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都市マリベール

 はいよやってきました都市マリベール。スライムの間増設に精霊との契約、刀の精製を終えてから翌日でありますよ。全身真っ黒装備で固めて如何にも怪しい旅人てな感じで来たのだが誰にも注目されずに通行料払ったら入れました。一応中のシャツは白で刀に会わせてきたんだけど、これもそのうち黒に変えようかと思ってる。ファッション性とか度外視、自分がかっこいいと思うものを採用する。ただのアホだね。何というか黒が落ち着くんだよね。


「にしてもこんな近くにあったんだな都市が」


「それでも十キロくらいはありますけどねダンジョンから」


 ダンジョンから十キロなんてそんな距離、俺にはなきに等しい。というのは冗談で結構かかった。自動車とか自転車がないこの世界では馬車が普及している。というか馬車が当たり前だ。日本という文化がおかしいのだ。

 都市マリベールには多くの商人が集いできた都市だそうだ。リベルが言うにはここから少し歩いた所にダンジョンがあるそうだ。名は岩石のダンジョン。知る人ぞ知るゴーレムばかりが出るダンジョンだ。いやこの都市に住む人は皆知ってるけどね。

 岩石のダンジョンには主にゴーレムばかりが出てくるが中にはその亜種であるガーゴイルやゴーレムよりも知能あるインテリジェント・ゴーレムなどの希少種とも言えるものも出てくる。

 ゴーレムから取れる素材はそのままマリベールの外壁に使われていたりもする。また、ゴーレムから取れる核を使って魔力的に動く人形オートマタが作られており、この都市ではたまにオートマタが店番をしていることもある位にオートマタ産業が賑わっている。


「オートマタとか格好いいな自動人形だぜリベル」


「オートマタはゴーレム以外でも作れるみたいですからうちのスライムの核を使ってみてはどうですか?」


「機会があればな。リベルを守るオートマタが二体は欲しいよな。後、世話用に一体か?」


「……お兄ちゃん。それでは私が堕落してしまいますよ」


「ん?それもそうか。俺がやれば問題ないし」


「そういうことではないのですが」


 いや、分かってますよリベルさん。俺だってリベルには自立していてもらいたいもの。それだけ俺はリベルが大事だってことですな。

 都市の関門をくぐり抜けて宿を目指す、前に宝石を換金した。二万コルになったので中々の値段ではないだろうか。一応この世界は日本と同じ貨幣価値であるのでこの間の奴隷十万コルというのは結構な値段だ。この世界では宝石の類はそれなりに高く売れる。換金した所で話を聞いた所ではダンジョンで手に入れた掌に収まるか収まらないかぐらいの宝石が出たときは一千万コルを超えたそうだ。

 もちろんオークションでの値段なのだがそれでも一攫千金を狙って冒険者になる奴も出てくることだろう。本当にそれがダンジョンの宝箱から出てきたのかは分からないが。

 俺としては俺と同じ存在がいる可能性も浮上してきたと思える案件だ。ダンジョンマスターならそのくらいの宝石を作るのはわけがない。知識にある日本でもそんな大きな宝石はなかったはずなので余程の馬鹿でなければそんな大きさの宝石は作らないだろう。その宝石の使い道など棚に置く程度の使い方しかないのだから。少なくとも俺が持っている知識にはない。

 そんなこと訳でお金を得た俺達は適当な宿屋に入り、部屋を取った。五百コルとずいぶんと安い値段の割に朝夜の飯まで付くのだ。部屋はベッドが一つだけぽつんとあるだけの簡素な部屋だ。飯が出るなら文句はないけどね。


