表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
PR
28/135

第27話 わしらからの前祝いだ

ドワーフ親子好きです(≧∇≦)

 キアナの街に着いた慎也たちは、魔物の部位や魔晶核(コア)を売り払った後、冒険者ギルドに行く前に、1度ヨルグの店に寄ることになった。

 この2年間、ヨルグとケーナには度々、武器や防具の整備で世話になっているので、晴れて冒険者になることを知らせておこうという話になったのだ。


 そう言う訳で、もはや馴染みとなった「ヨルグ武具店」まで足を運んだ訳だが。


「ヨルグさ――」


 挨拶がてら、慎也が店のドアを開けると――


「こンの、うすら馬鹿娘があああああああああ!!」

「黙れ脳筋アホ親父があああああああああ!!」


 店内では、脳筋アホ親父ヨルグVSうすら馬鹿娘ケーナの、壮絶なドワーフ親子タイトルマッチが繰り広げられていた。


「あ、またやってるね」

「今日は一段と激しいですね」

「まあ、喧嘩するほど仲が良いと言うがね」


 結衣、ユフィア、ウィルが順々に言う。

 3人の言う通り、この2年、店を訪れるとヨルグとケーナが喧嘩をしているという光景は、もはや通例となっていた。最初の内、慎也たちは目撃する度に止めようとしていたのだが、あまりに頻繁に繰り返される為、最近では見かけても放っておくことにしていた。


 これだけ派手に喧嘩をしておるにも拘らず、実は親子仲は良いということは慎也たちも知っているので。


 慎也たちの来店に気付かないほどヒートアップして取っ組み合いを続けていたドワーフ親子だったが、しばらくしてさすがに疲れたのか、両者ともに大汗をかき、息を切らせながらどちらともなく手を放した。


「喧嘩は終わったかい?」

「ウィ、ウィルの旦那!? それにシンヤたちも!? い、いつからそこに!?」


 ウィルに声を掛けられ、初めて慎也たちの存在に気付いたヨルグが慌てた様子で姿勢を正した。


「5分くらい前からですね」

「最悪です! 馬鹿親父のせいで大恥かいたじゃねーですか!?」


 慎也のセリフに、今度はケーナが大声を上げた。出会ってから2年たちが、彼女の体型は相変わらず12歳前後の少女のままだ。


「そりゃこっちのセリフだ、馬鹿娘が!」

「んだとぅ!」

「やめなさい」

「「はい!」」


 またしても親子喧嘩が再発しそうな雰囲気だったが、ウィルの一声でそろって素直に止める様が妙に滑稽で、結衣とユフィアは思わず笑いを漏らしてしまった。


「それで、今日はどういったご用件で?」

「いやなに、シンヤ君たちのレベリングも一段落着いたのでね。今日から正式に冒険者をやらせてみることにしたんだ。その前に、2人に挨拶をと思ってね」

「おー、ついにシンヤさんたちも冒険者の仲間入りって訳ですね! 応援してきたあたしとしても嬉しい限りです!」


 ケーナが興奮気味に喜んでいた。それこそ我が事のように。そこでふと、なにかを思い出したような顔になって――


「親父、親父! ほら、アレを渡さないと!」

「お、おうっ、そうだった! ちょっと待っててくれ」


 そう言い残すと、なにやら慌てた様子でヨルグは店の奥へと走っていった。


「あれって、なんですか?」

「むふふ、見てのお楽しみですよ」


 首を傾げて問いかけるユフィアに、ケーナは笑みを湛えながら意味有り気にそう答えた。

 と――


 ガラガラ、ガッシャーン! ゴッチーン!「痛てぇ! こンのクソインゴットがぁ!!」バギーン!


