこか壊したらしく、何かパーツが落下してきた。手足みたいな大きなパーツではないが、落下位置が悪い。


「潜伏予定地に近いな……しかたない、もう一方へ行くか」


 相手が落下物を目で追うことで、潜伏場所がばれてしまうことを避けるために移動ルートを変更。移動先で布をかぶり、空を見る。通過したからか、空にはセンサーが表示されていないが、そのうち戻ってくるだろう。

 そう思って見上げていると、地上左側付近からセンサーの通知が入る。


「なっ、降りたのか!」


 布を外し左側面を確認すると戦車の砲口がベックに向いている

 轟音が鳴り響き、巨大なビームが放たれた。盾を突き出して、なんとか防御は間に合ったが、両肩にある2枚の盾の内1枚は粉砕した。

 背中のバーニアと足のスラスターで移動。あまり高く飛ぶと遮蔽物がないため攻撃されるので、建造物の間を縫うようにして進む。


 それを追うように、地上を滑るようにして戦車が迫ってくる。スラスターを駆使した急カーブも難なく曲がる。


「飛行機のエンジンで走る戦車が、遅いわけない!」


 カーブも、キャタピラの駆動に加え、背中の羽根が変形した際に戦車の側面に来ることで、スラスターによる急カーブをも可能にしている。

 相手が移動した瞬間は距離を取られたが、距離はどんどん狭まっている。


 ベックは直線の道路に出ると、ホバー状態で背中を向き、残った盾を正面に銃を構える。


「この距離なら外さねぇ! 消えろ!」


 戦車の砲塔部分を狙って攻撃をする。砲塔には当たった。当たったが、そこがビームコーティングされていて、大きなダメージを与えられなかった。


 そして、迫ってきた蒼奈は、接触直前にロボットへ変形。そのまま砲塔をを持って、相手の頭頂部から真っすぐ振り下ろした。


~~~~~~


『Battle End!』

『Winner アオナ!』


「やったー!!」


 戦闘終了後、歓声が上がる。アイアンランクだが、この後のブロンズランクやシルバーランクのために、観戦に来ている人も結構いる。


「ただいま。勝てたよ」


「おかえりー、よかったよ!」


 蒼奈とハイタッチする。トキノちゃんはというと、蒼奈をちらっと見て、バトルポッドに向かう。次は彼女の試合だ。


「いやー、負けたよ、お嬢ちゃん! どう――」


システム:通報『胸をじっと見られて不快』を、ログと共に現場でも確認しました。24時間の相互ステルス状態を実行します。


「当然」


「だよね。顔を見て話せばいいのに」


 本人が居なくなるわけじゃなくて、お互いに見えなくなる状態になっただけ。通報に蒼奈も一緒に絡まれたと伝えたので、2人そろってステルス状態だ。


「アオナの最後のあれって、鈍器?」


「うん、ビーム盾メイス。ビーム盾が強かったし、実体武器も強かったから混ぜてみた」


 それで、盾が小型化したのか。メイスの形状は上から見ると十字で、その隙間に腕を装備できていた。リルダインの盾と形状が全く違うので、何か別のパーツで作ったんだろう。持ち手の部分は、お兄さんの箱にあった大きいサイズのビーム剣を差し込んだらしい。銃口じゃなかったんだ。

 戦車の弾を撃つ部分の砲身は、手持ちのビーム銃らしい。盾と銃を組み合わせて戦車の砲塔に変形するそうだ。


 話し込んでいるうちに、次の試合のアナウンスがあった。トキノちゃんがバトルポッドに乗り込むときに手を振ったが、気が付いた様子はなかった。


『Plastic Model Battle!』

『Countdown!』


「どっちが、僕の相手になるか……」

 シープではゲーム全体を記録しているので、過去の行動や発言はAIが記録を遡り確認します。シープが誕生した当初からのシステムなので、嫌悪感を感じる人は少数派です。

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