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4.獰狼の章-4

「そろそろ、起きてくれないかな」

 体を揺すられて、気がついた。目を開ける。そこは、夜明けの森だった。そばにいるのは、聖職者のローブを着たマイアノルテだ。穏やかな笑みを浮かべている。朦朧とした頭で、自分の体を確認すると、服は斬られているものの、体は五体満足だった。

「なにがどうなってやがる。俺はあんたに斬り殺されたはずだが?」

「蘇生したんだよ。治癒蘇生魔法(プリシリマス)さ。僕は聖職者だからね。思った通り、君はまだ死ぬ天命ではなかったようだ」

 けろりとした顔で、マイアノルテが言う。立ち合いの時とは、別人のような口調だ。

「どうして俺を?」

「君は、いい剣を使う。剣を交えてみて、よく分かった。それを惜しいと思ったんだよ。なにより、君はきちんと名乗って、立ち合いを申しこんだ。それに、好感を抱いたのもある」

「あんたにそう評してもらえるなら、剣の道を歩んできた甲斐があるってもんだ。しかし、でっけぇ借りを作っちまったな」

 肉体を回復させる蘇生魔法は、金貨1,000枚ぶんのコストがかかる。憧れの男に立ち合ってもらっただけでも借りなのに、これは大き過ぎる。

「そのことなんだけど、君は傭兵だろう。借りのぶんだけ、僕のために働いてもらえないかな?」

 マイアノルテは、いたずらっぽく笑いながら、提案をしてきた。

「俺になにをさせようってんだ?」

「今は特に考えていないよ。ただ、必要な時が来たら、協力してほしい」

 アルバキースは、少し考えた。男が命1つの借りを作ったのだ。男として、傭兵として、この借りには真摯に向き合わなければならない。その覚悟を持って、頷いた。

「金貨1,000枚ぶんか、お手柔らかに頼むぜ?」

「こちらこそ、よろしく、アルバキース。男と男の約束だよ。違えた時は、分かっているね?」

 マイアノルテは、にこりと笑って、手を差し出した。

「旦那には、かなわねぇな」

 アルバキースは、口元で笑い、差し出された手を握って立ち上がった。朝日が二人の男を照らしていた。レドウリ暦4432年7月22日のことである。

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