 なにやら店の奥から楽し気な物音と言うか怒号が聞こえてきたが、顔に手を当てて盛大にため息を付いたケーナ以外は努めて聞こえない振りをすることにしたようだ。


 それからさらにしばらくして、何故か頭から血を流したヨルグが、辞書サイズの木箱を抱えて戻って来た。


「いやいや、お待たせしました!」

「その前に頭の血を拭けってんですよ、馬鹿親父」

「おっと、すまねぇな」


 呆れた顔をしながらも、ケーナは懐から布を取り出してヨルグに差し出した。木箱をいったんカウンターの上に置いたヨルグは、ケーナから受け取った布でひとまず頭の血を拭う。


「なんです、これ?」

「お前さんら、冒険者になるんだろ? わしらからの前祝いだ」


 ヨルグが木箱を開ける。緩衝材入りの木箱の中に入っていたのは、白と黒の2丁の魔法銃だった。慎也のヴェレタとはまた違う種類で、型を取ったかのように同じデザインだ。


「魔法銃ですか?」

「そうだ。わしが作ったオリジナルの魔法銃で、白いのが『スコール』。黒いのが『ハティ』という」

「ああ、前に言ってたやつですね!?」


 以前ケーナが、ヨルグが高性能な魔法銃を作ったのだが、誰にも使えず、売れずで、結局お蔵入りになってしまった、という話をしていたのを思い出した。

 慎也になら、使いこなせるかもしれない、と。


「え? これ、もらって良いんですか?」

「ああ、持っていけ。どうせ店に置いといても誰にも買われやしねぇ。だったら、使える人間が持ってた方が魔法銃こいつらにとっても、作ったわしにとっても本望だ」

「でも、これって高いんじゃ……」

「良いんですよ、別に。使える人間もいないのに作った親父が馬鹿なだけです。けど、それでも武器です。使われない武器はただのガラクタです。使う人間がいて、初めて武器は武器になれるんです。せっかく作った武器が、使われもしねーまま、ガラクタとして腐っていくのは、私としても耐えられねーんです。だから、私からもお願いします。シンヤさん、この子たちを使ってやってください」


 テーブルに両手を付いて頭を下げるケーナ。魔法銃を「この子」と呼ぶ辺り、彼女の武具に対する思いの強さが伺える。

 こんな態度を示された以上、慎也に選択肢は無かった。


「判った。ありがたく使わせてもらうよ」

「ありがとうございます!」

「言っとくけど、くれぐれも粗末に扱うんじゃねーぞ!? もし下手して壊しやがったら、そん時は代金を請求するからな!」

「肝に命じます」


 魔法銃の代金は安くとも一丁300万は下らないと言われたことがあるだけに、慎也は細心の注意を払いながら2丁の魔法銃を手に取るのだった。


 ◇◇◇


 その後、新たに2丁の魔法銃と、それを収める為のホルスターまで一緒にくれたヨルグに礼を言い、4人は彼の店を後にした。


 改めて考えてみると、ウィルだけでなく、ヨルグにも世話になりっぱなしだった。高価な防具を格安でくれた上に、今度は魔法銃までタダで譲ってもらった。そう思うと、腰に下げている2丁の魔法銃や、身に纏っているストライク・スーツがずっしりと重く感じられてしまう。


(この武器と装備に、恥じないようにしないとな)


 ヨルグの好意に心から感謝し、改めて慎也はそう誓った。


「さ、着いたよ」


 ウィルの声に我に返ると、『冒険者ギルド・キアナ支部』という看板を掲げた建物の前に来ていた。

 白い漆喰で塗装された4階建てで、恐らくこのキアナの街の中で、領主の館に次ぐ大きさの建造物だ。いまも正面玄関からは、冒険者たちが頻繁に出入りしている。

 入口の真上には、盾の上に剣と槍と杖が交差したシンボルマークが飾られている。


 この2年間、何度か前を通りかかったことはあるが、実際に足を踏み入れるのはこれが初めてだ。


「いよいよだね」

「緊張してきました!」


 ワクワクとした雰囲気を隠そうともしない結衣に対し、本番に弱い性格なのか、ユフィアの方は緊張気味だ。


(ようやく1歩、前進できる)


 恩人であり、師であり、先輩冒険者でもあるウィルを超える為……そして、この世界に来ているであろう、友人たちを探す為の1歩を踏み出せることに、慎也の胸中には様々な思いが交錯していた。



 自分の生き方は自由に決めろ。道はひとつではない。どの道を選ぶかは、お前自身の意志で決めろ。だが、決して引き返すなよ――


 

(判ってるよ、クソ親父。オレは自分でこの道を選んだんだ。引き返す気も、後悔もさらさら無い!)


 脳裏を過った『父親』の背中にそう宣言して、慎也は冒険者ギルドに向かって歩き出した。

「異界の刀銃使い」が8000PVを超えました。皆さん、これからもご愛読のほど、よろしくお願いします(人´∀`o)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