表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
27/135

第26話 ついに冒険者デビューだね!

異世界と言えば冒険者――でもやっぱり、冒険者になるには、それなりの努力と時間と覚悟が必要だと思うのです。(`・ω・´)

 翌朝、慎也たちは昨日仕留めたソルジャー・マンティスとクイーン・マンティスから切り取った魔晶核(コア)や鎌などの部位を荷馬車に乗せてキアナの街へと出かけた。


 ちなみに、この荷馬車と馬は2年前に購入したものだった。


 元々はウィルとユフィアの2人暮らしで、生活物資もそれほど必要なく、たまに街に買い物に行っても手で持って帰れるくらいの量しか買わなかったのだが、慎也と結衣がやっかいになり始めてから、必然的に食料品などがそれまで以上に必要になり、荷物も多くなった。


 加えて、パワーレベリングで仕留めた魔物の魔晶核(コア)や部位などは当然街に売りに行くわけだが、大型の魔物ともなると回収する部位はどうしても大きくなる。例えば、クイーン・マンティスから回収できる部位は大小2対の鎌であるが、大きい方の鎌は慎也の身長とと同じくらいのサイズになる。手で街まで運ぶのはまず無理。

 これらの事情から、馬車が必須になったという訳だ。

 パワーレベリングで仕留めた魔物の部位や魔晶核(コア)を馬車で街に売りに行き、その金で生活用品を買って帰ってくるというのが、この2年間の慎也たちの生活サイクルになっていた。


「ついに冒険者デビューだね!」


 馬車の荷台で結衣がウキウキとした声色で言った。冒険者になれるのが嬉しくて仕方が無いといった様子だ。


「私も楽しみです」


 同じく荷台に腰かけているユフィアも嬉しそうだ。この二人はどちらも冒険者に憧れていたから当然だろうが。


「楽しみなのは判るけど、浮ついてるとケガじゃ済まないぞ? 冒険者になったら、ウィルさんの手助けは無いんだからな?」


 2人に比べて慎也は冷静だった。

 ちなみに、いま馬の手綱を握っているのは慎也だった。馬と馬車を買ってから、街へ行く時は必ず利用している。その際、御者は慎也、結衣、ユフィアの3人が交代で務めていた。その為、3人とも<操車>のスキルを習得し、レベルも300を超えるまで上達させていた。中でも一番上手いのが慎也で、スキルレベルは407。しかも彼の場合、<乗馬>スキルまで習得し、こちらも398まで上達させていた。


 ちなみにそこまで馬に拘った理由が、戦国時代の騎馬武者みたいだから、という実に下らないものだったが。


「シンヤ君の言う通りだ」


 結衣やユフィアと共に、荷台に腰かけていたウィルが言った。


「確かに君たちはこの2年でずいぶん強くなったが、冒険者の仕事は魔物の討伐だけじゃないからね」

「そう言えば、冒険者って、具体的にどんなことをする職業なんですか?」


 結衣やユフィアと違い、冒険者と言うものにそこまで拘りの無かった慎也は、これまでその具体的な内容に関しては一切知らずにいた。


「冒険者と言うのは、いわば「何でも屋」のような存在だと思えば良い」


 ウィルの説明に、冒険者志望の結衣やユフィアも口を噤んで耳を傾けた。


「一般的には、魔物を狩ることを生業としている者というイメージが強いが、当然それだけじゃない。例えば、要人や行商人の護衛。犯罪者や盗賊の討伐と言った、人間を相手にする依頼も当然存在する」

