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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第五十三話 報告

まさか騎士団のトップが相手とは思っていなかったので困惑しながら促されるままに見るからに上質そうな椅子へと座った。


「書類が多くてな、作業しながらですまんがそれで報告というのは何かね?」

「え〜っと、その前に一つ聞いてもよろしいでしょうか……?」

「構わない。」


目線は書類に向けたままエコムが答える。

すぐ横には書類が山積みになっているのでかなり忙しいのだろうか。


周囲を見ると騎士団長の部屋にしては内装が質素なことに気づく。

もちろん、汚いとか、貧乏くさい、というわけではない。

単純に家具などの部屋を彩る装飾が少ないのだ。


「なんでただの一小隊の隊長の報告を騎士団長自ら聞くのでしょうか……。」

「ハッハッハ! 確かにな。まあ普通はやらんさ。報告を聞くのはついでで君に少し言っとかないといけないことがあったから会っただけさ。」

「はあ……なるほど……?」


より一層困惑したものの騎士団長相手で緊張するのでさっさと終わらせて帰ろうと思い、報告をすることにした。


「ええ……では報告します。1週間ほど前にケルグ山脈の浅い場所であの大蛇……ええっと……。」

「ヴァイスシュヴァルツ?」

「あ、はいそれです。ヴァイスシュヴァルツと正体不明の小型のドラゴンの群れが戦闘しているところを俺……じゃなくて私の部隊と、一緒に行動していた補給部隊が目撃しました。」

「ふむ。」

「その後、現場に行って小型のドラゴンの死体を回収してきました。今は馬車に積んでます。」

「死体から何か分かることは?」

「ヴァイスシュヴァルツの雷で真っ黒に焦げたり溶けたりしてしまって部位などから判断するのは難しいです……なので研究者に死体を引き渡して調査してもらおうと思いました。」

「うむうむ。いい判断ができる人間のようだな。」

「あ、はい。」


するとエコムはカルドの報告で得た情報について無言で考え始めた。


「…………。」

「…………。」


気まずい沈黙がしばらくの間続いた後、エコムは言葉をようやく発した。


「ひとまずは問題無い。部隊に戻って構わんよ。」

「問題無いって……。」

「ああ、勘違いせんでくれよ? 私もそんな情報を気のせいだと思って何もしないような馬鹿じゃない。実はな、現在君と同じような報告が各地から来てるのだよ。」

「えっ。」

「だから既に調査を進めてるのさ。もちろん、そのドラゴンの死体もある。まあ同じドラゴンとは限らんが……まあ同じドラゴンだろうな! ハッハッハ! まあ気にするな! まったくの無駄というわけでもないさ。そのドラゴンたちの現在の大体の位置も分かるしな!」


少し出っ張っている腹を揺らしながらエコムが大笑いしているがカルドは内心でガックリきていた。

いつもいつも毎回他の誰かが既に発見していることを後から報告しているので、情報の遅れている人間のように感じてしまうのは仕方がないのだろう。

そういうのは上からの評価にも繋がるので割とシャレにならなかったりする。


「う〜ん……そうは言いましてもやはり気になってしまうというものでして……。」

「まあ要塞に到着したばかりとのことだしゆっくり休んでくれたまえ。それで嫌な気分も晴らすんだな。」

「そうさせてもらいます……。」


若干憂鬱になりつつ席を立ち、ドアノブへと手をかけた。

だがそこでふととある事を思い出した。


「そういえば、私に用事があると言ってませんでしたか?」

「ああ、そういえばそうだったな。」


そういうと書類から目を離してニコニコと人当たりの良さそうな表情でカルドに言い放った。




「君、二階級昇進。」

「え?」


これから死ぬのかと思ったのは仕方があるまい。


念のために言っときますが旧日本軍では戦死すると二階級特進することがあったそうです

なのでカルドの反応は気になさらず!


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