12月8日 野良猫
優しい顔でゆっくりした声。ずっとこの声に、俺は支えられてきた。この18年間自分が追い求めていたのは、これだったのかもしれない。そんな自問自答を繰り返しながら、数学の問題を解いていた。
那奈「ねぇ、楓」
山川「うーん」
那奈「やっぱり、疲れるかな」
山川「何時に集合するの?」
俺は、朝からアイツの会話を横で聞かされていた。どうやら、アイツと山川は、どこかに行く予定をしているみたいだ。最後の数学の問題を解き始めていた。
那奈「でもさ、もうちょっと、違うところでもいいんじゃやい?」
山川「例えば?」
那奈「そう言われると出てこない。ハハハ」
出てこないのかよ。心の中でツッコミたくなってしまった。アイツの適当さには、呆れたもんだ。
山川「どういう系がいいの?」
那奈「そうね。寒いし室内がいいかな」
山川「室内かぁ。映画とかはどう?」
俺は、数学から英語へと科目を変更した。
那奈「映画いいね。見に行きたい!」
山川「何か見たいのあるの?」
山川は、優しくアイツに聞いた。
那奈「うん、野良猫っていう映画があって。それ見たいの」
山川「野良猫?」
山川は、知らないようだった。
那奈「優斗は、知ってるよね?」
アイツにバレてしまった。
俺 「ん?」
知らないふりをしてアイツの方を向いた。
那奈「野良猫」
俺 「野良猫?小山のやつ?」
那奈「そうそう。今度、映画化されるの」
映画『野良猫』は、12月から公開されており、俺もずっといきたいと思っていた。
俺 「らしいな」
山川「もし、よかったら、世田くんも一緒に観に行こうよ」
俺 「えっ?」
まかかの山川からのパスに驚きを隠さないでいた。
山川「映画」
俺 「なんで?」
山川「まだ、見に行ってないんでしょ?」
俺 「あっ、、うん」
とっさに返事をしてしまったが、実は、明後日見に行く予定をしていた。
山川「じゃあ、一緒に行こうよ」
俺 「いつ?」
山川「明後日。那奈もいいよね?」
まさかの行きたい日が被っていた。
那奈「もちろん。優斗にお金払ってもらおうよ」
山川「えー、出してくれるの?めちゃくちゃ助かる」
俺 「誰もそんなこと言ってねぇだろ」
那奈「ごちになります!」
那奈と山川は、笑っていた。




