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3/3

おまけ。

 旅人は王都に着いたばかりでした。

 まずは疲れと渇きを癒そうと、目についた酒場に入ります。

 小料理や酒は美味しいものでした。

 しかし、すぐ近くの席に辛気臭い青年がいるのです。


「どうしたね兄さん。そうため息をついていたら、折角の酒が台無しだよ」


 根が人好きの旅人は、つい声をかけました。


「ああ。すみません、どうも」


 そういって顔を上げたのは、憂いの似合う美青年でした。


「まあ、一献」

「っととと」


 などというやり取りを挟んだのちに青年は語りました。


「妻がねぇ、構ってくれないんですよ」

「おやおや」

「子どもにかかりきりになってしまって。昔は僕だけにしてくれたのに……」

「そいつぁいけないね兄さん。もしや、お子さんに奥さんをとられたなんて感じてやしないかい?」


 旅人は青年を窘めました。


「そういう時はね、混ざってしまえばいいのさ」

「ま、混ざる?」

「あんたも一緒に子どもを構えばいいんだよ。そうしたら奥さんだって喜ぶだろうよ。それとも、お子さんが可愛くないのかい?」

「そんなはずないだろう!! 僕の子はね、ふたりとも――」


 水を得た魚のように滔々と語りだす青年に、旅人は苦笑しました。

 きっと彼はもう辛気臭いため息をつくことはないでしょう。



 ――翌朝。

 旅人は王都をぶらぶらと観光していました。


「そこのお人、肉饅頭はいかがだね」

「ほほう、こいつぁ美味そうだ」

「王都の名物三選にも入ってるのさ」

「それぁいい。五つばかし包んでおくれ」


 屋台でほかほかの蒸し饅頭を買っていた、そのときです。

 王城から上空へ、なにかが高速で打ち出されたのが見えたのです。


「なんだい、ありゃあ」


 よくよく目を凝らすと、まだ幼い子どもでした。

 それが天高く宙を舞っているのです。


「なっ、なんてこった!」


 驚愕した旅人に、饅頭の包みを差し出そうとしていた売り子の女性が訊ねます。


「おや。いったい、どうしたね」

「大変だよ姐さん! あすこに子どもが飛んで――ああ、また!」


 泡を食って指差しているあいだにも、新たにぽーんと飛んでいきます。

 ころころと女性は笑いました。


「心配おしでないよ。あれは王都名物の筆頭『高い高い』さ」

「高い高い!?」

「別名は『お手玉』」

「お手玉!!?」

「いや、あれは双子の王子様と姫様でね。大層お喜びで、しない日は却ってむずかるってぇ話さね」

「しかし危なくはないのかい?」

「複数の護りをつけてるってことでね、この大通りよりも、よっぽど安全って話さ。それに、お二方ともレアな高所恐怖耐性をお持ちだから。王様譲りって聞いたねぇ」

「へえ、それはそれは」

「それに王妃様譲りの飛行制御も」

「おや? そいつぁ魔物特有の技能――っと、そういやぁ、ここの王妃様は魔人族だっけね」

「そうさ。魔人族のなかでも一等お強い竜人だ」

「ほうほう。言われてみりゃあ、あの背にあるのは竜翼かいね」


 今度は一気にふたり飛んでいきました。

 その背中で小さくぱたぱたしているのを見て、旅人は納得しました。


「おやまあ、よく見えたもんだ」

「これでも視力補助の異能があってね」

「あっ!」


 初めて女性が驚いた顔をして、旅人も目を丸くしました。

 また王城から打ち上げられた人影は、先ほどよりひとり増えていました。


「あらまあ、ずいぶん久方ぶりだこと」


 女性は楽しそうに笑っています。

 そして旅人は、すべてを悟ったのでした。





 おしまい。

王都名物の最後ひとつ。

それは――魔法、異能、肉弾戦、白兵戦、なんでもありの市街地バトル。


「くくく、往生際の悪い……!」

「嫌だと言ったら嫌です」

「いくら目を逸らそうとも無駄だよ。真実からは逃れられないのさ」

「帰ってください」

「いいや? 今日こそは呼んでもらうよ――そう、"お義母さん”! とね!」

「帰れ」

「仕方のない。では力尽くでも言わせてやろう……さあ! さあ!!」

「どうして貴女、魔族よりバトルジャンキーなんですか!!?」

「ふ……似合いの夫婦と自負している」

「認めませんよ!? 私は! 絶対に!!」


という嫁姑合戦だったとさ。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!

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