「やっぱり、人間とも戦わなくちゃいけないんですね……」


 さっきまでとは一転して暗い顔で結衣が呟いた。

 ラノベマニアの彼女は、これまで読んできた数々の異世界転移物の小説から、冒険者というものの存在意義をある程度予測していた。

 3人はこれまで、魔物としか戦ったことが無かった。たまにウィルや仲間同士で模擬戦をすることはあったが、人間同士で殺し合いをしたことは一度も無い。


「場合によっては、人を殺す覚悟もしておくことだ」

「もう出来てますよ」


 ウィルの容赦無い宣言に、慎也は即答した。


「慎也君……」


 人を殺す覚悟がある――日本人の元中学生としてはあり得ない言葉に、結衣が目を見開いて驚いた。


「前に言ったろ? オレはアメリカに住んでいて、銃も撃ったことがある、って」

「あ――」


 慎也の短い説明で、結衣は理解した。

 アメリカは、銃社会と言われるほど銃器が日常まで浸透している。それを用いた犯罪は、日本とは比べ物にならないほど多い。


「オレが住んでたのは、言っちゃなんだが、かなり治安の悪い地域でね。親父に散々言われたよ。殺すと決めたら殺せ。殺される前に殺せ。子供でも銃を向けてきたら容赦無く殺せ。躊躇い無く殺せ、ってね。まあ、実際にやったことは無いけどな。幸い」

「……慎也君のお父さんって、どんな人だったの?」

「聞きたいか?」

「……ううん。やっぱ良いや」


 話を聞く限り、相当怖い人だと思った結衣は、すぐに前言撤回して頭を振った。


「続けても良いかね?」

「あ、すいません。どうぞ」


 ウィルの話の途中だったことを思い出した慎也は、慌てて謝罪した。


「魔物や盗賊、犯罪者の討伐の他にも、遺跡や迷宮、未開地域の調査なども冒険者の仕事に含まれる」

「テンプレ通りだね」

「てんぷれ?」


 結衣の呟きに、ユフィアが興味を示した。ウィルは構わず続ける。


「他にも、未発見の薬草、食材、鉱物の調査や採取、採掘などを行っている者もいるね」

「確かにどれもこれも、危険なものばかりですね」


 この世界で未確認生物や植物の調査を行うとなると、かなりの危険が伴うことは慎也も理解できた。


「そうでもないさ。危険が無い、安全な仕事も存在するよ」

「え? 例えば?」

「倉庫の整理や、引越しの手伝い。道具屋などの商品の整理。魔法薬の生成の手伝い。ドブ掃除や、下水道のネズミや害虫の駆除といったものだね」

「……アルバイトだね」


 結衣の呟きに、慎也も同意した。いまウィルが話した内容は、元の世界、日本でやっていたバイトそのものだ。とても冒険者の仕事とは思えない。


「前にも言ったが、犯罪歴さえなければ誰でも希望すれば冒険者になれるが、なってすぐに魔物の討伐と言った依頼を受けられるわけじゃないんだよ」

「何故です?」


 慎也が聞き返す。


「冒険者と一言で言っても、1級から10級までのランク分けが成されていてね。一部の例外を除いて、最初は誰もが10級からスタートする訳だが、当然、ギルドから斡旋される仕事にもランク分けがされている。危険なもの、難しいものほどランクが高い。成りたての10級、9級の冒険者に割り振られるのは、さっき言った雑用ばかりなんだよ」

「え? じゃあ、私たちも雑用から始めるんですか?」


 どことなくショックを受けた顔で結衣が訪ねた。


 ウィルの話では、冒険者のランクは――


 10級、9級――見習い。

 8級、7級――新人。

 6級、5級、4級――中堅。

 3級、2級――一流。

 1級――超一流。


 ――と認識されているらしい。


 10級、9級の「見習い」は雑用しかさせてもらえない。中には、戦う力を持たない一般人が、収入を得る為にわざわざ10級冒険者になる例もあるそうだ。


「いや、ギルドに入会する際に、鑑定機能を持った魔導具でステータスのチェックが行われるのだが、レベルや戦闘系のスキルが高い者は特別に8級、もしくは7級から始められるんだよ。能力の高い者にわざわざ雑用させる意味は無いからね。戦う力を持たない人間が、収入を得る為に10級冒険者になる例もある」

「あ、さっき言ってた例外って、それなんですね」

「その通り」


 結衣が納得顔で頷いた。

 10級から始めた冒険者も、レベルを上げるか、戦闘に役立つスキルを身に付ければ昇格できるのだそうだ。


「ちなみにこの時、称号欄に犯罪歴がある人間は入会を拒否される」


 犯罪歴がある者は冒険者にはなれないと以前説明されたが、入会の時点でチェックされるという訳だ。元の世界における履歴書のようなものだ。しかも、履歴書の場合は自身の意志で書き込まなければ犯罪歴は知られないが、ステータスや称号という概念が存在するこの世界では誤魔化しようがないという訳だ。


