ませてる
明日はあっという間に走って来た。
私は少しだけお洒落をした。派手とは程遠い服は、1番気に入っているTシャツと2番目に気に入っている服を選んだ。真剣に見ないと気づかない程度のメイクをした。
小学生とラーメン屋に行くだけなのに気合いが入りすぎだと、お母さんに言われないように最大限努力した。
電車に乗って、1番前のいつもの定位置に立った。そして二駅ぼんやり待つと、いつもは違う場所から奏多が手を振っていた。
ニコニコ顔で私の隣に立った奏多の身長は私とあまり変わらなかった。というか、私の方が小さいくらい。
「切符持ってる?」
私の方が年上だということを確認するかのように奏多に問いかけた。
「うん。」
「お金は?」
「持って来たよ、翼の分も。」
「よかっ……えっ?」
「デートの時は男がお金を払うってテレビで見たもん。」
「え、あー、いや、払わなくていいよ。私ちゃんとお金持って来たし。それに、デート、ではないでしょう?」
ませた男の子に一本取られたような気分だ。自分を落ち着けるための確認を投げかける。
「違うの?僕はデートだと思ってたのにー。いいじゃん、デートでー。」
ふにゃーと笑いかけられる。
「そうだね。じゃあ、デートにしようか。」
反射的に肯定していた。お金は自分で払うからね、と釘を刺して。
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駅からラーメン屋まではあっという間だった。なぜなら奏多がおもしろいから。小学6年生とは思えないほど上手に話すのだ。
「あ、よかったー、空いてる。」
ドアを開けてホッとひと息。
「いつもは満員なの?」
奏多が首を傾げた。
「うん。結構人いるよ。」
ギリギリ座れるくらいの人数が店内にいることが多い。
お店の奥の2人用のテーブルに向かい合って座った。
「何にする?」
メニューを奏多の前に広げた。
「んー、翼は?」
「私?私は普通のー。」
普通の、とは醤油ラーメンである。
「そっか。じゃあ僕もそれ。」
「はいはーい。すいませーん」
お店の人を呼び、同じものを2つ注文した。
「ねえねえ、」
奏多が私の目を見て言った。
「なーにー?」
私も奏多の目をじっと見返す。
「彼氏いる?」
冷水が入ったコップに伸ばした手を止めた。
「えっ、いない、よ?」
本当にいないのに何をこんなに焦っているのか。
「ふーん。」
奏多は目を細めてから、水を少し飲んだ。
ませガキですね。