「ずいぶんと質素な部屋ですね。ダンジョンよりはましですけど」


「確かにな。あそこにはベッドすら置いてないな。今度買うか?いや普通に敷き布団だけでいいか。特別困ることはないし」


「お兄ちゃんがいいならいいですけど。魔力さえあれば基本的に食糧要らずですからね。軍隊の変革が起きる位にはすごいことですよこれ」


 兵站がないだけで軍の機動力は大幅に変わるからね。リベルは賢い子だよ本当に。

 しかし、魔力さえあれば生きれる体は便利には便利だが生きる上での豊さみたいなものを奪うものだと思う。人間は三代欲求があって初めて人間と言えるのだし。確か食欲、性欲、睡眠欲だったかな。

 そんなわけで人間味を感じれる食事は割と大事だと思う。リベルはダンジョンにいる間中ずっとチョコレートばっかり食べていた。よく太らないなぁとか思ったりしたら睨まれるので考えるのをやめておく。女性の前でそういうのは考えない方がいい。変に勘が鋭いのが女性だから。


「さて、これからどうする?」


「邪神が宗教に関わっているのかの確認とデートですねデート!」


「いや、分かってるよそんなに強調しなくても」


「デート♪デート♪お兄ちゃんとデート♪」


「キャラ崩壊してるよリベルちゃん」


 そんなに楽しみにしていたのか頬が緩みきっている。可愛さ満点なリベルは俺がそれを見ているのに気づいていない。長い黒い髪に指を通すとすっと止まることなく指の間をすり抜けていく。俺が見ていたことに気付いたのか恥ずかしそうにして布団を勢いよく被った。布団から顔を出して小動物のようなうるうるとした瞳で俺を見上げる様を見ると意地悪をしたくなる。特別Sな訳ではないのだが可愛い子につい意地悪したくなるのはどこの世界でも共通してると思う。


「リベル、恥ずかしいのか?」


「う、意地悪ですねお兄ちゃん」


 こんな風になっちゃうのも世の常だ。この後の展開は言わずと知れた性欲に爛れた世界だ。もちろん俺達はまだ健全な付き合いをしているのでそんなことにはならない。


「まぁいいか。外に出よう。中にいてもつまらないし」


「デートですねデート♪」


「……うん。分かったよ」


 最近のリベルはどんどん単純化してきてる気がする。あれだよ。所謂アホの子だよ。本当に嬉しそうなので特に何か言うこともないけど、本来の目的を忘れないで欲しいな。

 宿屋を出て俺達は街の中を探索する。街の中を探索するっていうのは表現的におかしい気がしないでもないが俺としては未知のダンジョンと同じくらいには知らないものが多いので問題ないと思う。

 様々な店にリベルと共に渡り歩き、時にははしゃぎ、時には笑ったりして過ごした。俺が本来の目的を忘れそうになるくらいには楽しかった。

 装飾店なんかでは思いがけない物を見つけたりした。その名も破魔の指輪だ。名前の通り、魔を破壊するという意味の指輪で所持者の魔力を奪う効果や魔法による威力低減などの効果がある。

 魔物を合成して新たな魔物を作るという魔成というものがある。これには武器や防具等も使える。そうすることで武器や防具等の特性を引き継ぐことができるのだ。そう、つまりこれを使えば魔法の聞きにくい魔物を作れる可能性があるのだ。

 そんな小さな発見やリベルの笑顔で埋め尽くされた一日はあっという間に過ぎた。

 宿にたどり着いた頃には二人そろってベッドに倒れ込んだ程だ。


「少しはっちゃけすぎたな」


「そうですね。今考えると私はとんでもなく頬が緩ませていましたね」


「可愛いかったなリベル」


「お兄ちゃん、そういうのはずるいと思いますよ」


「それじゃあ俺の勝ちだな。ああ眠い寝るか」


「また寝落ちですか」


「お約束だろう。俺とリベルの間での」


「それもそうですね。おやすみなさいお兄ちゃん」


「おやすみリベル」


 楽しい日々はすぐに終わる。明日からは少し日常から遠い所に行く。神殺しを達成するには辛いことを率先してやって行かねばならないと思う。今日は楽しんだ。明日は苦しもう。

 俺は少しだけ詩人で中二病くさい考えをしたことに苦笑した。

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