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『港南の白銀』は 旦那くんに美味しい鍋を食べさせたい

初めまして。

ポチです。


ちょっと別文章の行き詰まり(笑)から

ちょっと前から考えていたプロットをAIにかませて書いてみました。


よかったらどうぞ。


「行ってらっしゃーい、今日は何がいい?」


「行ってきます。今夜は寒くなるらしいから、温かいものが食べたいな」


「はーい。気をつけてね! すっごく美味しいもの作って待ってるから!」


玄関で旦那くんのネクタイを直して、頬にキスをする。

彼は少し照れながら、


「ありがとう」


と笑い、スーツ姿のままエレベーターへ消えていった。


ああ。

今日も私の旦那くんは世界一かっこいい。

毎朝きちんとスーツを着て会社へ行って、後輩には頼られて、夕方にはちゃんと私のところへ帰ってくる。

それだけで胸の奥が熱くなる。


――さて。


玄関のドアがカチリと閉まった。


私はくるりと踵を返し、エプロンの紐を結び直す。

まず洗濯機。

旦那くんのワイシャツは襟と袖口に洗剤を塗って、軽くつまみ洗いしてから放り込む。

その間に掃除機。リビング、寝室、キッチン。

旦那くんは裸足で歩くのが好きなので、床は最後にワイパーまでかける。

洗面台の鏡も磨いた。トイレも終わり。

洗濯物を干し終えたところで、時計を見る。


十一時過ぎ。


冷蔵庫を開ける。


「温かいもの、かぁ」


鍋にしよう。

白菜と長ネギはある。

ゴボウが少し足りない。

肉は――。

ふと思い出した。

昨日のニュース。

笹下第三ダンジョンで、突発性変異種が確認された。


私はスマホを取り出し、ダンジョン管理庁の特級探索者専用アプリを開いた。

赤い通知。

【港南区・笹下第三ダンジョン B5F

突発性変異種 Aランク《激昂猪》駆除】


「……あ」

猪。

それも激昂猪。

脂の融点が低く、臭みが少ない。市場へ出れば高級料亭が札束で殴り合いながら取り合う。


「ぼたん鍋にしよう」


決まった。

エプロンを外す。

普段着に着替え、スマホ、財布とエコバッグ、それから特殊魔導保冷バッグを持って家を出る。


     *


マンションを出た時点では、まだ主婦だった。


今日は味噌を少し甘めにしようか。ゴマを入れるといい感じになる。ゴボウはささがき。白菜は大きめ。豆腐は…

そんなことを考えながら住宅街を歩く。


裏道へ入ったとたん、歩幅が変わった。足音が消える。肩から余分な力が抜ける。そして重心が少し下がった。


(B5F。激昂猪。突進型)


頭の中から買い物の段取りが消える。

代わりに、

(走らせない)

が入る。

筋肉を使わせれば肉が硬くなる。興奮させれば血が回る。仕留めるなら、一撃。


住宅街の角を曲がった。

そこには巨大なコンクリート構造物が見える。

高いフェンス。結界。警備員。管理庁の職員らしき人。


――笹下第三ダンジョン。


受付の若い職員が私を見る。一瞬、顔が固まった。


「……『港南の白銀』」


管理庁は私の身元を知っている。一般には非公開。だから街ですれ違っても、私が誰なのか分かる者はいないはず…。それ以上に普段は黒い髪が、身体の中の『気』に銀色に広がる。染まっているわけではない、単に髪から無駄な『気』が抜けているだけ。

職員が姿勢を正した。


「本日は?」


「B5F」


それだけで通じた。それしか言いたくなかった。


「閉鎖しますか」


「お願い」


職員が連絡用の電話へと手を伸ばした。

私はゲートをくぐった。


     *


階段は使わない。めんどくさい。

中央部の吹き抜けを、そのまま五階分落ちる。

着地。床が軽く鳴った。

その正面に夕食はいた。

軽自動車ほどの巨体。

激昂猪。

こちらに気づいた。


鼻息。

前脚が床を削る。


「だめ」


走らせたくない。走ればそれだけ不味くなる。魔物が頭を下げるより早く、地を蹴る。


一歩。

それだけ。

視界から巨体が消えた。

次の瞬間。

背後で、

ドン。

と床が鳴った。

私は振り返らない。

激昂猪の巨体が崩れ、光になって消えていく。

残ったのは、五キロほどの幾つかの肉塊。ロース。ヒレ。バラ。

脂の入り方もいい。


「うん」


すぐに保全袋へ入れ、魔導保冷バッグへ。

スマホを見る。突入から八分。


「まだ余裕」


地上へ戻る。

受付で、


「処理完了」


とだけ伝えた。それ以上は言いたくない。面倒くさい。

背後で誰かが呟いた。


「……八分?」


気にしない。今からスーパーへ行かなければならないのだ。


     *


自動ドアが開く。暖かい空気。パンの匂いが鼻をくすぐる。

肩の力は完全に抜けた。


(ゴボウ、豆腐…あと何かあったっけ?)


カートを押しながら店を回る。

ゴボウは細すぎないもの。豆腐はちょっと贅沢しよう。

ちらりとスマホで確かめた今回の討伐料はそれなりのものだ。

激昂猪の肉を売ったら、それだけで旦那くんの手当付き月給を超えるだろう。が、それは死守しなければならない。今日の夕飯のために…

味噌はいつもの二種類、そのうちの一種類が少なくなったことを思い出した私を誰か褒めて欲しい。

鮮魚売り場で足が止まった。


天然ブリ。


半額。


「……勝った」


迷わずカゴへ。

ぼたん鍋の合間にブリの照り焼き。

旦那くんは魚も好きだ。

今日はかなりいい。肩はなだらかになる。それに気づいた時に、自分が旦那くんの妻にもどったことを感じ、少し嬉しく思った。

レジへ並ぶ。前には買い物帰りのおばあさん。その前には、小さな子どもを連れた母親。

私はエコバッグを抱えて、その後ろに立つ。

スマホが震えた。


ニュース速報。


【港南区・笹下第三ダンジョンで『港南の白銀』がAランク変異種を討伐】


早い。まだダンジョンを出て30分くらい?

記事を開く。


《冷酷な単独探索者》

《国家級戦力》

《管理庁も動向を注視》


「……失礼だなぁ」

小さく呟いた。口元がもにょもにょとする。


私はただ、夕飯のお肉を取りに行っただけなのに。


もっとも、普通の主婦はAランクを八分で狩らない。それくらいは分かっている。さすがに…


「次の方どうぞ」


「あ、はい」


カゴをレジ台へ乗せた。時計は十二時過ぎ。


まだ十分間に合う。


     *


帰宅したとたん目にするのは、玄関先の誰の靴もない風景。自分が片付け、掃除しているのだから分かっているが。


「ただいま」


誰もいない部屋に小さく言った。


朝、干したワイシャツ。それが窓辺で揺れている。気候から考えるともう少し干しておいた方がいいはず。


お昼代わりのトースト一枚、インスタントのコーンスープ。

少しだけソファーで身体を休める。


「さてと…」


台所へ。

水を張った鍋に昆布とカツオ主体の出汁パックをポンポンと入れる。火は付けない。

例の肉を取り出す。ロースとバラ…今日使うのはこの二種類。

スッと包丁を入れる。

薄すぎず。厚すぎず。噛んだ時に脂が広がる程度。ただ、肉の種類によって切り厚は変えた。脂が片方だけにあるロースと、筋のように走っているバラでは食感が異なる。

大皿に並べていく、牡丹の花みたいに。我ながら満足。ラップして冷蔵庫に保管。残りの肉は…ジップロック行きだ。とりあえず冷蔵庫の肉室。冷凍庫に回すかどうかは明日の自分に任せよう。


ちらりと時計を見る。


そしてベランダの洗濯物を取り入れる。今日は晴れていたのでしっかりと乾いている。満足満足。旦那くんの香りと洗濯剤、柔軟剤、さまざまな香りが混ぜこぜになって私の鼻の奥へと…すぅーっと深呼吸。この瞬間が結構気に入ってる。


そろそろ?

 スマホは何の通知もない。

  そろそろだ。

鍋には昆布出汁。そこへ味噌を二種類合わせて、ゴマペーストとゴマ一杯。ほんの少しダンジョン奥部から採れた木の実の香辛料。


大きめに切った白菜。長ネギ。ささがきのゴボウ。豆腐。

それぞれがそれぞれの大きさで鍋の中に並んでいる。


別のフライパンではブリを焼く。

塩を軽く、片栗粉を薄く。

醤油。味醂。砂糖。お酒。少量のショウガ。合わせ調味料を入れる。最後に白ごま。


時計を見る。

十八時四十五分。


「よし」


エプロンを外す。髪を直して、唇に少しだけ色をのせる。


その時。ガチャリ。玄関の鍵が回る。


「ただいまー」


「旦那くーーん! おかえりなさあああい!」


玄関まで走る。


そのまま抱きついた。


「うおっ」


「おかえり!」


「ただいま。ただいま。……いい匂いするな」


「今日はお鍋だよ!」


「ほんと? 寒かったから嬉しいな」


頭を撫でてくれる。

ふっふふ、ふふふふふ

幸せ。


これだけで今日一日は成功だ。


     *


「いただきます」


旦那くんが猪肉を一切れ取る。

口へ。

私は横から見る。それは戦闘より緊張する。

噛む。

一秒。

二秒。

旦那くんの目が少し大きくなった。


「……うま」


「ほんと!?」


「なにこれ。すごいな。全然臭くないし、柔らかい」


「えへへ」


「味噌味も美味しい。輝琉(ヒカル)って、ほんと料理うまいよなぁ」


胸の奥が一気に熱くなる。

これ。

これが聞きたかった。それだけの一日なのだ。


旦那くんがテレビをつけた。ちょうどニュースだった。


『――本日、港南区の笹下第三ダンジョンにおいて、特級探索者“港南の白銀”が――』


「あ」

旦那くんが箸を止める。

「今日も出たんだ」


「へぇー」


私は鍋へ肉を追加する。


「会社でも話題なんだよ。あの白銀って人」


「そうなの?」


「うん。うちの部署、ダンジョン資源も扱ってるからさ。今日の午後も会議で名前出てた」


「へぇー」


「どんな人なんだろうな。相当怖い人らしいけど…」


私は鍋から猪肉を取り、旦那くんの器へと。


「そんな怖い人より、ご飯食べよ?」


「それもそうだ」


旦那くんが笑う。

そして猪肉をもう一枚食べた。


「これ、本当にうまいな」


「でしょ?」


「白銀が持ってるどんなレア素材より、俺はこっちの方がいいや」


私は少しだけ顔を伏せた。たぶん、ぜったい真っ赤になっている。

鍋の湯気のせいにしておこう。


「……いっぱいあるからね」


「うん」


私はまた肉を入れた。


(教えてあげない)


ぐつぐつと、鍋が鳴っていた。





では次の機会に!

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