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509-52 勘違い少女

ちょっと勘違いがあって、少し短めです_(:3」∠)_

 きらきらとしたミリアちゃんの羨望のまなざしにいたたまれなくて、もうこの話題は一旦やめて、もうひとつの誤解の方を解くことにした。

 つまり、身寄りのない子を受け入れるなんてしていないことについてである。

 ……ただ、ちょっと気に掛かることがあった。ミリアちゃんがここに来てから少し経ったけれども、保護者とか、お付きの人とか、誰も訪ねてくる様子がない。

 その気掛かりが考えすぎであるといいな、と思いつつ、訊ねる。


「ところでミリアちゃん、まさかひとりでここまで来たってことは、ない……よね?」


 訊ねられたミリアちゃんは、一瞬、困ったような表情になったように見えたのだけれど、すぐにその表情を引き締めて、覚悟を決めたようにわたしの方をまっすぐに見つめてきた。


「……ひとりで来た……ました。あたしは、なんとしても魔法を使えるようになるんです……! でないと……」


 そこから先は口ごもってしまった。

 なんでそこまで魔法を教えて欲しいのか、その先に何を言おうとしていたのか……については、気にはなったけれど今は重要ではなくて……あぁ、とちょっと頭を抱えたくなる。

 ミリアちゃんが良いところの娘さんなのは、察するにまず間違いないと思う。

 だと言うのに、ミリアちゃんはたったひとりでここまで来たのだと言う……。となると、ミリアちゃんはご両親などには黙ってここまで来ていそうだ。ならば、家のことを訊ねても答えてくれるとは思えないし、こちらとしても、帰す先が分からないのに追い返してしまうのは無責任と言うか、どうかと思うわけで……。

 とは言え、本当にその通りとは限らない。ひとまず、匿うなんてことはしていないということを伝えれば、あっさり帰るということもあるかも──と言うことで、改めてミリアちゃんの方を見据える。


「あのね、ミリアちゃん。言いにくいんだけれど、実はもうひとつ誤解があって……」

「誤解……?」

「うん。その、身寄りのない子を匿っているって言うのはあくまで噂でね……? 実際にはそういうことはしてなくて……だから、ミリアちゃんを匿うことは難しいし、ご両親のところに帰るべきかな、と……」


 恐る恐る、と言った心持ちで切り出してみると、ミリアちゃんはみるみる戸惑ったような……泣きそうな表情になっていくのが見て取れた。

 そして、慌てたように口を開く。


「……で、でも、確かに女の子ふたりを匿って一緒に住んでるって聞きました! そうなんですよね!?」

「んー……、確かに一緒に住んではいるんだけれど、ただ──」


 匿うのとは違うんだけれど、と説明するよりも早く、ミリアちゃんがまた身を乗り出して迫ってきた。


「そのふたりは良くてどうしてあたしはダメなの!? あたしもここに置いて! 魔法を使えるようになるまででいいから、お願い!」


 テーブルがなかったらしがみ付いてきそうな剣幕だった。

 困りながら、落ち着いてもらうにはどうしたものかと考えていると、目の前のミリアちゃんがわたしの後ろの方に視線を移して、そして分かりやすく肩を跳ねさせた。

 なにごとか、とわたしも振り向いて後ろを見てみる。

 と、振り返りきる寸前にそちらから声が聞こえた。


「……お話し中、失礼いたします。そしてお話に割り込む無礼をご容赦ください」


 もう暗くなってきたキッチンの方から、エイラちゃんが出てきたところだった。

 エイラちゃんはミリアちゃんの方を見つめながら、こちらへ歩いてくる。


「……ミリアさんと仰いましたか。確かにこの家ではサクラ様とふたり──わたくしともうひとりが共に暮らさせていただいております。しかし、ひとりは不死の魔法使い様の保護……であり、子供ではありませんし匿っているわけではありません。そしてわたくしは使用人としてこの身を買い上げていただいたのであって、匿っていただいているわけではありません」

「……買ったわけじゃないけどね?」

「……そうでしたね」


 買い上げたとかそうじゃないとか言うのは人身売買的な意味ではなくて、ざっくり言うと給料の前払いか月払いかみたいな違いなのだけれど……それはともかく。

 エイラちゃんが出てきて少しの間大人しくなっていたミリアちゃんだったけれど、話が終わって少しするとはっとして、また叫ぶように。


「あたしは……魔法を使えるようにならないと帰れないの!」


 ほんのりその目に涙を浮かべながら、その手を握りしめていた。

 正直なところ、もうミリアちゃんを追い返すつもりはなかった。

 でも、ここに置いてあげたとしても、ミリアちゃんの希望には応えられそうにない。

 とりあえずは置いてあげて、時間をかけて納得してもらってから自発的に帰ってもらうしかないかなぁ……と漠然と考える。

 そこへ、食堂の扉を開けて中へ入ってくる人影があった。


「さっきから何を騒いどんのじゃ、まったく。……誰じゃ、この小娘は」


 その人影──ヤヨイちゃんにその場の3人の視線が集まる。

 そしてヤヨイちゃんを見たミリアちゃんの表情が、だんだんとなんだか驚いたようなものになっていって……叫んだ。


「やっぱり子供も匿ってるじゃない!」

「誰が子供じゃ、おいこら!」


 その言葉に即座にヤヨイちゃんが反応して……。

 いつか教会で見たようなやりとりが、ここで再演されたのだった。



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