「冒険者は死と隣り合わせの危険な職業だ。だがそれ故、成功すれば得られるものは甚だ大きい。金、地位、名声――それらを得た冒険者の英雄譚は数え切れないほど存在する」

「この国の初代王も冒険者でしたね」


 異世界人にして冒険者、そして後にヤマト王国を興した一条悠真の冒険譚は、いまでもこの国では語り草になっている。


「それらの冒険譚に憧れる若者は多い。だが、誰しもが成功を収められる訳では無い。そんな稀有な存在は、ほんの一握りさ」


 当然の話だ。寧ろ、ほんの一握りの成功例だからこそ無駄にピックアップされ、英雄やら勇者として語り継がれるようになるのだろう。


「雑用期間を終え、魔物の討伐依頼を受けられる8級に昇格した新人冒険者の内、2割から3割は1年以内に命を落とすと言われている」

「!?」


 ウィルの言葉に、これからまさに新人冒険者になろうとしている3人の間に改めて緊張が奔った。

 新人冒険者は、10人中2人か3人は1年以内に死んでしまうということだ。この為、新人冒険者になって最初の1年は、通称「選別期間」などと言われているそうだ。


「残った7割から8割の新人冒険者も、理想と現実の違いに幻滅したり、自身の限界を悟ったり、あるいはケガなどを理由に、およそ3割は数年以内に冒険者を辞めてしまう」


 それに関しては慎也や結衣もなんとなく理解できた。

 元の世界でも、学生から社会人になって会社などに就職した人間は、環境の変化や仕事の厳しさ、あるいは人間関係などで少なからず短期間で止めてしまう人間がいると聞いたことがあった。


「冒険者生活を安定的に続けられるのは、全体の3割か4割程度。そのうち、一流や超一流と呼ばれるようになれるのは、数%に過ぎない。だからこそ、冒険者ギルドは常に人手不足で、常に高い能力を持った人間を欲している。そう言った人間を、10級や9級で遊ばせて置く余裕など無い。その為の特別措置さ」

「なるほど、理解しました」


 ウィルが2年もの間、自分たちにレベリングを課していた理由はこれだったのだと、慎也は理解した。

 中途半端な強さを以て冒険者になれば、短期間に高い確率で命を落とす。だからこそ充分にレベルを上げ、信頼できる仲間との連携行動を確立させた上で冒険者にした方が、生き延びられる確率は格段に増す。


 実際、慎也は元の世界でRPGゲームをやる時は、必ず最初の方でレベルを30前後にまで上げてからストーリーを進めるようにしていた。経験値が1か2の敵を長時間、延々と倒しまくらなければならないのでかなりの根気を必要としたのだが、いままさに、自分が同じことをしていたと考えると得心がいった。


 この世界はゲームに似ているが、セーブもコンテニューも無いのだから。絶対死なないようにする為に、最初の内に強くなっておくのは当然のことだ。


「後、冒険者の仕事は多岐に渡るが、大抵の人間は得意分野を専門に活動している場合が多い」


 専門職について代表的な例を挙げると――


 魔物討伐なら『魔狩人(イェーガー)』。

 盗賊退治なら『賞金稼ぎ(ハンター)』。

 遺跡や迷宮の探索なら『探索者(シーカー)』。

 要人や荷物の護衛なら『護衛者(ガード)』。

 薬草や鉱物の採取、採掘なら『回収者(リカバリー)』。


 ――などが存在するらしい。


「じゃあ、オレたちは魔狩人(イェーガー)を目指そうか」

「「賛成(です)」」


 慎也の提案に、結衣とユフィアは即座に同意した。というか、3人は魔物退治以外に経験が無かったので当然だが。


 そうこうしている間に、一行はキアナの街の門前に到着したのだった。

RPGゲームで、最初に出てくる敵を延々倒し続けてレベル30にまで上げたというのは、作者の実体験です( *• ̀ω•́ )b

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