11月19日 下田那奈
もうすぐ、12月。試験まで残り50日を切っていた。僕のクラスである3年4組は、国公立志望クラス。学年の中で、一番賢い人が集まるクラスだった。同じ3年4組の佐々木は、大阪の大学、寺崎は、神戸の大学と日本の中でも偏差値がとても高い大学になる。
そうした生徒と一緒ということもあり、僕も一生懸命、勉強に取り組むことができていた。そんな僕は、一応、広島の大学を目指していた。10月の模試では、C判定と合格する確率は50%だった。
合格したい僕にとって、勉強は必須だった。いつものように学校の図書室で勉強をしていると、アイツが声をかけてきた。
アイツ「何の本読んでるの?」
声をかけてきたのは、下田那奈だった。
僕 「『星のない街』」
下田「あれ、いいよね。後半が特に好き」
本の名前を伝えただけで、わかるアイツは、流石だった。
僕 「読んだことあるの?」
下田「うん。病院生活長かったからね」
僕 「‥‥」
上手く言葉が出てこなかった。
下田「そんな静まらないでよ」
僕 「そんなことないけど‥‥」
気づかないうちに、下の方を見ていた。
下田「てゆうか、明日何してるの?」
僕 「明日?」
下田「うん」
僕 「明日は、学校休みだがら、家にいるよ」
下田「じゃあ、どっか行こうよ」
僕 「えっ‥‥?」
急な誘いに戸惑う僕だった。
下田「だから、どっか行こうよって」
僕 「なんで?」
下田「なんで?って遊びに行きたいからでしょ」
僕 「それは、そっちの都合でしょ」
下田「行きたくないの?」
僕 「行きたくないよ」
下田「なんでよー」
アイツは、笑いながら話をしていた。
僕 「なんで、自分が行きたかったら人も行きたいと思うのよ」
下田「いいじゃん、行こう」
僕 「いいよ、そんなことしなくても」
下田「このまま、ずっと勉強して高校生活終えるの?」
僕 「別にいいでしょ」
下田「嫌だよ。私は」
アイツの顔が真剣になった。
僕 「じゃあ、他の人と行ったらいいじゃん」
下田「だから、私は、優斗と行きたいの」
僕 「僕は、行きたくないって言ってるじゃん」
下田「じゃあ、どうやったら行ってくれるの?」
僕 「どうやっても行かないよ」
アイツとの会話は、誰かとの会話に似ていた。だが、瞬時に思い出せなかった。
下田「行かないなら、こっちから迎えにいくよ」
僕 「なんで、そうなるのさ」
下田「欲しいものは、取りにいかないと」
僕 「嫌だってってば」
下田「もう、うるさい」
僕 「‥‥」
僕は、露骨に嫌そうな顔をした。
下田「そんな顔しないの」
僕 「そんなの言われても」
下田「6月頃に、ホナに言われたんでしょ」
僕 「あっ、、うん」
今日のアイツは、6月頃に話をした新谷と似ていることを思い出した。
下田「なんて言ったの?」
僕 「そんな大したこと言ってないよ」
下田「でも、ホナ落ちこんでたよ」
僕 「そうなの?」
新谷が落ちこんでいるなんて知らなかった。
下田「自分がいろいろ言ったからいけなかったのかな?って」
僕 「‥‥」
僕は、気まずくなった。
下田「優斗が悪いわけじゃないよ。でも、自分だけで生きてるんじゃないんだから」
僕 「でも‥‥」 下田「でも、じゃない」
アイツは、僕の話しにかぶせるようにして声を張った。
僕 「‥‥」
下田「いつまでも一人でいるつもりなの?」
僕 「ん?」
下田「大人になっても一人でいるつもり?」
僕 「そういうわけじゃないけど」
下田「変わるんだよ。変わらなきゃ。このまま、死んだら後悔するよ」
アイツの声が大きくなった。
僕 「‥‥」
下田「私ね、入院してた時、思ったんだよね。このまま、死んだら、優斗に会えないんだよねって」
僕 「‥‥」
アイツが死ぬことを考えると悲しくなってしまっていた。
下田「だから、私は変わるんだ。やりたいことはやりたいって言うんだ。バカにされても、笑われても」
僕 「‥‥」
下田「じゃあ、明日待ってるね」
僕 「えっ‥‥」
笑って、アイツは、教室を出て行った。




