第百十八話 致命
カーネにアイコンタクトして、カルドは一気にネロへと迫った。
まずは既にかなり減っていた氷剣を闇魔法で撃ち落とす。
突破するだけなのだから、進行方向の氷剣だけでいい。
包囲を突破する時、倒すのは正面の敵だけという考え方は大規模な戦争でも少規模な集団戦でも、変わらない。
氷剣に闇魔法が避けられても、それで道は開けるから役割は十分果たしている。
流れ弾がネロに行って、あっさりと防がれたことに気づきながら一気に突き進む。
横から阻止しようとしてくる氷剣がいたが、全て叩き壊す。
焦っているのか、動きが単調だ。
背後からもきっと来ているが、そちらからはカーネが氷剣を割る音が聞こえている。
こちらまで抜かせはしないだろう。
その時、ネロが大量の氷の槍を出した。
ファランクスのように、横1列に並べている。
飛び上がられないように槍先が高い位置に向いているのもあり、隙も少ない。
これほど一気に出せるなら氷剣をもっと出せばいいのにと思ったが、動かさないなら大した労力はいらないのだろう。
氷剣は動きが複雑だから、きっと出しにくいのだ。
ファランクスというのは厄介な戦術だ。
盾と槍を持った重装甲の兵が横に並んで構えるというシンプルなものながら、正面からなら余程のことがなければ突破されない。
それに、普通の人間なら持ち手を狙うことができる。
重装甲と言えど魔法は防げないし、矢が飛んでくれば怯みもする。
だが、今回の場合は持ち手がいない。
そのため、怯みもしない。
魔法は通用するだろうし、良い手ではある。
だがカルドは魔法を反射的に撃てる程、実戦で使っていない。
だから、別の方法だ。
槍に突かれる直前で剣で槍先の鋭い部分よりも少し手元側あたりの持ち手を斬りつけて槍先を斬り飛ばし、あとは盾で体を隠しながら突っ込む。
ただそれだけ。
盾には少しだけ角度をつけ、槍や、砕けた槍の氷の破片は全て滑らせる。
普通の人間のファランクスなら、死体が邪魔だし、そもそも盾を構えられているからこうはできないが、脆い氷相手ならこの戦い方は容易だ。
槍に正面から突っ込む度胸と盾で防ぎ、受け流す技術さえあればという言葉はつくが。
一度間合いの中に入れば槍は怖くない。
ベテランの槍使いあたりなら持ち手部分で殴ったり、すぐに距離を取るのだが、今回の場合はそんな心配もない。
これだけ密集していては槍先を曲げることすら困難だし、そもそもこれだけの数の魔法に複雑な動きをさせれるわけがないのだ。
もしこれでファランクスが二重三重とされていても、同じことをして突破する自信があるが、幸いにもなかったらしく、ネロの姿が見えた。
ネロとカルドの間にはほとんど距離はなく、遮るものもない。
だが、ネロはまだ抵抗するつもりらしい。
氷で何かを生み出している。
どうせまた剣や槍だと思い、剣を現在進行系で形が変化しつつある氷塊目掛けて振り下ろし――防がれた。
「なっ!?」
見れば、剣と、それを持つ腕があった。
氷塊はあっという間に形作られると、人型になった。
明らかに今までとは雰囲気が違う。
ここからが本番ということだと、悟った。




